家族
なんだろうこれ…
「これで、最後!」
部屋を占拠していたゴミの最後の一つ―――――空き缶―――――をゴミ箱へとシュートする。
綺麗な放物線を描きながら、カシャンと小気味のよい音を立てゴールする。
やっと終わった。時間は…八時か、掃除開始が確か七時ほどだから、約一時間か。
日に日に淀みなく動けるようになる自分がいやだ………
今日は両親共々出かけてるみたいだし、適当にカップラーメンでいいかな。
「お兄ちゃん!美弥はビーフストロガノフがたべたいなあ~~」
後ろからいきなり声を掛けられる。
そこには、ツインテールをフリフリと揺らしながら可愛らしく注文を告げる、少女がいた。
この娘は櫻井美弥ちゃん、とっても可愛い俺の妹だ。
まだ、あどけないが人形のように精緻で見る者全てを魅了してやまない(断言!)美貌の持ち主。もはや美姫といっても差し支えない。胸も平た…ゲホッゲホッ!
とまあ、こんな、可愛い、いや超可愛い妹の願いを誰が断れようか。
カップラーメンなんて却下だ却下。今日はビーフストロガノフ、決定。
俺は本棚にたててある一冊の料理本をとりだしビーフストロガノフのページを開く。
「ちょっと待っててくれ、すぐ作るからな」
え~とまず牛肉を細切りにして…
鍋の前で40分ほど格闘した結果、ついに俺渾身のビーフストロガノフができた。
さあ早く我が麗しの妹の元へともっていかなければ。
「出来たよ美弥ちゃん!」
「遅せぇよグズ、そしてクズ」
ちっ、こいつかよ。
「お前は今すぐ消えろ、そして美弥ちゃんを出せ」
こいつは美羽。俺の妹、とは思いたくないが、仕方ない、俺の妹、てか忌もうと。
悔しいが、美弥ちゃんと美羽は同一人物。
美弥ちゃん一人ならどんなによかったことか。
「きめえんだよ!」
うわっ!美羽に小説投げられた!!ロウキューブ最新刊が!!
「うるせぇ!ビーフストロガノフ食うなら美弥ちゃんで食え!」
ちなみに、別に二重人格ではない。言ってしまえば美羽が演技しているだけだ。
わかっている、わかっているのだが俺には抗えない。まあ、仕方ないね。
美羽も俺が美弥ちゃんに弱いことを知っているので何か俺に頼みごとをするときは必ず美弥ちゃんで話しかけてくる。
利用されていることはわかっている、わかっているのだが俺には抗えない。まあ仕方ないね。
「まずっ」
すると突然美羽は俺渾身のビーフストロガノフを流し台に流す。
「ばっ!お前いきなり何して…」
「ごめんねお兄ちゃん!」
はいはい、どんどんながしてね~~
「きも」
くっそ、体が勝手に…わかっている、わかっているのだが俺には抗えない。まあ仕方ないね、男だもん。
「カップラーメンのほうが数百倍うまいわ」
美羽は俺の買ってきた、ラーメンをピンポイントに狙って選ぶ。
「あっ、それ俺の…」
無視してお湯を注ぐ。