日常
ヒロインまだでてませんすいません
窓から見た外の景色は鮮やかなピンク色に染まっている。
綺麗、そう思えるだけの心の余裕はなかった。
「はぁ」
軽く溜め息を一つ。
また一年なにも起こらなかった。
いまは新しい学年になり去年に引き続いて担任を受け持つ教師のもう聞き飽きた、校則の厳守、今年は受験の年だということ、等々を聞かされるHRの時間だった。
俺、櫻井鳴は高校三年の春、そんなことを思った。
この俺が通う天乱高校は、県内でも有数のトップ校で、頭のいい学校へいけば面白い高校生活が送れる、と親、教師にいわれ続けすっかり洗脳されてしまった俺は、それはもう死に物狂いで勉強した。
無事合格し、素晴らしいハッピースウィートスクールライフを想像していたのだが、この学校は俺の期待には応えてくれず、そのままずるずると二年間怠惰な日々を送ってしまっていた。
そして高校三年高校生活最後の年、今年こそはと淡い期待をもってはいるのだが、同時に面白いことなんて起こるわけがない、という自分が半分以上を占めている。
俺はまたため息をひとつ。
「はぁ」
そうして度々ため息をついてるうちにいつの間にかHRは終了しており休憩時間となっていた
「新学期初日から暗いね」
と、わざわざ俺の机の前まできて余計なことを言ってきたこいつは左闇光、相変わらず光なのか闇なのかはっきりしてほしい名前だと思う。
「そんなこといったって名前は親がつけたんだから仕方ないじゃないか」
ちなみに、こいつ自身はどちらかというと闇よりな外見で、前髪はかなり長くこちらからはよく眼がみえない程だ。
趣味も読書(ホラー系)というなんかもう完璧ダークな根暗野朗である。
こんな奴にまで暗いといわれるとは、そこまで落ちぶれたのか俺は…
「まあ、暗いというのは否定しないがな」
現に暗かったし。
「なにか理由でもあるの?」
面白いことがおきないから、なんていうのは笑われそうだしな、
「内田の話がつまらなかった」
内田とは担任教師のことだ。
まあ、嘘は言ってない、…ほとんど聞いてなかったけど。
すると、光はフフフと暗く笑う。軽く怖いよ、それ
「内田先生の話がつまらないのはいつものことでしょ」
ぐっ、確かにそうだな、他にいい理由がないものか
言い訳に悩んでいると、俺の名前が呼ばれた。
確か、もう三年ということでいきなり進路相談があるんだったか。
まあ、なにあともあれいまだけはGJだ内田。
「じゃあ、俺進路相談にいかなくちゃ」
そういって教室からでる。後ろからフフフって聞こえたの気のせいだよね?気のせいだよね!
軽い恐怖心に苛まれながら進路指導質へと向かう。指導室には内田が少し険しい顔をして待っていた。
内田は顎で椅子を示して俺を座らせると一呼吸置いてから面談を開始させる。
「お前は希望はあるか?」
「特にありません」 「なら将来の夢とかは」
「特にないですね」
内田はふぅと息をつくと、生徒の模範らしく短くまとめた髪をガシガシと掻き、俺に向かって一枚の用紙を滑らせる。
「なんですかこれ」
「進路希望用紙だ希望の大学なり将来の夢なりかけ」
つまり無理やり志望を決めろと
「そうじゃない、時間を掛けて本当に目指すものを探せといってるんだ」
意味は同じだろ
「はあ、分かりました」
「よしなら戻っていいぞ」
とりあえず一礼して踵をかえし、退出する。
「希望、ねぇ」
行きたい大学なんてないし夢もない。
……ぱいろっとって書いとくか。
とりあえず適当にかいておく。
これで呼び出されようが知るか。
こんなことできるのはいまくらいだろうし。