24<レインvsノエル①>
決闘当日、第二体育館には多数の生徒が居座り見学に来ていた。
1年生と2年生の首席対決。この好カードの行方が気にならないわけがない。
しかし、一体どこから決闘の話や日時が広がったのやら。レインはわざわざそんなことを触れ回るタイプじゃ無い。
それにリザの姿をした俺、ノエル・フロックハートが学園にいることを黙っておいてくれる位の信頼関係はあるはずだ。たぶん。
……まあ、どうせ同級生のモニカだろうな。
レインが決闘するだなんてイベントを聞きつけたら、アイツが黙って見過ごすはずがないし。
リザの負傷は全快し体調は万全。ロア先生に鍛えられた分、入学試験時より体力も向上している。そして俺も射撃魔術を多少は使えるようになった。
つまりリザの姿に変わった俺も、前回の戦いに比べて出来ることは格段に多い。
それでも、レインは格上の相手だ。
多数の召喚獣に加え本人自体も卓越した戦闘能力を持っている。
レインは試験官のように手加減してくれる相手じゃない。こちらも全力で挑まねばならない。
俺はリザの姿で白線で区切られた決闘場に立ち、レインと対峙していた。
リザ自身は俺と一緒にいるわけには行かないので留守番だ。
レインは俺に向かい話しかける。
「逃げずに来たか、『リザ・ガードナー』」
「ええ、もちろんです。『約束』を果たしに参りました」
俺とレインはお互いに少し笑みを見せた。
そのとき、甲高い声が体育館の壇上から放たれた。
『さあさあさあさあ、やーって参りました! 魔術学校対抗戦参戦資格の決定戦! 実況解説はこのモニカ・ローレンツが務めさせて貰います!』
モニカ・ローレンツ。俺とレイン含め、よくつるんでいた悪友3人最後の一人。
戦闘も学業も微妙な成績だが、多大なトラブルを引っ張ってくることにかけては右に出る物はいない魔剣学園2年生女子生徒だ。
さほど素行も成績も悪くない俺と、変態なことを除けば超優秀なレインを巻き込んで3バカ扱いされるのは、コイツが元凶と言っても差し支えない。
『早速本日の主役2名をご紹介させて頂きましょう! まずはご存じ、魔剣学園2年の首席かつ2学年最強剣士。負傷からの堂々復活だ! レイン・クレッグ!」
生徒からレインに大きな拍手が送られた。
「対するは彗星の如く現れた期待の新星、入学試験で試験官2名を倒したアルト・フロックハートの記録に並ぶ鬼才! リザ・ガードナー!!』
先ほどより更に大きな拍手が俺に送られる。生徒たちの熱い歓声で館内が沸いた。
モニカの口上を聞き慣れているので、レインは終始涼しげな顔だ。
だが俺はむしろ、懐かしい場所に帰ってきたなと内心思い顔が綻びそうになっていた。
『そして何よりリザさんの戦闘能力は未知数です。ここでレイン君を倒し、私達は魔剣学園生徒最強の座まで駆け上がる第一歩を見届ける目撃者となってしまうのか!? はたまた魔剣学園の厚い壁をレイン君がみせつけるのかぁ!? お二人とも、準備は宜しいですか?』
レインが『待った』の合図として手を上げた。
「ひとつ……聞いていいかい?」
レインの真剣な表情を前に、俺は固唾を呑んだ。
「今履いているそのミドルブーツ、とても良く似合っている。だがそのブーツのせいで重大な疑問点が発生している」
なんだなんだ。
動きにくそうだから履き替えろとか言うのか?
「君の履いている靴下の色は何色だ?」
は?
「『靴は言葉よりも雄弁』、有名な格言だ。無論これは靴下にも当てはまる。君の靴下の色も分からないままに戦うなど、名乗りを上げず戦う無法者と同じだ!」
変態が何か言ってる……!
俺はリザの姿をコピーしているだけだ。靴下を履いたのは俺じゃないので正直わからない。本当に答えようがない。
「靴下の色なんて覚えてません」
「バカな!? 靴下の色は国旗の色よりも大事だぞ!?」
各地域の国家元首に謝ってくれ。
「そこまで言うのであれば……今脱いで確かめた方が良いですか?」
ブーツ履き直すの面倒だから嫌なんだけど。
「良いわけないだろう! 変態か!? 君には羞恥心と言うものが欠けているのか!?」
お前には言われたくない。
レインは一呼吸置き、冷静な口調で話を続けた。
「だが――どうしても、と言うのであれば。僕が勝った暁には今履いているミドルブーツと靴下をトロフィーとして頂くことにしよう」
レインはいつにも増して真剣な表情でこちらを見据える。
なんなんだ。何がどうしてもだ。
冷静になったフリして、言ってることは狂気の沙汰だ。
しかもお前は俺がノエルって知ってるだろ。
今の体は確かに女子だが、もう少し何らかのためらいは発生しないのか。
『さあさあ副賞も決まったことです! 改めて、お二人とも準備は宜しいですね?』
まあ、何でもいいか。元々負けるつもりは毛頭ない。
こっちが勝ったときに相応の副賞をふんだくってやろう。
俺は魔剣【五月雨】を、レインは魔剣【七星】を構える。
お互いに相手を見据えたまま、小さく頷いた。
『――――では、戦闘開始ぃい!!』




