勇者パーティを追放された俺はヘルハウンドと出会ったからフェンリルが出るまてリセマラする事にした。
「荷物持ちラック!お前はクビだ!お前のスキル、ダイスロールはギャンブル性が強すぎて、巻き込まれる俺達はたまったもんじゃないからだ!」
ある日、俺は突然勇者パーティをクビになった。所謂パーティ追放と言うやつだ。
「さて、どうしたもんかな」
途方に暮れて森を歩く俺。
すると、助けを呼ぶ少女の声が聞こえる。声のする方に行くと、褐色の肌をした犬耳の少女が足を押さえてサッカー選手の真似をしていた。
「アーウチ!ニクちゃん、トラバサミを踏んでアンヨ痛い痛いです!回復とか出来る人が通りがからないと命の危機です!チラッチラッ」
「お前、ヘルハウンドか?」
少女の見た目から、人化したヘルハウンドだと察した俺は、彼女に確認する。
「そうです!ニクちゃんは魔界の猟犬ヘルハウンドの一族なのです!助けてくれたら戦力として、愛玩用としてお役に立ちます!チラッチラッ」
「ヘルハウンド…ヘルハウンドかあ」
んー、微妙。弱くは無いんだが、やっぱ追放直後に仲間にするならフェンリルだよなあ。
「悪い、俺は犬系なら最強のフェンリルが欲しいんだわ」
「ワッツ!?、あー!待ってくださいよー!ニクちゃんの御主人様になって下さいよー!」
泣き叫ぶニクちゃんを無視して、俺は来た道を帰り勇者と再会する。
「勇者、もう一回追放してくれ」
「何いってんだお前?」
「いいからやれ。俺は開幕から妥協はしたく無いんだ」
「いや、わけわかんねーよ!お前のそーゆーとこが嫌だから追放するんだよ!出てけっ!」
こうして俺は理不尽な理由で追放された。どうしたものかと、近くの森を歩いていたら少女の悲鳴が聞こえた。
「ムッフー!ニクちゃんを見捨てられなくて帰ってきてくれたのですね!ニクちゃんは御主人様を信じてました!」
「チッ」
俺は舌打ちをして帰ろうとするが、ニクちゃんは猛ダッシュでしがみついてきた。やっぱり、怪我は演技だったようだ。
「御主人様!貴方は追放された実は強い系の人なのでしょう!なら、何故お約束通りにニクちゃんを仲間にしないんですか!」
「俺はフェンリルが良いの」
「つ、強さならフェンリルとヘルハウンドの最終ステータスは僅差です!それに、ニクちゃんは平地と闇夜が得意ですよ!雪原特化のフェンリルより使い勝手なら上なんです!」
ニクちゃんは必死に自分のが便利だとアッピルしてくるが、彼女には大事なものが決定的に欠けていた。
「ニクちゃん、君は黒髪短髪貧乳属性だろ?」
「はいっ!ヘルハウンドですので!」
「俺の見た目とだいぶ被ってるんだよね。ハッキリ言って表紙映えしない。じゃ」
「えー、でもフェンリルだって基本は…」
ブツブツ言い訳を呟くニクちゃんを無視し、俺は勇者の下へと。
「お帰り」
「おかわり」
「ラック、お前はクビだ。お前のスキル、ダイスロールって奴は二十回に一回は致命的な失敗をするスキルらしいな?出てけ。そして、帰って来るな」
勝手な理由で追放された俺は、森と街道を反復横跳びで出入りする。数分後、悲鳴が聞こえたのでダッシュで駆けつける。
「あかーん!足ぐねってもーた!誰かこの可哀想なラケ子さんを助けてーな!」
髪の毛に擬態した触手をウネウネしながら泣き叫ぶ美少女。どう見ても擬人化したクラーケンだった。
「第三章に帰れ」
「酷っ!」
クラーケンなんて、物語の第三章で主人公に瞬殺されるのがお約束だ。ニクちゃんは少し悩んだが、このラケ子さんとやらは論外だ。
「さて、リセマラ続けるか」
「待ってーな!ウチ、乗り物として便利やし、こう見えて地上戦や空中戦もこなせるねんで!成長限界もフェンリルと変わらへんし、オカン属性もあるで!何が不満なんよ?」
「いや、クラーケンに強いイメージ無いし。俺も読者もお前を山賊みたいなもんとしか思えないんだ。フェンリルとなら寝れるが山賊とは寝れない。分かるだろ?」
「酷っ!つーか、フェンリルかて…」
フェンリルについて文句を言うラケ子さんを無視して、俺は勇者の待つ酒場へ行った。
「勇者パーティなら次の街へ行きましたよ。あ、これ伝言です『何かする度に神様の手で百面ダイス判定される奴と旅は出来ない』って」
「やれやれ置き去りか」
今回も駄目だったら、また別の勇者パーティに入っで追放されないといけない。そんなのメンドイから、これでフェンリルが来て欲しい。俺は実質ラストチャンスである今回、力を込めて森と街道を出入りする。
「ギャオ大オン!」
来たっ、過去三回よりハスキーなケモケモした声!これは確定演出か?
「うおー、どけどけー!そこのフェンリルは俺のものだー!」
これまでのリセマラを無駄にしたくない。その一心で俺は誰にも奪われない様に悲鳴の方へと全力で走る。
「助けて…誰か…」
銀髪!長身!ボイン!紛れもないフェンリルがそこにいた!
「俺達の戦いはこれからだー!」
俺は罠に掛かっているフェンリルにダバダバと走り寄り、魔法でチョチョイのチョイと助ける。罠を外して怪我を治してやると、彼女は大きな胸を俺に押し付けてきた。
「あ、ありがとうございます!何とお礼を言ったらよいか」
「人として当然の事をしただけさ」
「強いだけで無く優しい!私、フェンリル族のエンリと言います!奴隷にして下さい!」
俺が彼女の申し出にオッケーと言おうとしたその時だった。
「ニクちゃんファイアーブレス!」
「ラケ子水流!」
近くの茂みでこちらを伺っていたであろうカスレア二匹が、俺達に嫉妬して攻撃してきやがった!
「うわー!」
「キャー!」
俺はナローシュだからちょっと驚いただけで済んだが、エンリは実力が近い二匹の攻撃を受けて衣服がボロボロに!
「てめえら!チラッ、俺の奴隷になれなかった事を逆恨みしてチラッ、襲って来るとはいい度胸だ!チラッチラッ、山賊の代わりにお前らをデビュー戦の相手にしてやんよ!チラッ…ん?」
カス二匹に怒りをぶつけながらエンリの裸体をチラ見していた俺は気付いてしまった。エンリの胸が上げ底だった事に。そして、下半身にあってはならないモノがある事に。
「エンリちゅわん…男?」
「あーん、バレちゃったわーん!ここは逃げるが勝ちね!」
両手で股間を押さえて逃げ去るエンリ。俺はそれを追いかける事はしなかった。ショックでこれまでのリセマラの疲れが一気に噴き出し、その場にへたりこんでしまったからだ。
「災難でしたね御主人様」
「フェンリルって、原典ではロキの長男やから基本オスなんや。最近はお前みたいに勘違いしとる奴が多いけど」
騙された事を知り真っ白になっている俺の肩を、ニクちゃんの手とラケ子さんの触手がポンポンと叩き慰める。
「お前ら…、知ってたならもう少し早く教えろよ!」
「「言おうとしたけど、リセマラするって帰ったのは誰??」」
「うぐっ、何も言い返せない。あーあ、これからどうしよう。次の勇者パーティに潜り込むにしても、勇者パーティなんてそう都合よく見つからないし」
「ムッフー!でしたら、次回のチャンスまでの間、ニクちゃんを仲間として使って見ませんか?」
「ウチもおるんやで」
「ハァ…こいつらで妥協するしか無いのか」
こうして、俺の追放成り上がりストーリーは、絶対読者人気出ないだろうヘルハウンドとクラーケンをパーティに入れてのスタートとなった。
その後、俺を追い出した勇者パーティが、ざまぁされず大躍進したり、一族の殆どがオスだとバレたフェンリルが俺達を逆恨みして襲ってきたり、俺の運命を決めているダイスロールの神様が、かなり運に偏りのある奴だったと判明したりするが、それはまた別の話。
皆さんは追放後の森で出会ったのがヘルハウンドやクラーケンだったら、仲間にしますか?経験値にしますか?見なかった事にしてリセマラしますか?