32.紅の誓約
レイン視点です。
サンフォード公爵邸の書斎で、レインは窓辺に立っていた。
夕暮れの空が、まるで紅の輝きのように赤く染まっている。
昨日の告白から、世界の色が変わったように感じられた。
「坊ちゃま」
執事が、ノックと共に声をかける。
「聖女様がお見えです」
その知らせに、レインの心臓が跳ねる。
琥珀色の瞳が、より深い輝きを帯びる。
もう、この感情を隠す必要はない。
むしろ、全身全霊でその想いを伝えていきたい。
「すぐに、会いたい」
その言葉には、情熱の守護者らしい率直さが溢れていた。
***
応接室に入ると、パールが窓際で夕空を見上げていた。
その姿に、レインの中で紅の力が鮮やかに脈打つ。
昨日の口づけの記憶が、より強く心を揺さぶる。
「パール」
振り返った彼女の頬が、僅かに赤みを帯びる。
その反応に、レインの情熱は更に高まっていく。
だが、それは暴走する炎ではない。
心を温める、確かな想いの形。
「昨日のことを」
レインが一歩近づく。
「後悔してはいない。むしろ、もっと伝えたいことがある」
夕陽が応接室を赤く染めていく。
その光の中で、レインは新しい決意を胸に秘めていた。
サンフォード家の当主として、そして情熱の守護者として。
「君と共に、歩んでいきたい」
レインの声には、迷いのかけらもない。
琥珀色の瞳が、真摯な光を放っている。
それは単なる情熱だけではなく、より深い愛情の証。
パールとの距離を、さらに縮める。
紅の力が、二人を包み込むように輝きを増す。
その光は、もう制御を失うことはない。
むしろ、二人の絆をより強く結びつけていく。
「サンフォード家の長男として」
レインが続ける。
「そして、一人の男として」
夕陽が窓から差し込み、応接室の空気をより深い紅色に染めていく。
その光の中で、レインは自分の心の全てを、さらけ出そうとしていた。
「君を守り、支え、愛し続けたい」
その言葉には、レインの全てが込められていた。
情熱の守護者としての強さ。
束縛から解放された純粋な想い。
そして、決して揺るがない誓い。
パールの瞳に、夕陽が映り込む。
その光景に、レインの心は更に高鳴る。
紅の力が、その鼓動に呼応して輝きを増していく。
「僕の想いは」
一歩近づき、パールの手を取る。
「昨日も、今日も、そしてこれからも変わらない」
その仕草には、レインらしい率直さがあった。
活発で、時に突っ走りそうになる性格。
だが今は、その全てが愛情という形に昇華されている。
応接室に満ちる夕陽が、二人をより深く染めていく。
「パール」
その名を呼ぶ声に、想いが溢れる。
レインの腕が、パールを抱き寄せる。
紅の力が、より鮮やかな輝きを放ち始めた。
「答えは、急がないで」
囁くような声で告げる。
「でも、この想いだけは、ずっと変わらないから」
その言葉には、情熱の中にも優しさが滲んでいた。
突き進むような性格でありながら、相手を思いやる心。
それこそが、今のレインの本質。
夕陽が二人を包み込む。
応接室の空気が、より深い紅色を帯びていく。
まるで、ルビーの力そのものが形となったかのよう。
パールの体が、レインの腕の中で微かに震える。
その反応に、彼の心は更に熱を帯びていった。
もう、この想いは誰にも止められない。
「君を愛している」
その言葉と共に、レインは唇を重ねる。
昨日よりも深く、より強い想いを込めて。
紅の力が、その瞬間をより鮮やかに彩っていく。
窓の外で、夕陽が沈みかける。
最後の光が、応接室に紅い輝きを投げかける。
それは、情熱の守護者の誓いを祝福するかのよう。
***
レインの腕の中で、時間が溶けていく。
その存在は、いつも眩しいほどの熱量を持っていた。
だが今は、その情熱さえも愛おしく感じられる。
紅の力が、二人を優しく包み込む。
それは暴走する炎ではなく、心を温める確かな光。
レインの純粋な想いそのものが、形となった証。
夕陽の最後の輝きが、永遠の誓約を見守っていた。