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第十六話 少年と魔術師、嘘と真実

僕は知ってしまった。この地の嘘と真実。


僕は豊かで美しい町に住んでいた。

僕は貧しく廃れた町に住んでいた。


みんながちゃんとした家に住んで

みんながぼろぼろの小屋に住んで


美味しい食事をとる。

汚い残飯をむさぼる。


僕らを一番に考えてくれる領主様

僕らを苦難に導こうとする領主様


憎き異端

愛する者


愛しのマジョラン一族

言葉を操る異端の一族


あぁ、何て僕らは幸せなんだ。

あぁ、どうしてこんなことに。



「逃げなかったのか」

「最初は思ったさ。でも、目が覚めてしまったんだ」

 丘の上から町を見下ろす。僕の住んでいる町、美しかった町はもう無い。いや、もともと無かったんだ。

「ねぇ、教えて。この領地の本当のことを」

「君はここから去ったほうが良い」

「やだよ。気づいてしまったんだ。僕らはずっと操られていた。マジョランの都合の良いように。あんたは彼らの犬のように働いていた。なら、真実を知ってるでしょ?」

 この人はマジョランの言いなりだった。以前の僕なら、マジョラン家の部下として敬っただろう。今となっては、そんな気はさらさら無いけど。

「僕には知る権利がある」

 観念したようにため息をつくと、彼は僕に向き直った。

「後悔するなよ」

「聞かない後悔より聞いた後悔のほうが良い」

「……わかった。話す」

 彼は、この地に来る前に彼の弟と共に調べたこと、マジョランに仕えている間に知ったこと、嘘と真実の歴史を教えてくれた。途中で想像して気持ち悪くなったところもいくつかあって、この件が終わったらどこか別の土地へ旅して美味しいものを食べようと思った。

「父さんと母さんを止めてくれてありがとう」

「いや、礼を言われるようなことではない」

「ふーん、了解。あのさ、あんたって何歳なの? さっきの話からすると、もしかしてお爺さんなの?」

「失礼な! せめておじさんと、いやいや、それもいかんな」

 考え込み出してしまった。何か葛藤しているようだ。

「ま、何でも良いや。しばらくよろしく、魔術師のおっさん」

「お、おっさん……。せめて魔術師さんと呼びなさい。あと、まさかとは思うが、私についてくるつもりではないだろうな?」

「わぁ、すごい。ご名答! まぁ、僕はこの一件の見届け人と言うことで。あ、僕の名前はニコ。よろしく」

 魔術師さんは疲れたように息をはいた。

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