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7・熱熱熱心なサポーター

本日は、球技大会だ。

種目は女子がバレーとハンドボール。男子がサッカーとバスケ。


俺は運動神経は人並みなので重要なポジションを任されることもなく、特に盛り上がることもなく、通常運転だ。


違うのは、花坂さん(ストーカー)だけである。

彼女は対戦表を眺めながら、永遠にぶつぶつ言っている。横顔は、可愛い。


「永瀬くんはサッカーのBチームで初戦は3組となんだけど9時からで私のバレーの試合が9時20分からだから全部は試合見れないおかしいよ私すごく楽しみにしてたのに、運営の生徒会に文句を言えばいいのかな?しかも第二試合まで30分の永瀬くんロスタイムが生じてるんだけど何コレ喧嘩売られてるの考えた人誰なの本当に酷いあのねうちの学校の体育の年間スケジュールにはサッカー入ってないんだよ。てことは永瀬くんのサッカーしてる姿は今日しかないんだよなのに完全な形で観戦できないなんてふざけてるの?」


花坂さんは、少しおかしいのだ。


連絡先の一件以降、花坂さんへの警戒心のようなものが芽生えていた。連投スタ連連投電話連投連連投は、俺がやめるようにお願いしたらきちんとやめたので安心したが、次は何が待ち受けているのか………


「花坂さん」


「永瀬くんっ」


花坂さんがぱあっと笑った。大輪が咲くような笑顔であり、近くに居た男子が驚くと同時に俺を羨ましそうに見てきたが、彼女の狂気を肩代わりしてくれるのなら譲ってやりたい。


話しかけたはいいが、何を言えばいいのだろう。


「………えっと、……クラス優勝、頑張ろう、な」


無難な言葉しか思いつかなかったし、全然そんなキャラではないのだが。


「うんっ、永瀬くんのこと誰よりも応援するからね!実は永瀬くんのファンサのうちわ作って来たーーーーー」


「俺、試合に熱中してたら何も聞こえなくなるタイプだけど、気にしないでくれ」


「うん、フィールドに居る永瀬くんに私の声が届くまで今日は喉枯らして頑張るね!」


話が通じなかった。

熱熱熱心なサポーターも居たもんである。




試合はすぐに始まった。前日が雨だったせいでグラウンドの状態はあまりよくないのだが、そんな文句を言ってる場合ではない。


3組といえば、サッカー部の連中がゴロゴロ居る優勝候補。そんなところと初戦から当たるなんて、くじ引きの引きが悪い。


そこまで球技大会に熱がないとは言え、初戦敗退は絶対嫌だ。

クラスの女子も応援に来てるのに、格好がつかないではないか。


…………。


「道明寺がんばー!」

「決めてけよー!」

「道明寺くん、今日もカッコいい……」

「このフィールドで間違いなく一番カッコいいわ…」


俺の近くに居た、クラスメイトの道明寺くんがクラスの女子に手を振ると歓声が上がった。

イケメンであるからして、羨ましいが仕方ない。

まったくもって、羨ましい。


………勝ったところで別に道明寺くんの株が上がるだけである。そもそも格好つける相手が居なかったことに気付いた。

やる気が失せた。


いやや、俺は友情に捧げるぜ。女子の応援など関係ない。そんなんでモチベーション上げてるなんて、男の恥である。


「永瀬くん、頑張ってー」


道明寺くんへの応援に混じって、花坂さんの声が聞こえて来た。控えめに俺に手を振っている。


あれだけ運営の生徒会に啖呵を切ってた花坂さんだが、やはりクラスメイトの中に入ると大人しくなった。

どう見ても、普通に応援してるだけの可愛い同級生だった。夜中の2時に俺に電話を掛けていたストーカーなど存在しない。


俺に応援してくれてる、女子が居るよ……!

明らかに道明寺くんの引き立て役になっていたばかりに、泣けてきた。


花坂さんがきょとんとしていた。


「あれ、……永瀬くん、が泣いてる…?どうしよう、誰をボコしに行けばいいのかな?」


やはりストーカーだったので、また泣いた。




相手チームのキックオフで、俺たちはフィールドを走り出した。

敵が単純にパスをミスった。コロコロと転がるサッカーボール。


その隙に道明寺くんが俊足と華麗なるボール捌きを見せて、敵を蹂躙した。


俺はただ走っていた。


「道明寺ナイスーッ!」

「頑張って道明寺くーん」

「永瀬くんが走ってるカッコいい……まだ余力のある軽やかな走り……そう、これは準備運動、永瀬くんは最後の切り札なの」


道明寺がゴール前でダッシュした。


俺は敵に押さえられていた。


「そのまま突っ込め道明寺ぃ!アンタなら行けっぞ!」

「道明寺くんきゃぁぁカッコいい!」

「うんうんよく分かってるよ敵チーム。そうだよね、当然大穴の永瀬くんをマークしとかなくちゃね。永瀬くんを自由にしたらシュート決められちゃうもんね、よく戦局が()えてるわ敵の指令官」


道明寺くんがシュートを決めた。


俺は何もしていない。


「道明寺やった!やっぱりすごいわあいつ!」

「うわぁぁそこで決めちゃう!?カッコいい道明寺くん!」

「キャァァァ、カッコいいぃぃ永瀬くんんんん!」


クラスの女子の道明寺くんへの歓声に紛れて、1人だけまったく違う応援をしている人が居た。

しかも大勢の声に紛れてバレないと思ったのか、本当に喉を枯らす勢いだった。誰も気付いてないが、俺に宣言した通り、うちわを振っていた。


うちわには『私の心にシュートを決めて❤︎』と書かれてあった。

やかましい。




そして、道明寺くんが連続ポイントを決めて、うちのチームは優勝した。


俺は何もしていない。


「うう。はあ、永瀬くんカッコよかったぁっー!永瀬くんのお陰でチームを優勝に導けたんだよ!フィールドを走ってる姿を見てたら私心臓がキュンキュンしてたよっ、永瀬くんがきっと今日のMVPだね!………えっ?道明寺くんがMVP?運営はふざけてるの??やっぱり私、生徒会にひとこと言ってこなくちゃ!じゃあね、永瀬くん!今日の試合見て永瀬くんのうっかり惚れた子が居るかもしれないけど相手にしたら駄目だよそんなミーハー!」



やはり俺は責任を持って、花坂さんを病院に連れて行くべきなのだろうか。

脳神経内科か、精神科か、迷うところである。









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