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1・ストーカーの申請

下駄箱に入っていた手紙。

曰く、『放課後に第二講義室に来てください』。


俺は思った。

……これは、もしやすると、素晴らしいことが俺を待ち受けているのではあるまいか?


確定演出みたいなものである。

スマホ1つで用が済むこの時代に、下駄箱の手紙はもう告白しかあるまい。


男子高校生らしくテンションがぶち上がって、軽い足取りで、放課後に指定された通り第二講義室に向かうと、既に俺より先に入室している者が居た。


「花坂さん……?」


クラスであまり目立つタイプではないが、小顔、白い肌、サラサラに手入れされた黒髪の三拍子が揃ってる可愛らしい同級生だ。

奥ゆかしいというか、表立ってはないが、男子からひそかにいいなと思われるタイプの女子だった。


「来てくれてありがとうございます、永瀬くん」


かち、と彼女が眼鏡の縁を押し上げた。


俺の名前を呼んだということは、花坂さんが俺を呼び出したのだろうか。


教室よりも少し狭い講義室で、2人きり。

花坂さんは、微かに息遣いを漏らした。


ああ、来る。

これは、きっとーーーーー


「永瀬くんをストーカーする許可をください」


「ん?」


俺の耳がおかしかったのだろうか?

色んな意味で彼女から飛び出すのがおかしい言葉が俺に向けられたので、俺はいやいやと笑った。


変にテンションが上がりすぎて、動転してるんじゃないか俺。


「ごめん、花坂さん。もっかい言ってもらっていい?」


「永瀬くんをストーカーする許可をください」


幻聴じゃなかったよ!ゴリゴリ現実だったよ!そして告白じゃなかったのが一番ショックだよ!!


「ど、……どういうこと…?」


「私、永瀬くんを見てると動悸が激しくなるんです」


「………は、はあ……」


「永瀬くんの造形美を見てると、私、何かすごい良からぬ気持ちになるんですっ!フェイスライン、鼻筋、首筋、喉仏、全部どタイプです!」


「……ど、…どうも……?」


「多分この世に法律さえなければ、今すぐに永瀬くんに変なことしてる自信がありますっ!」


大変いい笑顔である。

花坂さんは、興奮しきったように俺にずいっと詰め寄った。普段教室で大人しい彼女の姿がかりそめなのではないかと思うほどの熱のこもりようだった。


嗚呼、コレが恋の告白ならなぁ………!


どうして平平凡な俺が隠れ可愛いクラスメイトに少々変態チックな告白をされているのだろうか。

別に悪い気分ではないけど、恋の告白であってくれよ……!


「だ、駄目ですか!もう私我慢できません!永瀬くんの造形美を盗撮したいし、学校の外でも陰から見守りたいし、なんかその……手とか触れたいです!」


「それストーカーである必要ないのでは!?」


恋人になればいいじゃん、と言いかけて自分は何を言ってるのだろうとはたと気付いた。

危うく無責任で、そして傲慢なことを口走ってしまうところだった。


花坂さんは一言も俺を好きだなんて言ってないのに、恋人になることを提案するなんて、気色悪いムーブをしてしまうとこでした、あぶね!


そうじゃなくて、花坂さんは俺のストーカーになりたいんだよね。


……いや意味わかんねぇ!??


花坂さんはハアハアと本人の申告どおり、息を切らしながら、俺にさらに迫った。

俺は後ずさった拍子にバランスを崩して、近くの机にガッと腰がぶつかり、花坂さんに追い詰められる。


「ちょっ、……」


「それで永瀬くん、お返事をください……!」


「待っ、考えてみてくれ花坂さん!自分からストーカーを許可する人間が居ると思うか!?」


「お願いお願いお願いします永瀬くんっ!私このままだと永瀬くんのこと考えて変になっちゃいそう!ちゃんと限度守ります!永瀬くんの私的空間に侵入はしませんから!誓います!」


「んぐっ……」


俺は返事に詰まった。

てか近い。近くで見るとなお可愛いぞ、この人やっぱり。


「お願い、永瀬くん……?」


懇願するように上目遣いに見つめられてしまえば、もう俺に逃げ道はなかった。

俺はつくづく、押しに弱い人間なのだ………っ。


「わ、分かった………」


「ありがとうございます、永瀬くん!」


こうして俺にストーカーができた。









読んでくださりありがとうございます!

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