その日、
浅田姫華は流されやすい。
自分自身の意見は決して口には出さない。
だから彼女は周りの人の意見に合わせている。
だから彼女はいつもひとりぼっちだ。
夕方の4時、姫華はいつもみたいに一人で帰り道の石を蹴る。
大人はみんな「学校は楽しいところだ」とか言ってるけど実際そんなことはない。
私からすれば学校生活なんてただの作業、入学してから4年は経つけどトモダチと言える人なんてできたことがない。
楽しかった幼稚園の頃… 私は世界中の人と仲良くできる気がしていた。
でも違った。
入学式、50人ほどだった幼稚園とは違い210人という人の多さに恐怖した。
私は本当に世界中の人とトモダチになんてなれるのだろうか…
私なんかが…
「いや…これはもう過去の話…」
気づけば私は自分にそう言い聞かせていた。
学校を出てから20分ほどで姫華は自分の家の玄関の前に立った。
カーテンのかかった窓、薄暗い家の中、彼女の親は帰りが遅いのだ。
姫華が帰ると毎日のように机の上には「遅くなるから」の文字とコンビニの弁当が置かれているだけ。
彼女の父は早くに亡くなってしまい、今では母が一人で家を支えている、
姫華は幼くして母の努力を知っている、だからこんな毎日でも一言も文句を言わないのだ。
「カナ…あの子であってるか?」
「そうそう、今家に入ってった子」
「分かった。今回こそ俺のせいにすんなよ」
「あいあい、分かった分かった」