プロローグ ──君は、未来で泣いていた。
誰よりも明るくて、誰よりも優しかった君が。
クラスの中心で笑い、誰にでも平等に接していた“太陽”みたいな君が、
誰にも気づかれないように、そっと涙をこぼしていた。
その理由を、僕は知らなかった。
そして──気づいたときには、すべてが遅かった。
「ごめんね、ユウトくん。ほんとは、もっと……話したかったよ」
校舎の屋上で、夕焼けの中、君は微笑んでいた。
その笑みは、まるで救いを得たようで──
なのに。
なのに、どうして、君はそこから飛び降りたんだ。
どうして、誰にも頼らなかったんだ。
どうして、僕じゃダメだったんだ。
──世界は、そこで終わった。
校内の騒然とした声、教師たちの悲鳴、救急車のサイレン。
誰もが取り乱す中、僕はただ、呆然と立ち尽くしていた。
あの日まで、僕にとって君は“遠い存在”だった。
教室の隅で、ただ見つめることしかできなかった、触れてはいけない光。
でも──
気がつくと、僕は一週間前の朝に戻っていた。
あの教室で。あの朝日で。君がまだ生きている、あの時間で。
運命が歪んだ理由も、僕がなぜ巻き込まれたのかも、わからない。
だけどひとつだけ、確かなことがある。
君を救えなかった未来に、僕は戻りたくない。
たとえ、この命を代償にしてでも。
何度だって、やり直してみせる。君が笑って生きている未来を、掴み取るまでやり直そう。