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3

放課後になるなりやってきた冬美は信也を伴って、自家に…。


「ただいま。母さん、信也くん連れてきたぞ。」


そんな冬美の信也を連れてきたという帰宅を告げる言葉に、てっきり秋穂が食いつくようにやって来るものだと思っていた冬美。


「……。」


しかしながら、家に反響するのは、冬美の言葉のみで、秋穂の返答はない。


「…信也くん、少し待っていてくれ。」


冬美は信也とはいえ家に上げるのには秋穂の許可が必要だと無意識にでさえ思ったのか、信也を玄関に引き止め、家の中を探し回った。


1階のリビングにキッチン、トイレなど。


2階の秋穂の寝室、自分と姉の部屋なんかを探してはみたものの、どこにも秋穂はいない。


おそらく秋穂は買い物にでも行っているのだろう。


「どうやら母さんはどこかに出掛けているみたいだ。すまないが今日は……?……っ!?」


…こ、これはもしかして…2人っきりというやつでは


先ほどは無意識で秋穂を探し回った冬美だったが、今度は秋穂がいないことを意識し、信也を連れ込めるのではと思い始めた。


はしたないと思われるのでは?もしかしたら、信用を失ってしまうのでは?


冬美は秋穂にそう思われることと中々生まれない信也と家で2人っきりになれるというシチュエーションを天秤にかけ悩み出す。


「う〜ん…う〜ん…。」


すると、冬美のそれを見かねたのか、信也が提案してくる。


「また今度にするか?」


「い、いや!信也くん…それは…。」


悩んでいた冬美。


しかしながら、信也が早くも帰宅の姿勢を示しては引き止めずには居られなかった。


そして、後ろめたさから自分の部屋に隠したい衝動に駆られ思わず家の中へ…どころか自室へと向かえ入れてしまった。



冬美の部屋は落ち着いたものだった。


白い壁紙に薄い水色のカーテン、クローゼットに勉強机、丸テーブルにベッドなどの調度品に加え、ベッドの上にはちょこんと小さなクマのぬいぐるみ、そして机の上に写真立てが一つ。


信也はふと写真立ての一つが気になり、それにどこか見覚えがあるようななんて考えていると、ドアのカチャリと鳴る音が聞こえて、冬美が中へと入ってきた。


冬美は飲み物を丸テーブルに置くと、その写真立てが立ち上がっているのを見るなり慌ててそれを伏せた。


思わず信也を確認し、見ていないだろうかと心配したような視線を送ってくるので、どうやらそれは見られたくなかったものらしいと思った信也はすぐにそれを忘れる。


何事もなかったかのようにお茶すする信也に、それは見られていないのだと判断したらしい冬美は信也の対面に座り、どこか手持ち無沙汰な様子でお茶を口にしたり、顔を真っ赤にしてチラチラと信也を見ては目元を伏せてなんてを繰り返している。


彼女になにか用があるのは明らかだ。


口にしづらい用件なのだろうと信也が「なにかあるのか?」と口にすると、冬美はおずおずとだが、言葉を口にし始めた。


「じ、実はな…きょ、今日は信也くんに頼みがあって…。」


「頼み?」


そうして、冬美が口にしたことに信也が思わず…。


「え?」などと口にすると、その後に信也に拒否の意思でも口にされると思ったのか、冬美は…。


「私は知っているのだぞ!!信也くんが亜美先輩にそれをしたってことはなっ!!合コンでしてもらったってお昼聞いたぞ!!だからな!!だからな!!」


…なんて目をぐるぐるとさせながら、捲し立ててきた。


そんなことをするものだから、信也は落ち着けと頭の上に手を置いた。


…すると、どうやらさらに悪化したらしい。


ぷしゅーー…ぽん。


「あうあうあう…。」


そして、遂には顔をリンゴのように真っ赤にした冬美は言葉すら失い…。


「……。(じーーー)」


…と、こちらを涙目で睨んでくる始末。


なんとなく自分のする行動する行動が裏目に出て、最終的に目での会話のみになる気がした信也。


彼は投げやりにこう口にした。


「わかった。わかったから、冬美の好きにしろ。」


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