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マウンドヒーロー  作者: 金田裕二
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【第1話】稜北高校野球部入部!!

県立稜北高校は神奈川県屈指の野球名門校。

昨年の夏、2年生エース一橋直哉(いちはしなおや)の魂の延長14回204球の力投により、甲子園ベスト4まで上り詰めた。

しかし、夏の甲子園で肘を痛めてしまった直哉は手術の為、アメリカで1年間リハビリ生活を強いられる事となる。

エース不在の稜北高校に大混乱の春が訪れる。


「ここ?稜北高校って」方向音痴の一橋遥斗(いちはしはると)、夢と希望に満ちた1年生である。クールな容姿に野球カバンを背負い、今日から稜北高校野球部に入部する…予定だった。


「あー、君身長170cm無いんだ。悪いけど他の部活に入って貰える?」野球部顧問の国枝先生に門前払いされてしまった。

「ありえねぇ。野球は身長でやるんじゃねぇよ。」遥斗は唖然としてしまった。「こんなクソ部活が去年甲子園ベスト4だって?笑わせやがって。あいつが去年の夏の“四天王”って言われるのもおかしいと思ったんだ。今すぐ転校して、ここの野球部ぶっ倒してやんよ。」そうイキがって職員室を後にしたが、足が勝手にグラウンドまで連れていく。

広く整備された黒土のグラウンド、外野には芝が広がり、夜の暗さをかき消すような照明がスタンドに何本も立てられている。

「本当にここで終わるのかよ…」遥斗はバッティング練習を外野のフェンス越しに見ながらそう呟いた。

「あー、有り得へんでホンマに!!何が身長や!!ワイの必殺技があれば170cmどころか2mもパンパンやで!!」遥斗の聞き慣れない関西弁が後ろから聞こえた。

「おい、お前!!今からバッティングするさかい、どいといてくれんか!!ケガしても知らんで!!」そう遥斗に話しかけた男の名前は四川章吉(しせんしょうきち)。自前の木製バットを振り回し、あるタイミングを見計らう。

「こいつ、バカなのか?今どきの高校生が木製振り回して。体とバットが見合ってないぞ。」そう遥斗が呆れて見ていた瞬間、バッティング練習の打球が遥斗と章吉に向かって飛んできた。

「危ない!!」遥斗が反射で章吉に警告する。

「これを待ってたんや!!いくで!!!!ワイの必殺技パート1、フルカウンター!!!!!!!!!!!!!!」その瞬間、章吉のバットは、しなやかに曲がり、体から作られた回転の力によって、飛んできた打球を威力を倍にしてグラウンドに打ち返したのである。章吉の打球は弾丸の如く飛んでいき、そのままバッティングゲージの鉄枠に当たった。部員一同は驚いて練習を中断し、皆が飛んできた打球の方向に注目した。

「誰だ?!今の打球を打ったのは!?」バッティング練習をしていた3年生が大声で呼びかけた。

「いいか、お前らよく聞け!!ワイは大阪からはるばるやってきた天才打者、四川章吉や!!身長どうこう言ってる奴だけには絶対に負けんからな!!よく覚えとけ!!今日は入部を認めるまで、この打球を打ち続けたるで!!」章吉はそう宣言してまたバットを構えた。

遥斗に衝撃が走った。自分はあっさりと逃げるところだった事に今更気づいた。このまま帰ってしまえば、兄との約束も破ってしまう事になるのに…

遥斗は自分の野球カバンからグローブと硬式ボールを取り出し、こう叫んだ「俺の名前は一橋遥斗!!このチームのエースになり、甲子園四天王最強になる男だ!!」そう言ってボールを左腕でバッティングゲージに向かって全力で投げた。ボールはシュルルルルとキレのいい音を立ててバッティングゲージに一直線。「速い。球速はそこまでだが、ボールがどんどん伸びてくる。そしてこのままだとこのゲージ、いや、俺に向かってボールが来る。」そう断言したのは、稜北高校4番バッターの三井勇次郎(みついゆうじろう)だ。「良いだろう。その球どこまでの物か、俺が見定めてやる」そう言って構えてボールの軌道をじっと観察する三井。「ここだ!!」三井のバットが遥斗のボールにドンピシャで真芯に当たろうとしたその瞬間だった。ギュルルルルル!!!!!!

もの凄い音と共に遥斗のボールは三井のバットのわずか上を通った。

これが稜北高校の後の伝説となる、一橋四川ペアの入部事件である。


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