表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/41

16.運命の檻

仕事が建て込んでいて、更新遅れてしまいました。

「来てくれて、よかった」

玄関で待っていたカイトが、二人を出迎える。

「レインの容態は安定していますが・・・」


翠の瞳が、何かを訴えるように輝く。


新たな選択肢が浮かぶ。


①レインの様子を尋ねる

②ルシアンの発見について聞く

③カイトの表情の意味を探る


パールは②を選ぶ。

昨夜からの違和感と、ヴィクターの言葉が気になっていた。


「ルシアン様の発見された文書について」

パールが声を上げる。

「私にも、見せていただけないでしょうか」


カイトの表情が引き締まる。

「図書館に。昨夜から、ずっと籠って調べています」


広間を通り、図書館への階段を上る。

三人の足音だけが、静かな邸内に響いていく。


図書館の扉を開けると、ルシアンが大きな古文書を広げていた。

金色の髪が朝日に輝き、普段の軽やかさは影を潜めている。


「これを見て」

ルシアンが古文書を指す。

文字は古い言語で書かれているが、パールにも読める。


『運命の檻』


その文字に、パールは息を呑む。

昨夜からの違和感、そして心の中でずっと感じていた束縛感。

それが、確かな形となって目の前に存在していた。


新たな選択肢が浮かぶ。


①すぐに内容を確認する

②ルシアンの説明を待つ

③他の守護者の反応を見る


パールは②を選ぶ。

ルシアンの真剣な表情には、何か重要な発見があるはずだ。


「この文書には」

ルシアンが静かに説明を始める。

「聖女の試練について、興味深い記述がある」


碧眼が古文書の一節を指す。

『真なる選択とは、心の自由なる意思により為されるべきもの』


「本来、聖女の試練は」

ルシアンが続ける。

「自らの意思で道を選び取るもの。しかし、今の世界では違う」


その言葉に、パールの胸が高鳴る。

自分だけが見ている選択肢。

それは本来、存在するはずのないものなのか。


「私には」

パールが口を開く。

「いつも選択肢が見えます。決められた道の中から、選ばなければならない」


三人の守護者が、息を呑む。

特にルシアンは、何かを確信したような表情を浮かべていた。


「やはり」

ルシアンが古文書をめくる。

「これは、世界そのものが歪められている証なのかな」


新たな選択肢が浮かぶ。


①歪められた理由を尋ねる

②解決方法を探る

③自分の体験を話す


パールは②を選ぶ。

原因も気になるが、まず解決策を見つけなければならない。


「この束縛から、解放される方法はありますか?」


「ある」

ルシアンが古文書の別のページを開く。

「だけど、それには三つの宝石の力が必要になると」


昨夜の出来事が、パールの脳裏に蘇る。

アメジストとエメラルド、そしてサファイア。

三つの宝石が共鳴した時の感覚。


「昨夜の力」

カイトが窓際から歩み寄る。

「あれは偶然ではなかったということですね」


「ああ」

ルシアンが頷く。

「三つの宝石には、それぞれの意味がある。調和と、知恵と、癒し」


古文書には、さらなる記述が続いていた。

『三つの光が交わる時、運命の檻は揺らぐ』

『聖なる意思により、新たな道は開かれん』


新たな選択肢が浮かぶ。


①今すぐ試してみる

②詳しい方法を確認する

③他の守護者の意見を聞く


パールの目の前で、選択肢が揺らめく。

その光景に、今までにない違和感を覚える。


②を選ぶ。

慎重に、確実に。

それが今の自分にできる最善の選択だった。


「具体的に、どうすれば」


「儀式が必要だね」

ルシアンが別の頁を示す。

そこには、三つの宝石を配置する図が描かれていた。


「三角の頂点に」

ヴィクターが図を覗き込む。

「各々の宝石を」


「そして中心に」

カイトが続ける。

「聖女の力を」


パールは息を呑む。

昨夜、レインを救った時の力。

あの時の感覚なら、きっと。


新たな選択肢。


①今すぐ実行する

②レインの回復を待つ

③より詳しく調べる


***


パールは①を選ぶ。

胸の奥で、確かな決意が芽生えていた。

これ以上、誰かに決められた選択肢に縛られ続けるわけにはいかない。

一刻も早くこの檻から出なければ。


「今すぐ、試してみましょう!!」


その言葉を口にした瞬間、心臓が高鳴るのを感じた。

今までの選択は、全て用意された道の中からの選択だった。

だが今回は違う。これは、完全に自分の意思による決断。


「本当にいいのか?」

ヴィクターの声には心配が滲んでいる。

「レインの件で、みな疲れているはず」


その言葉に、パールは昨夜の記憶を振り返っていた。

確かに体は疲れている。

だが、心は今が最も冴えていた。


「大丈夫です」

自分の声に、思わぬ力強さを感じる。

「むしろ、今このタイミングしかないのかもしれません」


昨夜の三つの宝石の共鳴。

あの感覚が、まだ体に残っている。

その余韻が消えないうちに、試すべきだという直感があった。


新たな選択肢が浮かぶ。


①図書館で実行する

②儀式の間へ移動する

③庭園で行う


選択肢を見つめながら、パールの心に強い皮肉が浮かぶ。

選択肢からの解放のために、また選択肢に従わなければならないという矛盾。


***


パールは②を選ぶ。

儀式の間――その場所を選んだ理由は、単なる直感ではなかった。

昨夜、レインを救った時の感覚が、その場所を指し示していた。


「・・・儀式の間へ」

その言葉を口にしながら、パールは自分の心の中を見つめていた。

不安と期待、そして何より、強い解放への願い。

今まで従うしかなかった選択肢という束縛から、自由になりたい。


階段を上りながら、これまでの選択の重みが胸に押し寄せる。

一つ間違えば死に至る選択。

誰かの心を傷つけかねない選択。

そのどれもが、用意された選択肢の中からの選択でしかなかった。


(本当に、これでいいのだろうか)


心の中で自問する。

もし失敗すれば、取り返しのつかない事態になるかもしれない。

だが、このまま永遠に選択肢に縛られ続けることの方が、耐えられない。


儀式の間に着くと、朝日が大きな窓から差し込んでいた。

昨夜の記憶が、まだ空気の中に残っている。


「三つの宝石を」

ルシアンが古文書を確認しながら説明を始める。

「正三角形の頂点に置いて」


パールは床に描かれた紋章を見つめた。

その紋様は、まるで今日のためにあったかのような配置を示している。

心臓が高鳴り、手のひらに汗が滲む。


新たな選択肢が浮かぶ。


①守護者たちの準備を待つ

②自分から位置について

③最後にもう一度確認する


選択肢を見つめながら、パールの心に強い感情が込み上げてきた。

これが最後の選択になるかもしれない。

その思いは、不安というより、大きな希望に近かった。


パールは②を選ぶ。

もう迷いは必要ない。自分から一歩を踏み出す時だ。


紋章の中心へと歩み出す。

足音が静かに響くたび、心臓の鼓動が早くなっていく。

これまでの選択に従順だった自分から、今、解き放たれようとしている。

その予感が、全身の細胞を震わせていた。


「私たちは」

ヴィクターが北の頂点に立つ。

「君の選択を信じている」


その言葉に、パールの目に涙が浮かぶ。

今までの選択は、本当に自分のものだったのか。

それとも、誰かに用意された筋書きに過ぎなかったのか。


カイトが東の頂点へ。

ルシアンが西の頂点へ。

三人の守護者が、パールを中心に三角形を形作っていく。


アメジストが輝き始める。

エメラルドが応える。

サファイアが共鳴する。


三色の光が、パールの周りで交差していく。

その瞬間、新たな選択肢が浮かび上がった。


①全ての力を解き放つ

②ゆっくりと力を重ねる

③守護者たちに合図を送る


この選択肢に、パールは苦い笑みを浮かべる。

ここまで来ても、選択を強いられるというのか。

だが、今度は違う。

この選択肢に従うのではなく、自分の意思で道を選ぶ。


「私の選択は」

パールの声が、儀式の間に響き渡る。

「この檻のような世界から、解き放たれること」


選択肢が、目の前で揺らめき始める。

それは今まで見たことのない反応だった。


パールの心に、大きな確信が芽生える。

これこそが、本当の意味での選択なのだと。


***


三色の光が激しさを増していく。

パールの全身に、温かな力が満ちていく。

それは昨夜、レインを救った時よりも、もっと深い共鳴だった。


選択肢が歪み始める。

今まで固定されていた文字が、まるで砂のように崩れ落ちていく。

その光景に、パールは強い解放感を覚えた。

ついに、この束縛から自由になれる。


「調和の力が」

ヴィクターの声が響く。

アメジストの光が強まり、パールの心に深く染み入ってくる。


「癒しの力を」

カイトの言葉と共に、エメラルドの温もりが広がる。

それは今までの傷を優しく包み込んでいく。


「知恵の導きを」

ルシアンの声。

サファイアの光が、新たな道を照らし出す。


パールの目の前で、最後の選択肢が完全に崩れ落ちる。

その瞬間、強い眩暈に襲われた。

これまでの記憶が、走馬灯のように駆け巡る。

転生した日から今まで、自分が選んできた全ての選択が。


(これが、本当の私の選択だったの?)

その問いが、心の奥深くまで響いていく。


突然、大きな光が部屋を包み込んだ。

三つの宝石の輝きが一つとなり、まばゆい光球となって広がっていく。

パールの意識が遠のいていく中、確かな感覚があった。

これまでの束縛が解かれていく感覚。

そして、新たな自由を手に入れる予感。


「パール!」


誰かの声が聞こえた気がした。

だが、もう意識は深い闇の中へと沈んでいく。

それは不安な闇ではなく、心地よい安らぎに満ちていた。


意識が戻った時、パールは柔らかなソファに横たわっていた。

窓から差し込む陽光が、部屋を優しく照らしている。

体の中を、不思議な感覚が満たしていた。

何かが大きく変わった。そう直感できた。


「っ、目を覚ましましたか」

ヴィクターが、傍らから声をかける。

その紫の瞳には、心配と安堵が混ざっていた。


起き上がろうとすると、体が軽い。

今までずっと背負っていた重圧が、消え去ったかのようだ。

そして何より、目の前に選択肢が浮かんでこない。


「・・・どのくらい」

かすれた声で、パールは尋ねる。

「気を失っていたのでしょうか」


「半刻ほどです」

カイトが窓際から答える。

「儀式は、確かに成功したようですね」


その言葉に、パールは自分の心の中を覗き込むように意識を向けた。

確かに、何かが変わっている。

今まで常にあった選択を迫られる感覚が、完全に消え去っていた。


「私たちにも変化があったみたいだ。宝石の力が、より自然に感じられる」

ルシアンが古文書から顔を上げる。


その瞬間、パールの胸に込み上げてくるものがあった。

今までの選択は、全て用意された道筋の中のものだった。

だがこれからは、本当の意味で自分の意思で選べる。

その実感が、強い感動となって全身を震わせる。


涙が頬を伝う。

それは喜びの涙であり、解放の涙。

そして、新たな始まりを告げる涙でもあった。


***


「レイン様は?」

涙を拭いながら、パールは気になっていた問いを口にする。

昨夜の救出、そして今回の儀式。

二つの出来事が、レインにどんな影響を与えているのか。


「安定しています」

カイトの声には確かな安心感が滲んでいた。

「むしろ、私たちの儀式が良い影響を与えたようです」


その言葉に、パールはほっと息をつく。

レインを救った時の三つの宝石の共鳴。

あの時既に、運命の檻は揺らぎ始めていたのかもしれない。


「これからは」

ルシアンが古文書を閉じながら告げる。

「私たちも、より自由に力を扱えるはず」


その言葉の意味を、パールは深く理解していた。

宝石の力も、選択肢という檻に縛られていたのだ。

だからこそ、決められた場面でしか使えなかった。


パールは自分の手のひらを見つめる。

「聖女としての私は、これからどうなるのでしょうか」


ヴィクターが静かに告げる。

「それは、お前自身が決めることだ」


その言葉に、パールの心が大きく震える。

自分で決める。

その当たり前の権利を、今やっと手に入れたのだ。


窓の外では、朝日が高く昇っていた。

新しい一日の始まりと共に、パールの新たな物語も動き出そうとしていた。


パールは強く握り締めた手を開く。

「これからは自分の意思で、全てを選んでいきます」


その言葉には、迷いのかけらもなかった。

運命の檻から解放された今、本当の意味での選択が始まる。

それは時に困難を伴うかもしれない。

でも、それこそが本物の人生なのだと、パールは確信していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ