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魔王な少女  作者:
9/14

再会

やっと、出た

疲れた

なんだろう、俺は何故日常から一瞬で非日常へと足を踏み入れる、ラノベの主人公のようになっているのだろう。

俺は、どんな異能を使えるんだろう、楽しみだ。

……じゃねぇーーよ!

マジかよ、こんな大男三人を彼女が倒したってのか。

しかも、三秒に満たない時間で。

「あ、ありがとう…」

しかし、なんであろうと、助けられたことには変わりはない。

礼はいっておこう。

「構わない」

そういって、少女はこちらへ振り向く。

艶やかな黒髪が靡く。

美、というべきなのか、麗、というべきなのか。

天が二物も三物も与えまくった結果がこれだよ!

初めて人に見惚れた。

「っ!!!!」

瞬間。世界が反転した。…弱いな、世界が回転…違うな、世界が洗濯機の中に……何をいってるんだ俺は、とにかく、俺は一瞬で壁へと背中を打ち付けて、更に頬までもが痛いという状況に陥っていた。

不良は彼女が倒してくれたはずなのに。

ああ、さっきの女の子は俺の夢だったのか。

さっき殴られるってときに実は誰も助けてくれてなくて、俺は普通に殴られた、と。

ずきずきする頬と背中をさすりながらうっすらと目を開ける。

そこには、さっきの女の子がいた。

後ろにはいまや完全に気絶している不良たちが。

夢じゃないことはわかった。しかし、痛い。

その理由も一目瞭然。俺は彼女に蹴られたのだ。

突き出している足を見ればわかる。

ちなみに黒…ゲフンゲフン!

しかし彼女はそんなことは気にも留めずに恐ろしい形相をつくる。

「ひっ!」

もはやこの人はさっきまでの女の子ではない、鬼がいた。

いや、俺は確信した。

これが、朝に秋が言っていた魔王だと。

オーラがどす黒く観える気がする。

「……ないのよ」

「えっ?」

「なんで迎えにこないのよぉーーーーーー!!」

叫ぶと同時もう一度、蹴りを見舞う。

何とかみっともなく這いずって、それをよける。

「ちょ!ちょっと待ってくれ!迎えってなんだよ、俺たちは今日初めてあったろ!」

俺の言葉のどこが気に障ったのか、彼女を覆うオーラが一層濃くなる…きがした。

「お前はぁーー」

足を振りかぶる。

「最低のぉーー」

俺をまるでサッカーのボールとしか見ていないかのように。

「男だあぁーーーー!!」

実際そうとしか思っていないのだろう。躊躇いなく、淀みもない、単調な、だがシンプル故に極めればとてつもない破壊力を誇る蹴りを放つ。

思考が澄み渡る。

全てがスローに映る。蹴りさえも。

ゆっくりと迫る光から逃れるため全力で左へ跳ぶ。

そのとき全てが現実に戻る。

眼前でコンクリートの一部にヒビが入り、そこから侵食するように周りから崩れていき、

ものの数秒でコンクリートの壁は崩壊した。

よく避けれたな、これ。

死を目前にした人間の強さに感嘆する。

「………」

なにもいえない。

「ちっはずしたか」

「なっ!こんなん直撃したら死ぬだろうが!ふざけんな!びっくりしすぎてアドレナリンドバドバっすわ!」

「殺すきだったから」

おいおい、さらっと何言って。

「とりあえず、落ち着け、一体君は何者なんだ」

俺の真面目な一言に彼女は一瞬、憂いの表情をつくり、すぐに答える。

「至道真生」

……………………

「真生って…なんでここに、小学のときに療養するって引っ越したはず」

ありえない、彼女があの、病弱で人見知り、叫ぶなんてもってのほか、運動は勿論駄目、そんな真生が。

「直ったから戻ってきた」

このとき、最近夢に見ていた約束を思い出す。

あれは真生だったのだ。

「いや、よかったじゃないか戻ってこれたんだろ、この町に」

昔の親友でもう一度出会えて俺もうれしくないわけがない。

だが、真生は頬を膨らませている。

「どうしたんだ?戻ってこれたし、俺も約束は破らずずっとこの町にいた。それなのに何を怒って」

「迎えにこなかった」

はぁ。

「いやでも、あのときの約束は待ってるっっって内容で」

言いながら、しっかりと約束の内容を思い出す。

うん、間違ってない。

「そうはいっても、普通は迎えにくるでしょ!離れ離れになった王子と姫、そして囚われの姫を自分の身も顧みず救おうとする王子、そして、ついに姫のもとへたどり着く王子、しかしその瞬間王子は敵の魔弾に倒れてしまうの、そして駆け寄る私、王子を抱きかかえ言うの、好きですって……」

ほわぁーんと夢の世界へと旅立ってやがる。

つか、王子、死ぬのかよ。あと途中で姫が私になってるぞ。最後に敵って誰だ、医者か?医者が自分の患者連れ去られそうだからって、撃つかよ。

はあ、こいつ、実はこんなメルヘンちゃんだったんだな。

「でも、こなかった」

うっ急に寒気が…

「なんでこなかったのよおぉーーーーー!」

王子じゃないからでーーす!!

もうこれ、女心は複雑、とかってレベルじゃねーだろ!

もうやだ、泣きたい。

突然の再会、今になって気付いた幼馴染の趣味。

なんかもう波乱の予感しかしなかった。



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