愛してると言われるまでは
少し変更しました。
恋って何だろうと思うぐらい俺は誰かを愛したことはなかった。ただ、1人を除いては…。
俺が恋した女性は、前田結菜という名前だった。
結菜は、雪のように肌が白く、指先は触ったら折れるかもと思うぐらい細く、誰に対しても優しい人だった。
結菜はそんな人だったから、男女問わず、好かれていた。俺の友達の何人かは結菜が好きだと公言していた。
しかし、俺は恋愛に興味がなかったから、結菜のことも人気者なんだなというぐらいの認識でしかなかった。
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結菜に対する俺の認識が変わったのは雨が絶え間なく降り続いている6月のことだった。雨が強く、駅で雨宿りをしている俺に「どうぞ。私、折り畳み傘持っているんで。」と結菜は傘をわたして去って行った。これが結菜に興味を持った瞬間だった。
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俺は、結菜に傘を貸してくれたお礼をするために食事に誘ったとき、頬を少し赤らめながら、okという返事をした結菜を可愛いと思った。
俺は今までキャラクターや動物を可愛いと思ったことはあったが、ある1人の女性を可愛いと思ったことはなかった。だから、結菜を可愛いと思ったのは、俺が女性を可愛いと思った初めての感情だった。
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夏休みの中頃である8月、俺は結菜が男子と2人っきりで仲良くカフェを楽しんでいたという噂を聞いた。俺は噂を聞いた日から、食事がほとんど通らなくなり、ベッドの上で塞ぎ込んでいた。俺は、この日、結菜に恋しているをいうことに気づいた。8月13日のことだった。
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文化祭がある10月、文化祭の係がたまたま運の良いことに、結菜と同じだった。これは、神様の導きだ。そう思い、俺はこのとき、文化祭が成功したら、結菜に告ろうと決めた。
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文化祭は無事、成功した。だから、文化祭が終わった後からずっと悩んでいる。どうやって告ろうか。ずっと悩んでいるから、ろくに寝ていない。
そんな俺を結菜は「大丈夫?」と心配してくれる。
そんな結菜が可愛いと思うのは俺の性格がねじ曲がっているからだろうかと考えたりもする。そして、目の下にくまができている俺を心配してくれてるのは、俺のことを好きだからだろうかと考えたりもする。あの8月13日のことを思い出し、結菜に告白することを決意した。
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結菜って呼ぼうか。それとも前田さんって呼ぼうか。2人っきりで話したときは、結菜のことを前田さんと呼んでたから、どうしても悩んでしまう。
むむ、ちょっと待てよ。勝手に人の名前で呼んでいるのって、ヤバいやつじゃないか?てっことは、俺はやばいやつ…?まじか。今の今ままで気づかなかった。こんなやつは結菜、うううん、前田さんに告っても断られるだけだよな。でも、やらないよりはやったほうがいいような気もするし、やらないほうが結菜、ううううん、前田さんに迷惑がかからないような気もするし、どうしよう。まあ、心の中で勝手に前田さんじゃなくて、結菜って呼んでるやつは気持ち悪いって思われるに決まっている。
そうだ、LINEの交換ぐらいならokかもしれない。善は急げだ。よし、明日、前田さんにLINE交換してもらうように頼もう。ああー、めっちゃ緊張する。どうしよう、寝れない…。
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俺、南野和馬がLINEの交換を頼みことを決めた翌日のこと…。
我慢できなっかった俺はいつもより2時間も早く家を出てきてしまった。俺はいつも、学校に早めに着くようにしている。だからいつも、遅刻になる時間の30分前には学校に到着している。それなのに、いつもより2時間も早く家を出てしまった俺は、最低でも1時間は学校の校門の前で待たなければならないということをすっかり失念してしまっていた。
しかし、俺は運が良いからか、前田さんに学校の近くのコンビニで偶然、鉢合わせした。どうやら、前田さんは学校からちかいとこに住んでいるらしい。俺は、今がチャンスだと思った。
「あの、前田さん。LINE、交換してもらえませんか。」
よし、噛まずに言えたぞ。
「えぇ。もちろんいいですよ。」
まじか、ラッキー。やっぱ、俺、今日、運持ってるわ。
「ありがとうございます!」
「あの、私のこと『前田さん』って呼ぶんじゃなくて、『結菜』って呼んでください。」
「え!いいんですか?」
「えぇ。あと、クラスメイトなんですし、2人とも敬語じゃなくて、タメ口で話すとかはどうでしょうか。」
まじか。神様、ありがとうございます!まじで、一生感謝します!
「結菜がいいんだったら、いいよ。」
「では、そういうことにしましょう。また、クラスで会いましょう。」
よし、ミッション達成どころか、結菜って呼んでいいって言ってもらえるなんて今日はなんてついているんだろう。結菜に今まで心の中では前田さんじゃなくて、結菜って呼んでましたって言っても許してくれるんだろうかと意味のないことばかり考えていた。
南野和馬は、今日のことを絶対に忘れないと決めたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和馬の気持ちが最高潮に達する頃、前田結菜はずっと何かを考えていた。
はあー。タメ口でいいですよとかキモすぎたかな。結菜と呼んでとお願いしたときも、和馬くん、若干、驚いてたよね。こっちの方がキモかったかな。はあー。マジで、和馬くんに変なやつと思われていたら、嫌われたら、どうしよう。こんなこと考えるだけで憂鬱になってしまう。
ダメ、ダメよ。私。今日、和馬くんとLINE、交換できたじゃない。いいことあったんだから、もう、いいじゃない。よし、といいながらほっぺたを強く2回叩いた。これで気合い入ったでしょ。明日も頑張るぞー。
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結菜が気合を入れた夜のこと…。
結菜は寝ながら、泣いていた。和馬がトラックに轢かれる夢を見たのだ。和馬が轢かれた場所は、結菜と和馬が鉢合わせした、あのコンビニの前の道路だった。
結菜は心配になり、すぐにあのコンビニへ向かった。
するとそこには、和馬がいたのだ。
え!なんでここに和馬くんがいるの。あの夢は正夢だったっていうの。
「あれ、結菜じゃないか。なんでこんな朝早くにいるの?」
「えっーと。わ、私はアイスが急に食べたくなって…。そういう和馬くんはなんでいるの?」
「あれ、俺のこと。和馬くんって呼んでくれるんだ。なんだかてれるな…。」
待って、めっちゃ恥ずいだけど…。
「そんなことどうでもいいから!だから、なんで和馬くんがここにいるの?」
「あぁ、俺はな、ここにきたら結菜に会える気がしたから、来ちゃった。」
えーー。それって告白なの。そうだったら、嬉しいけど、なんか恥ずかしいと思うような気も…。
うん、とりあえず、これが告白なのかも聞かないとね。間違っていたら、恥ずかしいだけだし…。
「あのー。それって告白してますか。」
「えーー!告白になってた?もう、いいや。この際だから言うよ。お、俺は、結菜のことが好きだ!お、俺の彼女になってくれないか?」
「わ、私も和馬の彼女になりたいです!」
私はこのとき、浮かれていて、背後からくるトラックに気づいていないかった。
バーーン
私は地面に打ち付けられた。
私は少し擦りむいただけだった。しかし、周りを見ると和馬くんが血だらけで横たわっていた。どうやら、和馬くんは、私のことを助ける代わりにトラックに轢かれたみたいだ。
「なんで、私を助けたの?そんなことをしなかったら、和馬くんは助かったのに。」
「何を言っているんだ?俺が、結菜のことを愛しているから。愛している人を助けるのは当たり前だろう?」
「私は、優しくてカッコいい和馬くんが好きなの!でも、こんなことになってしまう優しさなんていらない!」
もし、私がトラックに気づいていたら…。こんなことにならなかっただろうに…。私が、私が、浮かれていたから…。
大きな音がしたから周りの人が呼んでくれたのだろう。救急車が到着した。私は、涙ながら、救急隊員さんに私が悪いってことを伝えた。救急隊員さんは違うと否定してくれた。それでも、私の心にポッカリと空いた穴はふさがらなかった。
救急車に乗る前に和馬くんは私に言った。
「もし、俺が死んでしまっても、俺のことを忘れないでくれよな!」と。
私は、「ぜーったいに和馬くんを忘れない!和馬くんも忘れないでね!」と言った。
「よし、2人の約束な。」
それが救急車に乗る前の最後の言葉だった。
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和馬くんは、死ななかった。その代わり、車いす生活をしなければなくなったけど…。そして、事故に関係する記憶がスッポリ和馬くんの記憶から消えてしまった。
そう、私との記憶が消えてしまったのだ。それを知った日は、1日中泣いていた。ふと、考えたのだ。和馬くんにまた、好きになってもらえばいいじゃない、と。そして、和馬くんが私にくれた優しさを返していこうと決めた。
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こんなことを考えたなと思い出しながら、私はノートを閉じる。どうやら、和馬くんは私とLINEを交換した日、私との思い出をノートに書き込んでいたらしい。このノートは、和馬くんのお母さんから渡された。「今までありがとう」って。おかげで、両思いだったということがわかり、ほっとする。
今日は、8月13日で夏休み真っ只中。それでも、私は、和馬くんが、私が、約束を破らないように、今日も和馬くんに愛してると言いに行く。和馬くんと私が、また両思いになる日まで。彼が愛してると言ってくれる日まで、私は長い長い冒険に出る。
お終い。
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