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04<試験勉強編①>

 魔剣学園の入試は3種の試験科目で構成される。


①筆記試験

・「一般教養」「魔法論」「剣術論」「魔剣学」の4科目からなる筆記試験。

 各100点満点、合計400点。制限時間は各40分。

 他の魔法関連学校に比べに幅広い知識と素早い回答速度が求められる。

 戦闘術を念頭に置いているため、とっさの判断力を重視しているのだろう。


②適性試験

・純粋に魔力の素養を計る試験。200点満点。

 本人の魔力保有量や魔力伝導度、魔剣との親和性などを調べられる。

 いわば身体測定に近い。一般人からは才能ありきの試験と思われている。

 だが実際はその逆で、日頃の訓練で大幅に強化出来る項目だ。

 むしろ、もっとも地道な努力が問われる試験科目と言える。


③実技試験(戦闘試験とも言う)

・試験官との一騎打ちを2回行う。各200点、合計400点。

 1回目は学園から支給された魔剣を使用する試験。

 2回目はどの魔剣を使用しても良いフリースタイルの試験。


 総計1000点満点。

 例年の合格ラインは600点くらい。


「そして、特待クラスを狙うなら900点以上だ」


 俺は黒板をチョークで叩く。


「別に私は特待クラスにこだわる理由は無いのですが……」


 リザは遠慮がちに俺に言った。


 ここはガードナー家の書斎の一つ。

 リザがよく使う勉強部屋の一つで、教師を招いて講義を行うこともある。黒板や机なども揃っており、防音制もある程度保証されている作りになっている。

 秘密の会議にうってつけだ。


 俺はリザの姿に変わり、魔剣学園入学に向けた特訓計画についての打ち合わせをしていた。


「いや、ぜひ特待クラスに入って欲しい」


 俺は講師らしく咳払いをして説明を続けた。


「待遇や権限が一般生徒とは大違いだ。まず一番大きいのは個室を使えること。魔剣学園は全寮制で2人1組の相部屋が基本だ。でも俺の正体を隠して生活するのは骨が折れる。その点、特待クラスの生徒は特別に専用自室が与えられるから今みたいな会議を続けられる」


「確かにそうですね」


「俺のことを調べるのにも都合が良い。魔剣学園の図書館は一般蔵書であれば誰でも閲覧できるが、高ランクの魔法文献は3年次生以降しか閲覧できない。だが特待クラスの生徒は1年次生から閲覧できる。他の設備も基本的に特待クラス生徒に優遇されるように作られている」


「わかりましたが……そもそも、魔術の素養で格差を生む制度は気に入りません」


 リザは思わず不満を口に出した。


「ま、そう言うな。素人が上級レベルの魔術を扱えば事故る。相応の設備を熟練者しか使えないのは当然の配慮だよ」


「……むぅ」


 リザは不服ながらも口をつぐんだ。


 実際、その懸念は間違ってはいない。

 俺の言った理由を抜きにして上級クラスが下級クラスを虐げる様子は往々にして見かける行為だ。

 だからこそ、学園生活に余計な障害が無いようリザには特待クラスに入って欲しい。


「あー、話が逸れたな。ここからは具体的な試験の攻略法だ」


 俺は黒板に書いた筆記試験の項目にアンダーラインを入れる。


「リザの強みは魔法学院を目指して得られた魔法理論における習熟だ。昨日やってもらった模擬テストの結果は完璧。筆記試験の『一般教養』『魔法論』は楽勝だろう。『魔剣学』は魔法論と被る部分があるし、これも比較的習得しやすい分野。ただ――」


 俺は黒板に書かれた3番目の項目である『剣術論』に赤丸をつける。


「この『剣術論』は純粋な戦闘における学問だ。リザが触れたことの無い分野で一からの勉強になるから、それなりに時間がかかると思う。ここの執事に参考書籍を頼んでおいたけど、役に立ちそうか?」


「はい。昨日届きましたので、とりあえず全部覚えました」


「は?」


 俺の抜けた返事にリザは不思議そうな顔をする。


「……何か?」


「覚えたっていうのは……概要が分かったって意味だよな?」


「概要を学んだ上で、一字一句丸覚えしましたが」


 ちょっと理解が追い付かない。一体何を言っているんだ。


「何か不足があったと言うことでしょうか?」


「あ、いや、何もない。期待以上だ」


 頭がクラクラしてきた。

 魔法学院の受験生はこんなレベルばっかりなのか?

 それか俺の頭が悪いのか?


 とりあえず、筆記試験については何も心配なさそうだ。


「残りの適性試験と実技試験はどう進めますか?」


「ああ、どちらも毎日の鍛錬が欠かせない分野だ。早めに手をつける必要がある。とにかく体を動かさないと始まらない」


 そう言って俺は分厚い本を取り出した。

 その様子を見たリザは疑問を投げかける。


「実技も本で学ぶのですか?」


「半分当たりだ。本で学ぶのは間違いない」


 俺は本を開き魔力を込めた。

 これは戦闘訓練用の簡易な魔道書。ガードナー家の執事に頼んでおいた本の一つだ。


 魔力に共鳴した魔道書の中から、紙で出来た鳥のような使い魔が3匹ほど現れた。使い魔は紙の翼を羽ばたかせながら、周囲を不規則に飛び交い始める。


「まずはコイツに攻撃を当てられるようになるのが目標だな」


 俺は手元の紙を丸めて棒状にし、使い魔を凝視して狙う。

 タイミングを合わせて素早く振り下ろすと使い魔は地面に落ち、燃えるように消えて自動的に魔道書の中へ戻った。


「やってみるか?」


「はい。要領は掴みました」


 リザは短めの木刀を取り出し、同様に使い魔を狙った。

 リザの攻撃は何度も空を切り、全て回避されてしまう。

 10振りもしないうちにリザは疲れてしまい、その場に座り込んでしまった。


「か、簡単そうに見えたのに……」


「ははっ、最初は俺もそうだったよ。簡単そうに見えるっていうのは褒め言葉の一つだ」


 俺は笑いながらリザの手を取り、立ち上がるのを手伝った。


「さすがに伝書コウモリと比べるとスピードは格段に落ちるけど、浮遊しているから動きを読むのはなかなか難しいだろ?」


「やりがいのある訓練ですね……。頑張ります」


 リザは日が暮れるまで訓練を続けたが、その日の最後まで使い魔に攻撃が当たることは無かった。倒れ込むように床に就き、今日の内容は次の日の訓練に持ち越された。


 ちなみに使い魔は1から100までのレベル設定ができる。今はレベル1。

 特待クラスで魔剣学園に入るならレベル80まではクリアして欲しいところだ。



 入試当日まであと25日。

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