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使徒襲来~この雑誌は温めますか?~

稚拙な文章ですが、気に入っていただけたなら幸いです。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あづい・・・ですね」

 空港の出口で立ち尽くす黒と白の修道服に身を包んだ女は、眉を顰めながら思わずそう苦言を口にする。我らが父と人々への奉仕の心の体現である修道服だが、今この瞬間は違ったようだ。ベールの下で、長く流したブロンドの髪が汗ばむ首筋へせがむように張り付く。

 

 「このような土地の任務など、さっさと終わらせて居心地の良い私の居場所に戻らねば・・・。」

 そう呟き、目的地へ足を急がせるのだった。

 彼女はこの時、この日本の暑さと長い付き合いになると露も知らず、TAXIに向かって『ひっちはいく』と書いた紙を高々に掲げるのだった。


──────────



_20XX年 8月未明 

 

 私、システィ・L・コンフロシアは、とある任務により極東の地・日本へと降り立った。

 元々私は日本に憧れを持っていた。その理由と言うのが…まぁここで私の事を話しても仕方ないだろう、この話はここまでで切り上げる。うむ、それが…いいそうに決まってる。 

 しかして、私の憧れを否定するように降り立って早々私を出迎えたのは、教会からの道先案内人でも任務に同行する相棒でもなく、日本特有の湿気の篭った猛暑だった。年々この暑さが加速している…と、私は日本にいる知人から教わった。これが地球温暖化、というものの影響なのだそうだ。

 しかし、日本は機械などの文化が発展している国だ。外が暑い分、屋内などは空調設備が管理されていて過ごし易い国だと言う事は知っている。早速私は現地の担当者に会って任務の詳細を知るべく、この街の教会へと足を向けた。

 しかし…暑い国だ…。

 

 ――聖十字教会 御見苗(おみなえ)支部 

この教会は小高い山の上にあり、周りを鬱蒼とした森に囲まれている。そのおかげか街の喧騒が嘘のように聞こえてこず、とても静かで過ごし易いところだろう。木々が照り付ける日光を遮ってくれているおかげで、さっきまでの暑さも和らいだ印象だ。

 タクシーを降り、駐車場から教会へ行く階段を登り切ると、丁度ミサが終わったのか人が教会からポツポツと出てきている。私は通り過ぎる人に軽く会釈をし、教会を任されている神父を求め教会内に視線を巡らせる…、奥に黒いスータンに身を包んだ頭をやや白くした初老の老人を見つけた。

 恐らくこの老人が、この教会の神父様だろう。信者の方と話していたようで、話終わったのか信者の男性が神父様と思しき老人にお辞儀をして私の横を通り過ぎてゆく。

 信者を見送る老人と目が合う。

 「これはこれは、遠き所から遥々お疲れ様でした、シスター・システィ。本部(バチカン)より話は伺っておりますよ。」

 「丁重なご挨拶恐縮です、神父。」

 笑顔や物腰がとても柔らかく、その人柄が見て取れる。信者の方が困り事を相談する理由も納得がいく。

 「任務の話は奥で致しましょうか。どうぞこちらへ」

 私は神父に案内されるがまま、教会の奥にある住居スペースへ。そこには質素な木造テーブルと椅子が置いてあり、私は神父に促されるまま椅子に座る。

 「貴女のような綺麗な女性が退魔師とは、いやはや驚く限りです。」

 「いえ、私は神にこの身を捧げた身ですから…。男性も女性も関係ありませんよ。」

 確かに、女性で退魔師を志す者極少数だ。女性の殆どは教会でシスターをしたり、布教活動で各地を転々をするのが通例のようなものだ。

 「さて、何か飲み物を用意しましょうか。教会で採れたハーブティーと信徒の方からいただいた日本のグリーンティ、どちらに...」

 「すみません、これから任務なので、余り水物を摂りすぎると…」

 「なるほど、そうですね…いえ、私も申し訳ありませんでした。滅多にお客人が来ないせいか、どうもお茶を出したくなってしまいましてな」

 笑顔でそう謝罪する神父。私も「申し訳ありません」とその謝罪に返す。

  では早速… と、神父は地図を棚にある地図を手に取り机に広げる。

 「我々が今居る教会が、ここです。貴方が赴く場所は・・・ここから少し離れた分譲マンションの38階…一番上のフロアになります。」

 「マンション…ですか?てっきり森や廃れた場所かと思っていましたが…。」

 「そうですね、彼...いえ、奴はそういう場所を好むのですよ。」

 …彼?神父は退滅対象を知っている…?

 「それで、私が退滅する対象はどのような怪異なのですか?」

 

 私のその質問に対し、神父は一呼吸置いてからゆっくりと答える。


 「リビングデッド(生ける屍)です。」


 私の長い長い任務は、こうして幕を開けるのだった。 


  ─────────────


 「はい…えーと、3860円ね。足元気を付をけて降りて下さいね。」

 私は運転手に日本の紙幣を渡し、修道服をドアに挟まぬよう注意しながら車を降りる。

 修道服姿が珍しいのか、道行く人が私を様々な目で見ながら通り過ぎてゆく。

 

 それにしても・・・・・・・・・・・・・・・・・暑い。


 『タクシー』という車の中は、非常に空調が効いていて快適だったせいもあり、私の身体を纏う外気の蒸し暑さが一層引き立っていた。肌に滲み出る汗と共に、私の心にもより一層の想いがこだまする。


 「早く任務を終わらせてこの日本(くに)出国()なければ・・・。」


 地図に神父が記してくれた場所にたどり着く。そこに(そび)えているのは、38階建ての高層マンション。その最上階に、今回の退滅任務の対象が潜んでいる。と言っても相手は『リビングデット』…有り体に言えばゾンビ…知性は低く、血肉を貪る事しか出来ない低級妖魔だ。駆け出しの退魔師(エクソシスト)な私であるが、正直負ける気は皆無だ。

 自動ドアを抜け、大きなエントランスを通り過ぎエレベーターを1階まで呼び戻す。幸運な事に、エントランスにもエレベーターにも、一般人は見かけなかった。極力部外者を傷付ける事はしたくないものだけど…。

 目標は38階、到着するまでの間に武装に軽く手を触れてチェックをする。

 聖水で清められた霊銀(ミスリル)弾を装填した退滅式拳銃M9『ペテロ』、そして一対の霊銀製射出(バリスティック)ナイフ『パウロ』『ヨハネ』。

 『ペテロ』のセーフティを外し、レーザーポインターのスイッチをONにする。パウロとヨハネに刃を付け腰のソケットに収め、準備は完了。


 『 最 上 階 で す 。』

 

 準備が整うと同時に無機質な声が、目的地に到着した事を私に告げる。

 

 とくん…とくん…

 

 自分の鼓動が少しずつ高鳴るのが解る…それと同時に、銃を握る手が少し汗ばむ。

 エレベーターの双壁が滑らかな動きをして左右に消えてゆく。私はそれを横目で見送りながら廊下に一歩、また一歩と踏み出してゆく。

 ワンフロア分譲型のマンションなので、私はてっきりエレベーターを降りてすぐ玄関かと思っていたけれどそうではなく、エレベーターから扉までは少しばかりの廊下があった。

 私は、ゆっくりと拳銃『ペテロ』を両手で構え、音に注意しながら前に進む。

 

 一歩…そしてまた一歩と、少しずつ前に進む。

 私は、ここで扉の前に掛かっている不思議な幕を発見した。

 垂れ幕にはこう書かれている。

 

 (………『不死"屋』…?)


 日本の言葉に疎いせいか、その意味が良く解らない。勉強不足の自分を恥ずべきだろう…。

 何はともあれ、突入して制圧しなくてわ。私は懐から連絡用の『刻印板(ルーン・ボード)』に「状況開始」とメッセージを刻み込み、再度懐へしまう。

 注意しながら、そっとドアノブを軽く捻る…難なく扉が開く。その瞬間、嗅いだ事のない悪臭が鼻を衝く。

 「そうか…もうここは死の館なのね…。」さっきまでの緊張が緩んだ気がした。そう、今私の胸中を占めるのは緊張や恐怖ではなく、一般市民を餌食にした化物への怒りだったのだろう。

 私は銃を片手で構え直し、ナイフを右手をクロスする形で構える。CQC(クロス・クォーター・コンバット)の基礎だ。私はその構えのまま歩を進める。

 

 玄関からリビングへ。15畳はあるであろうリビングには、不自然なくらい沢山のテーブルとイスが並べられている。まるで食堂のような…


 「おや、やっと来てくれたね。」


 はっとし、声の主へ向き直る。そこに居たのは、どう見ても普通の青年…だった。


 この青年が、その後の私の運命を変えるなんて、この時は予想も出来なかったのは言うまでもなかった。


 

 最後まで読んでいただきまして、誠に有難うございます。

 今回は従来の「予め設定を考える」という事はせず、書きながら設定を書いていくという新趣向で書いてみました。

 一応見返してはいますが、誤字脱字などがあれば、その都度直して行きたいと思っております。


 次の更新は、何分遅筆なのでいつになるか解りませんが…(おいっ)出来るだけ早目にあげようと思っております。


 では、暑さに負けないように気を付けてください。

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