15.三つの光
朝日が昇る頃、パールは目を覚ました。
昨夜の出来事が、まだ鮮明に蘇る。
レインの救出。三つの宝石の共鳴。そして、新たに芽生えた絆。
「パール様」
ノックの音と共に、執事の声。
「ヴィクター様がお呼びです」
昨夜、レインの様子を見守るカイトを残し、二人で館に戻ってきた。
その時のヴィクターの背中には、何か言いたげな様子が見えた気がする。
新たな選択肢が浮かび上がる。
①すぐに会いに行く
②朝支度を整えてから
③レインの様子を先に確認する
(昨夜のことを、話したいのかもしれない)
***
パールは①を選ぶ。
今は、一刻も早くヴィクターの話を聞くべきだと感じた。
「今、参ります」
寝間着のまま、上着を羽織って部屋を出る。
廊下の窓からは、アメジストの庭が見える。
紫の花々が朝露に濡れ、静かに揺れていた。
書斎に向かうと、ヴィクターは窓際に立っていた。
銀髪が朝日に輝き、その姿は凛として見える。
「昨夜の力」
振り返ったヴィクターの声は、いつになく柔らかい。
「お前の中で、どう感じている?」
新たな選択肢。
①素直な感想を述べる
②慎重に言葉を選ぶ
③質問で返す
(この問いには、もっと深い意味があるはず)
***
パールは①を選ぶ。
今は、素直な気持ちを伝えるべきだと感じた。
「不思議な感覚でした」
窓際に立つヴィクターに向かって、言葉を紡ぐ。
「三つの宝石の力が、まるで一つのように」
「そう」
ヴィクターが振り返る。
「その感覚は、本来あるべき姿なのかもしれない」
その言葉に、パールは息を呑む。
昨夜、レインを救った時の感覚。
それは確かに、自然な流れだった。
「アメジストとサファイア」
ヴィクターが続ける。
「そしてエメラルド。それぞれの力には、意味がある」
新たな選択肢。
①意味を尋ねる
②自分なりの答えを告げる
③黙って続きを待つ
***
②を選ぶ。
昨夜の経験から、自分なりの答えが見えていた。
「調和があって、知恵が導き、癒しが支える」
パールの言葉に、ヴィクターの瞳が僅かに広がる。
「それは、きっと偶然ではないはず」
「よく分かっている」
ヴィクターが一歩近づく。
「だが、それだけではない」
その時、執事がノックをする。
「失礼いたします。カイト様からの使者が」
新たな選択肢。
①すぐに会う
②ヴィクターの話を優先する
③使者に待っていてもらう
(レインの様子が気になる)
(でも、ヴィクターの言葉も)
パールの迷いを見透かしたように、ヴィクターが告げる。
「行け。続きは、また」
***
使者が待つ応接室に向かう途中、パールは考えていた。
ヴィクターの言葉の意味。
そして、昨夜の三つの宝石の共鳴。
応接室に入ると、翠色の小鳥が窓辺に止まっていた。
カイトからの伝令だ。
小鳥が運んできた巻物を開く。
『レインの容態は安定。
ただし、気になる事態が発生。
できるだけ早く、サンフォード邸まで』
新たな選択肢。
①すぐに向かう
②ヴィクターに報告してから
③準備を整えてから
(気になる事態、とは)
昨夜の出来事が、まだ終わっていないのかもしれない。
パールは②を選ぶ。
今は一人で判断を下すべきではない。
それに、ヴィクターの言葉にも続きがあったはず。
***
書斎に戻ると、ヴィクターは古い書物を開いていた。
「カイト様からの使者が」
パールが巻物を差し出す。
ヴィクターは内容に目を通し、表情を引き締める。
「やはり」
「やはり、とは?」
「宝石の共鳴には、代償が伴う」
ヴィクターが書物を示す。
「特に、三つ以上が同時に」
新たな選択肢。
①詳しく聞く
②すぐにレインの元へ
③ルシアン様に相談
(三つの宝石の共鳴)
(昨夜の出来事は、何かの始まりだったの?)
パールが選択に迷う中、ヴィクターが静かに告げる。
「行こう。全ては、その目で確かめるべきだ」
***
サンフォード邸に向かう馬車の中、パールは窓の外を見つめていた。
朝もやの中、遠くに紅い光が見える。
昨夜のような不安定さはないものの、確かな存在感を放っている。
「ヴィクター様」
パールが声を上げる。
「宝石の共鳴、本当は何が」
言葉が途切れた時、新たな選択肢が浮かぶ。
①率直に不安を告げる
②黙って見守る
③話題を変える
(このまま選択を重ねていくことに、どこか違和感がある)
その思いが、不意にパールの心をよぎった。
だが今は――。
パールは①を選び、素直な気持ちを口にする。
「怖いんです。この選択の連続が、まるで檻のように感じて」
その言葉に、ヴィクターの瞳が鋭く光った。
「どういう意味だ?」
静かな声には、真摯な響きがある。
パールは、自分の中にある違和感を言葉にしようと努める。
「私はいつも、選択を迫られています」
「それは私の意思ではなく、誰かが決めた道筋です」
ヴィクターの表情が、僅かに変化する。
パールにしか見えない選択肢の存在。
それを初めて、誰かに告げようとしていた。
「私の前には、いつも選択肢が現れるんです」
震える声で、パールは続ける。
「そして、その選択が私の運命を、時には生死さえも左右しています」
馬車が揺れる。
窓の外では、紅い光がより鮮明になってきている。
「サンフォード邸に着いたら」
ヴィクターが告げる。
「ルシアンに会う必要があるかもしれない」
その言葉に、パールは息を呑む。
(ルシアンなら、何か知っているの?)
新たな選択肢が浮かぶ。
①詳しく尋ねる
②黙って頷く
③話題を変える
(また選択肢)
その思いと共に、パールの中で何かが揺らぐ。
「私は・・・」
***
パールは①を選ぶ。
今、この違和感について話せる機会を逃すわけにはいかない。
「ルシアン様は、何か知っているのでしょうか?」
「図書館で、古い文書を見つけたと聞いている」
ヴィクターの声は慎重だ。
「聖女の試練について、重要な記述があるらしい」
その時、馬車が止まる。
サンフォード邸に到着したのだ。
窓の外には、昨夜と同じ紅い光。
だが今は、より落ち着いた輝きを放っている。