7.元気な看板娘ヤヨイのオ◯◯コ
(ヤヨイ……!?)
そして、視線はそのまま、ヤヨイの下腹部へ。
股の付け根にある一本の「割れ目」が目に飛び込む。
次の瞬間、裏庭に悲鳴が響き渡った。
「きゃあああああああああああああああっっ!!?!」
「ご、ごめん!!本当に違うんだ!!」
言い訳にもなっていない言葉が、勝手に口から飛び出す。
「違う!?今、ぜっっったい見たよね!?見たでしょ!?私の、お尻とおっぱい!!」
「み、見てない!!いや見た!!でも違う!!それだけじゃなくて!」
「それだけじゃない……?てことは……アソコも……???……うわーん、信じられない!全部みられちゃった!今、『見た』って言ったよね!?自白したよね!?現行犯だよね!?」
「いや、反射的に口が滑っただけで!!」
「じゃあ、見たんじゃない!!」
ヤヨイは顔を真っ赤に染め、慌ててタオルで胸と下半身を隠そうとしている。 けれど、恥ずかしさのあまりイヤイヤと体をくねらせるたびに、タオルの隙間から、見せてはいけないはずの一本の割れ目が、チラチラとリューの視界に飛び込んでくる。
(いや見ちゃダメだろ……!でも見えちゃうんだよ……!)
リューの視線は、ヤヨイの下腹部の一点へ。どれだけ彼女が恥ずかしさに身をよじらせても、左右に揺れるヤヨイのアソコを逃さず凝視していた。
しばらく罵声と謝罪の応酬が続いたあと。
ヤヨイは、大きく息を吸い込んでから、絞るように言った。
「……いい?リューさん」
「は、はい……」
「もし今見たのが、私じゃなくて……“サヨの裸”だったら」
その先を言う前に、リューは全身の毛が逆立つ感覚に襲われた。
「私はあなたを殺してたから」
「……っ!」
冗談ではない。普段の明るさが嘘みたいな、冷えた声だった。
ヤヨイは、ぎゅっとタオルを握りしめる。
「もしサヨに同じことをしたら……私は絶対に許さない。絶対に、ね」
リューは何も言えなかった。
喉が乾いているはずなのに、今は別の理由で声が出ない。
ヤヨイは、そこでふっと表情をゆるめた。
「……まあ、私なら……ギリギリ、生きてていいけど……。でも、ほんっっっとうに、次からは気をつけてね。マジで」
怒り半分、呆れ半分。
それでも、完全に突き放すわけではない、微妙な空気。
ヤヨイは顔を真っ赤にしたまま、改めてタオルを握り直した。
「……とにかく!ちょっと待ってて。着替えるから。リューさんは、そこの壁見てて。絶対、絶対、こっち振り向いちゃダメだからね!」
「わ、分かった!!絶対に振り向かない!!」
リューは勢いよく壁に向き直る。
木の板の節穴を見つめることに、こんなに集中したのは人生で初めてかもしれない。
背後から、音が聞こえてくる。
水が肌からこぼれ落ちる音。
濡れた髪を絞る、きゅっ、きゅっという音。
タオルで身体を拭う、布の擦れる小さな気配。
(落ち着け……落ち着け俺……)
しかし、想像力が勝手に仕事をし始める。
さっき脳裏に焼きついた、まんまるで張りのあるお尻。
水滴がゆっくりと伝い落ちる、形のいいおっぱいと、桜色の乳首。
そして──
股の間にあった、ぷっくり閉じたかわいい割れ目。
それらの映像が、頭の中で容赦なくループ再生される。
(あああああああ!!思い出すな俺!!忘れろ!!今すぐ記憶を消せ!!)
そんなことができれば苦労はしない。
背中越しに、ヤヨイの声が届いた。
「リューさん、今、どんな顔してるの?」
「どんなって……必死に壁見てる顔だけど……」
「変なこと考えてたら、後でお母さんに全部言いつけるからね」
「アカネさんって領長だよね!? 脅しのカードが重い!!」
くだらないやり取りをしていると、少しだけ緊張がほぐれる。
やがて、衣擦れの音が止み、足音が近づいてくる。
「……もういいよ。振り向いて」
おそるおそる振り返ると、そこには服を着終えたヤヨイがいた。
髪はまだところどころ濡れていて、頬はうっすら赤い。
「ごめんなさい!」
リューは背すじを伸ばし、全力で頭を下げた。
突然の勢いに、ヤヨイは一瞬きょとんとする。
「……まあ、うん。こうやってちゃんと謝ってくれるならいいけど……」
ため息まじりに、仕方ないな、という口調で受け入れる。
「ほんと、びっくりしたし、恥ずかしかったし……今思い出しても顔から火が出そうなんだからね。次からは、ちゃんと気をつけてよ!」
言葉とは裏腹に、ヤヨイの表情はそこまで重くない。
少なくとも、「二度と口きかない」みたいな空気ではない。
リューの胸に、ほんの少しだけ安堵が広がった。
ヤヨイが小さく息を吸い、促すように視線を向ける。
「……で?リューさんは、なんでここに来たの?」
「あ、その……喉がカラカラでさ。朝から森を歩き回ってて……」
リューは、魔の森でキノコを探していたこと、生のキノコを食べてしまったこと、そのせいで喉が完全に乾ききってしまったことを、かいつまんで説明した。
「生で食べたの!?」
「ど、どうしても……空腹に耐えきれなくて……!」
「もう……ほんと、無茶するんだから……」
呆れながらも、ヤヨイの声には心配が滲んでいる。
「とにかく、水なんだけどね」
ヤヨイは目線を落とし、さっきまで自分が水浴びしていた桶の水へとそっと視線を向けた。
「ここにある水は、街の井戸から引いてきたものなんだ」
「そうなんだ。見た感じ、すごいきれいだね」
「うん。でもね、その分、管理もすごく厳しいの。もし井戸に毒を入れられたり、汚されたりしたら大ごとでしょ。だから、井戸の水は『住民だけ』が使えるように決まってるんだよ」
「……そういうことか」
外から来た孤児である自分が、簡単に触れていいものではない。
言われてみれば当たり前なのだが、こうして説明されるまで気づかなかった。
「だからね……ごめん。リューさんは、まだ住人登録されてないから、この井戸の水は使わせてあげられないんだ」
申し訳なさそうに言うヤヨイ。
彼女のせいではないと分かっていても、リューは思わず肩を落とした。
「そっか……。じゃあ、俺、水どうしたら……」
そのときだった。
視線を落としたリューの目が、自然とヤヨイの足元に置かれた桶へと向いた。
底には、まだ水が残っている。
そして──そこには、ヤヨイの割れ目がはっきりと映っていた。
「え?」
慌てて服を着たせいだろう。ヤヨイは下着をつける余裕もなく、上着だけを羽織っているようだった。もちろん、上着の丈は腰まであり、前からは何も見えない。
だが、足元に置かれた桶の水には、反射でヤヨイのかわいい割れ目、
いや、はっきり言おう、
ヤヨイのオ◯◯コが思い切り鮮明に映っていた。
ま、丸見え……。
今度は動いていない分、細部までくっきりと見える。
当然、リューはその細部を逃すまいと、目を大きく見開いて前のめりに凝視した。
ヤヨイが、怪訝そうな顔でリューの視線を追う。
そして、桶に残った水を見て──、一瞬で顔を真っ赤にした。
「え、ウソでしょ……ちょっと待って、まさか……」
(ヤバい……!終わった、バレた……!)
「この水、飲みたいの!?」
「えっ!? ち、違うって!!」
ヤヨイは一歩後ずさりしながら、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「今、完全に『お風呂上がりの女の子の水、ヤヨイ水うまそう……』って顔してたよね!?」
「ヤヨイ水ってなんだよ!?」
「私がさっきまで浸かってた水だよ!? 飲むの?変態!?」
「だから違うって!!」
ヤヨイは、恥ずかしさと困惑で、わたわたと手を振っている。
本当は、ヤヨイのオ◯◯コを凝視していただけなのだが、それは言わないほうがいいだろう。
「もう……ほんっとに、エッチな人なんだから」
そう言いつつも、ヤヨイは口元をわずかに緩めた。
「でも、飲み水ならちゃんとあるよ。街の西側に小さな川が流れてるの。そこは住民じゃなくても使っていい決まりになってるんだ」
「本当!?」
「うん。飲むときは、一応、上流の方に行ったほうがいいけどね」
「助かった……!」
リューは心の底から安堵した。ついさっきまで「このまま干からびて死ぬのでは」と本気で思っていたのだ。
「だから、その……絶対にこの桶の水は飲まないでね? さすがに、私でもそれは引く」
「分かってるから!飲まないから!俺だって羞恥心はある!」
「今までの行動だと、あんまり説得力ないけどね……」
ヤヨイは半眼になりながらも、どこか楽しげだった。
「川の場所、案内してあげたいんだけど……今はサヨのこともあるし、ちょっと忙しいんだよね。でも、道は簡単だから」
そう言って、街の西側の出口、小さな看板、そして獣道と、分かりやすく道順を説明してくれた。
「とりあえず、今日はそれでなんとかしのいで。それから……」
ヤヨイはふっとリューを見上げ、声を落とした。
「さっきのこと、あんまり気にしないでね。私の裸じゃなくて──サヨのこと」
「……」
「でも、本当に……サヨは、すごく怖がりなの。男の人が相手だと、とくに、ね……」
「わかった、気を付けるよ」
ヤヨイは、言いたいことを伝えたあと、空気を少しでも和らげようと軽く笑った。
「そうそう。だからもしリューさんが『ヤヨイがお風呂で使った水を飲みたいです!』なんて言い出したら、それはもう……完全アウトだからね?」
ヤヨイの軽口に、リューも苦笑しながら返す。
「まあ、でも……川がなかったら、喉が渇きすぎて『お願いします!ヤヨイ水飲ませてください!』って言ってたかも──」
その瞬間。
「……ヤヨイ……水……?」
かすれた声が裏庭に落ちた。
背筋がぞくりと冷える。
振り向くと、買い物袋を抱えたサヨが立っていた。顔は真っ青で、手は小刻みに震えている。視線はリューと桶を何度も往復し、恐怖と警戒と、わずかな絶望が混じっていた。
「えっ……サヨ!? い、いつからそこに……」
ヤヨイの声も震える。だがサヨは、ぎゅっと唇をかみしめながらリューを見た。
リューは思わず一歩踏み出し、絞り出すように言う。
「さ、サヨさん……今のは──」
「……ひっ」
サヨの肩が大きく震え、涙がぽろりとこぼれた。
「……変態……っ!」
その一言だけを残し、サヨは買い物袋を落として走り去った。
「サヨ、待って!! 今のは違うの!! 本当に違うから!!」
ヤヨイがすぐに追いかけ、リューを手で制して振り返る。
「リューさん、ここは私が行く! あの子、このまま誤解したら本当にダメだから……!」
そう言い残し、ヤヨイは裏庭を駆けていった。
静かになった裏庭には、落ちた袋と転がる野菜だけが残される。
リューはただ立ち尽くすしかなかった。
(……終わった……完全に変態だと思われた……)
喉の渇きも、さっきよりさらに重くのしかかってくる。
(……とにかく、川へ行こう)
誤解を解くのはヤヨイに任せるしかない。
ふらつく足取りで裏庭を後にする。
こうして、ウィンド領に来て三日目の朝は、最悪の形で幕を下ろしたのだった。
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