14.紅の轟き
居城の中庭に降り立った三人を、不安定な紅い光が出迎える。
上層階の窓という窓が、ルビーの力で明滅している。
「レインの居室は最上階」
カイトが告げる。
「だが、このままでは近づくことさえ」
その言葉通り、紅の力は制御を失い、周囲の空気さえ歪ませていた。
まるで炎の壁が、レインを守るように立ちはだかる。
パールが一歩前に出る。
「私が道を作ります」
新たな選択肢が浮かび上がる。
①アメジストの力を全開放
②三人の力を少しずつ
③カイトの指示を待つ
***
パールは②を選ぶ。
一人の力では限界がある。
三人の力を合わせてこそ、レインに届くはず。
「カイト様、ヴィクター様」
パールが二人を見る。
「力を貸してください」
翠と紫の光が、パールの周りに集まり始める。
カイトの癒しの力が、ヴィクターの調和の力が、確かな存在感を示す。
「行きましょう」
三人の前に、階段が見える。
紅い光の渦が、その先を阻んでいる。
だが、もう迷いはない。
新たな選択肢。
①ゆっくりと進む
②一気に駆け上がる
③各階で様子を見る
パールは深く息を吸う。
ここでの判断が、これからの全てを左右する。
***
③を選択する。
慎重に、しかし着実に。
それが今の自分たちにできる最善の方法。
「各階で、力の様子を確認します」
パールの声に、二人が頷く。
一階。
紅い光が廊下を染め上げている。
三人の力が、その中に小さな安全地帯を作り出す。
二階。
熱が増してくる。
翠の力が、その熱を和らげる。
三階。
空気が重い。
紫が、その重圧を受け止める。
新たな選択肢が浮かび上がる。
①このまま進む
②一度立ち止まる
③力の配分を変える
上階から、レインの気配が強まっていく。
それは苦しみに満ちた叫びのようでもあり、助けを求める声のようでもあった。
***
パールは③を選ぶ。
このままでは、最上階まで持たない。
三つの力の配分を、より効率的にしなければ。
「紫は防御を」
「翠は癒しを」
「そして私が、中心となって」
三人の息が合う。
それぞれの宝石が、より鮮やかな輝きを放ち始める。
四階。
五階。
六階。
一歩ずつ、確実に近づいていく。
レインの居室のある最上階まで、あと少し。
「上です!」
カイトの声が響く。
「レインの気配が」
その時、轟音が響き渡った。
紅の力が、渦を巻いて暴れ出す。
新たな選択肢。
①全員で防御
②各々の判断に任せる
③カイトを前に
刻一刻と、危機が迫る。
***
パールは③を選ぶ。
エメラルドの癒しの力。
そして、レインの親友であるカイト。
今、最前線に必要なのは彼の力だ。
「カイト様、お願いします!」
黒髪が翻る。
翠の輝きが、紅い渦の中に飛び込んでいく。
「私たちは」
ヴィクターがパールを庇うように前に出る。
「後ろから」
紫の力が、カイトの背中を守る。
その光の中で、最後の階段を上っていく。
そして――。
最上階の広間で、レインの姿があった。
紅の力に包まれ、宙に浮かぶその姿は、
苦しみに歪んでいた。
「レイン様・・・」
パールの声が、暴風の中に消えていく。
***
新たな選択肢が浮かび上がる。
①カイトの力を待つ
②声をかける
③アメジストの力を送る
パールは一瞬の迷いもなく、②を選ぶ。
宝石の力より、まず必要なのは心を通わせること。
それを、直感が告げていた。
「レイン様!」
パールの声が、紅い渦を突き抜ける。
「私たちが、来ました!」
レインの瞳が、わずかに動く。
琥珀色の瞳に、僅かな意識が戻る。
「来るな・・・」
かすれた声。
「制御が、効かない」
その声には、拒絶ではなく、懸念が滲んでいた。
他者を傷つけまいとする、必死の想い。
パールの胸が熱くなる。
レインの本当の姿が、見えた気がした。
***
「カイト様!」
パールが声を上げる。
「私たちの力を、レイン様に!」
翠の光が強まる。
カイトの癒しの力が、レインを包み込んでいく。
新たな選択肢。
①全ての力を一度に
②ゆっくりと少しずつ
③レインの反応を見ながら
直感が告げる。
今、必要なのは慎重さではない。
①を選ぶ。
「私たちの全ての力で!」
紫が調和を。
翠が癒しを。
そして、聖女の力が、それらを結びつける。
三色の光が交差する中、レインの苦しそうな表情が和らいでいく。
紅の暴走も、徐々に収まり始めた。
「レイン様・・・」
パールの声に、琥珀色の瞳が応える。
***
「聖女、様・・・」
レインの声が、弱々しく響く。
紅の力が、ゆっくりと収束していく。
宙に浮かんでいた体が、静かに床に降りてくる。
新たな選択肢。
①駆け寄る
②その場で見守る
③カイトに任せる
①を選ぶ。
もう、躊躇う必要はない。
「レイン様!」
パールは駆け寄る前に、振り返る。
「カイト様!」
カイトが頷き、翠の光をさらに強める。
ヴィクターも、紫の力で守りを固めている。
レインの元へ駆け寄り、その体を支える。
「大丈夫ですか?」
***
「ええ・・・」
レインの声は、まだ弱々しい。
「申し訳、ない・・・」
カイトが近づき、レインの背に手を当てる。
翠の優しい光が、疲れ切った体を包み込む。
「無茶をしたな」
カイトの声には、親友への心配が滲む。
新たな選択肢が浮かび上がる。
①今は休ませる
②話を聞く
③力の状態を確認する
①を選ぶ。
レインの体は、まだ熱を帯びている。
「ヴィクター様」
パールが振り返ると、頷きが返ってきた。
紫の光が広がり、熱を帯びた空気が徐々に和らいでいく。
レインの体から、紅の残り火が消えていくのが分かる。
***
「私が見ていよう」
カイトがレインの傍らに腰を下ろす。
「二人とも、休んでいい」
パールは立ち上がる。
窓の外では、夜空に星が瞬き始めていた。
紅の力は完全に収まり、居城は静けさを取り戻している。
「ありがとう」
レインの声が、かすかに響く。
「三人の力が、なければ」
その言葉に、パールは首を振る。
「私たちは仲間、ですから」
ヴィクターが近づいてきて、静かに告げる。
「戻ろう」
三つの宝石の力が、確かな絆を結んだ夜。
パールは、これが新たな始まりなのだと感じていた。
***