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そんなこんなで、信也はあまり乗り気ではなかったのだが、合コンに参加することになり……。


「「えっ…。」」


となったわけである。


まあ、信也としては不安要素というか、少し気不味い要素が加わった程度なので、正直ほとんど問題などなかった。


それなので、適当なところで、そんな感覚とはおさらばしてしまおうと、亜美に声をかけようとしたのだが…。


「亜美…。」


「っ!?……ちょっと席外すね…。」


…と、まあ、このように亜美があからさまに時間がほしいのか、信也のことを避けてくるので、信也は少し様子を見ることにした。


それで、信也は席を案内されると、なんとなく注目されているのを感じつつ、一度腰を下ろしたそこに大人しく座っていた。


程なくして、頼んでいた料理と、先ほど来店後に頼んだ飲み物が全員に行き渡ると、時を合わせるようにして、席を外した亜美もやって来て、会を開始する音頭がなされる。


「よっし!それじゃあ飲み物は行き渡ったかな?」


「うん、女子はOK!男子の方は?」


このようにレンとレニーが仕切り、確認をしていく。


「…問題なさそう…かな?ドラキチ大丈夫かい?」


「………あっ、うん。」


?…そういえば、店に入ってから、ドラキチがやけに静かなような…。


さっきまではベラベラベラベラ、信也が別れたことやら、誘われて仕方がないから来ただのと騒いでいたドラキチ。


まあ、静かな分には害がないので、放っておくことにした信也。願わくば、今日一日は口を開きませんように…。


「……じゃあ、改めて。俺は【れみねーど】のレン。あっ、今日は未成年者がいるから、酒はなしで。これだけは厳守で。それじゃあ今日は楽しみましょう!乾杯!」


「「「「「「乾杯ッ!!」」」」」」


「「…乾杯。」」


「……。」


このようにして、コップを打ちつけ、コツンというガラスのぶつかる音の後に、ゴクンと一口喉を湿らせる音、カランという氷の動く音が鳴り、それが合図となり…。


「「「し、【SHINYA】さん、あのねっ!!」」」


…信也へと質問が集中した。


食い気味で信也へと話掛けてきたのは、レンのことを兄と呼んでいた美少女に、それに似た雰囲気の女の子たち。


彼女たちはお互いの声が重なるのを聞いて、鋭い視線で目配せをし合い始めた。それは知略戦の開始。まさにコンフリクトとでも言えば、言いような雰囲気がその間、流れた。


信也は若干それに身を引くと、飲み物をもう一口ばかり飲んでから、聞く。


「…なにか用か?」


「「「えっ?……あっ…あは、あはは…。」」」


信也の急な言葉に3人は顔を合わせ、自分たちの行動に気がついたのか、落ち着かない様子で笑い肩をすくめていると…そこにレンが助け舟を出してくる。


「信也、ダメだろう?レニーたちは信也と話がしたいんだ。ちゃんと普段通り接してあげなさい。」


「いや、普段通りだが?」


「いや、まあ…そうだね。君はいつもそんな感じか…。ほら別に信也は怒ってるわけじゃないから、どんどんと話かけるといい、じゃあ、まずはレニー。」


「えっ!?私から…。」


「だって、レニーが信也に会いたいって言ったから、この会を催したんだろう?それなら、始めは君がするべきだろう?」


「……それじゃあ…好きな食べ物…。」


信也はレニーの質問に一瞬、小学生かとツッコミを入れそうになるが、それを押し留めると、レンを見た。


すると、早く答えろと、肩をコツンとしてくるので、仕方がないと口を開く。


「まあ…苺とかか?」


「…か…。」


か?


「「「…可愛い。」」」


「……。」プイッ。


「プッ、アハハハハ♪ほらね、信也ってこういう可愛いやつでもあるんだよ。だからさ、別に怖いことなんて一切ないから、どんどん話しかけなって…。」


…なにを笑っていやがる。別にいいだろうが…苺が好きだって…お前だって好きだろ絶対…だいたい苺が嫌いなやつなんて聞いたことないぞ。


もしかしたら桃とか梨の方がよかったか?などと信也が的外れなことを考えていると、そんな信也を見て、レニーたちは肩の力が抜けたのか、信也にどんどんと話しかけてきて、彼女たちも普段の調子を取り戻していく。


そうして、会は徐々に盛り上がりを見せ、信也も時折笑顔を覗かせた。


これならもう大丈夫だろうと思ったらしいレンは一人飲み物をチビチビやっている娘へ声をかける。


「…亜美さんだよね。」


「…はい。」


「君は信也のところには行かないの?」


「……はい。」


「…【シグマド】好き?」


「はい。」


「ならなんで?」


「……。」


「君、信也と知り合いだよね。仲良いの?」


「……それは…。」


「……それは?」


「……。」


そして同時進行で質問は進んでいたらしく…。


「…【SHINYA】さんって…ど、どんな娘が…こ、好みですか?」


その言葉を聞いた瞬間、亜美の顔ごと一直線にそちらへと向いた。


亜美はその先を見つめ続け…「わからん。」という信也を言葉にガックリと肩を落とすと、次には安心したように小さな笑みを溢した。信也らしいとでもいうかのように。


そして、それを見たレンはなにかを悟ったらしい。


「……やっぱり…か…。」


「え?なにか?」


「……ううん、ほら、さっさと行ってきなさい。このままじゃ、信也、レニーたちに取られちゃうよ。」


「えっ…ちょ、ちょっとっ!!」


亜美を立ち上がらせると、押しやるようにして、信也の隣へと座らせた。


「?亜美?」


「し、信也くん。」


どうやらその時勢いがよかったせいか、肩が触れ合ったのだろう。亜美は触れたところに手を当て、照れたように頬を赤らめた。


「き…来ちゃった♪」


「あ、ああ…もう体調はいいのか?具合悪かったんだろ?」


信也のこの言葉。


信也が自分のことを見ていてくれたのだとわかり、さらに嬉しくなると、思わず信也の方に少し、身体を預けた。


「うん…大丈夫。(てれり)」


「そうか。」


「「……プッ、ハハハハ。」」


レンは良かれと思いそれをやった。


しかし、そんな様子を面白いと思わない者がいるのは言うまでもないことだろう。


「ねぇ、2人って知り合いだよね?亜美?」


レニーは大変素晴らしい笑顔でそう言った。


「え?……まあ…ね…。」


ぎゅっ。


そして、そんな風に信也の服を掴む亜美。


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