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29<見えない刺客①>

 リザと俺は、食堂前で人だかりを見つけた。


 どうやら食堂前の掲示板に張り出された告示に生徒達が群がっているようだ。


 内容は対抗戦メンバーの正式発表。

 驚きの声が多数上がっていることから、番狂わせな人選だったことがうかがえる。

 

 1年次生が選ばれたことなんて今まで一度もない。当然の反応だ。


 確信を持ちながら、リザと俺は告示を見に行った。



~~~~~~


 魔剣学園×魔法学院

 魔術学校対抗戦 選手告示 



 ①アルト・フロックハート:4年次生


 ➁エイル・ライラック:4年次生


 ③バン・デイブレイカー:4年次生


 ④スイミー・ドリーマー:3年次生


 ⑤レイン・クレッグ:2年次生


 ⑥リザ・ガードナー:1年次生


~~~~~~



 結果を知っていても、正式文書を見ると高揚感がこみ上げてくるものだ。

 思わず喜びの声を上げる。


<やったな! 前情報通りで良かった、おめでとう>


「ありがとうございます。これでまた一歩目標に――レインさんも?」


 リザの上に乗っている、見覚えのある名前に目がとまる。


<本当だ。まさかレインまで選ばれてるとは……>


 これは予想外の人選だ。

 先日の決闘騒動があったばかり、普通に考えれば素行面でのマイナス評価を食らっているはず。

 となると、戦闘内容がそれを上回って認められたということか。


 確かに、レインの実力は上級生相手でも正面切って戦えるレベルに達していると思う。

 他者と差別化できる個性的な魔術を使えるし、近接・中距離戦どちらも対応できる器用さもある。

 多少の贔屓目は入っているが、実力面では申し分ない采配だと思う。


 ただ、学園の生徒全員が納得できる人選かと言われると……どうしても首をかしげてしまう。


 魔剣学園において、プロの冒険者達に混じってC級以上の魔獣討伐・ダンジョン踏破を日常的にこなしている上級生は片手では足りない。

 実力が同等でも、経験値と実績で上級生と大きく水をあけられてしまっているのが現実だ。

 先日の決闘による処分で、精神面等、実力以外の部分で評価を得るのも難しいはずだ。

 

 一部の教師陣が、それを無理に通したとなれば――――



『――出る杭は打たれる。やっかみの対象になるってことさ――』



 レインの言葉を思い出し、僅かな不安を感じ始めた。


<……先に、図書迷宮の様子を見に行かないか?>


「ええ。レインさんにも早く、学園からの高評価と祝辞を伝えてあげましょう」


 微笑むリザに何も言えず、俺は心の内を隠した。


 少し……嫌な予感がする。



――――――



 図書迷宮の回廊を進み、階段を降りていく。

 地下7F、天井に大きなシャンデリアが飾られた中央広間に辿り着いた。

 


 そこに、血塗れで横たわるレインの姿を見つけた。


 少なくとも肩口と横腹から出血し、一目で危険な状況と見て取れる。


 傍らには眼鏡を掛けた女子生徒がいた。

 何度か図書室で見かけたことがある。確か、図書委員のミリア・プロッサー。

 表紙に蝶の絵があしらわれた書籍を小脇に抱えている。


<レイン!!>


「レインさん!」


 俺達が悲鳴混じりに声を上げたとき、レインの隣に座る少女、ミリアがこちらを振り向いた。


「良かった、助けが来て……」


 ミリアは涙目で安堵の表情を見せる。


 リザはレインとの元へ駆け寄った。

 意識は無いが、息はある。魔力回路に備わった緊急自動回復機能が働いている。

 まだ助かる可能性は十分有る。


<とはいえ、一刻も早く保健室へ運ばないとな……>


 リザは頷き、レインを抱え上げようとした。


「待って、まだダメよ!」


 ミリアは悲痛な声でリザを制止した。


「……? 一体何があったんですか?」


 ミリアに事情を問うと、小声でリザに訴えかけた。


「まだ敵が近くにいるの。追撃される危険があるわ」


 リザは眉をひそめた。

 

「敵が、近くに?」


「ええ、向こうの階段から地下8階へ降りて行ったのが見えたの。貴方は敵を追って。私は彼を保健室まで連れて行くわ」


 リザは一瞬沈黙し、答えを出す。


「わかりました、レインさんを頼みます」


 リザはミリアにそう言うと、地下への階段へ向かって駆け出した。


 階段の手すりに手をかけた瞬間。

 『後ろから』の剣撃がリザを襲った。


 あいにく、その手の不意打ちは無意味だ。

 俺が常に360°全方位を見渡している。


 リザの体を強制的に動かし、振り向くことも無いままに背後へ剣を向け凶刃を打ち払った。


 リザへ不意打ちを仕掛けたのは、ミリアだった。

 左手に魔道書を開き、右手に魔剣を構え、完全に戦闘体勢をとっている。


 ミリアは不思議そうにこちらを見ながら、疑問を述べた。


「あら、タイミングが完璧すぎない? 不適合者は後ろに目が付いているのかしら」


 実際後ろに目がついているようなものだが、リザはミリアを煽り返す。


「貴方の剣術がお粗末なもので助かりました」


 眉間に皺を寄せるミリアに対し、振り向いたリザは静かに問い詰める。


「レインさんを襲ったのは貴方ですね?」


「襲ったなんて人聞き悪いわ、彼と同じよ? 決闘を申し込んで、私が勝っただけ。だから私が今年の対抗戦選手」


 俺は心の中で舌打ちした。

 リザが気持ちを代弁するように追求を始める。


「貴方の苦しい言い訳は聞くに値しません。どうしてもと言うのであれば、然るべき公的機関で聞きましょう」


 リザはミリアに剣先を向ける。大人しくしろ、と威圧するかのようだ。


 ミリアは肩をすくめ、まるで降参するかのようにわざとらしく手を上げた。


「仕方ないわね、魔術を使わない不意打ちで見切られたのだもの……今度こそ本気で、不意打ちするわ」


 不敵な笑みをこぼした後、ミリアは魔術詠唱する。


「【バニッシュ】」


 ミリアの剣が、衣服が、体躯が透明になっていく。

 あっという間にミリアの姿は見えなくなった。



<透過魔術か!>


「これでレインさんを襲ったのですね……見えない敵の動きは読めない」


 当てもなく周囲を見回す俺達を嘲るように、ミリアの高笑いが広間に反響した。

 戦闘開始だ。

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