表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/43

22<レイン・クレッグ>

 レインは胸ポケットから絵の具を取り出し、空中に投げてから魔剣で真っ二つに切裂いた。

 剣に水色の絵の具が付着し、当たりに飛散する。


「【握りつぶせ】」


 色触媒と詠唱魔術。

 レインの得意分野、クレッグ家相伝の色覚魔術を用いた召喚獣顕現の発動条件だ。

 袋小路に追い込まれている上、召喚獣を出されて数で圧倒されたら勝ち目は無い。


 一か八か、今この瞬間に正面突破を試みるしかない。

 

 俺は魔力による身体強化を施し、猛スピードでレインに向かって真正面から突っ込んだ。

 そのまま激突するつもりはない。レインが怯んで守りを固めたところで、急激な進路変更をして脇をすり抜けそのまま逃げる算段だ。


 ――だが、鼻先まで突っ込んだのにレインは微動だにしなかった。

 レインは涼しい顔で詠唱を完了する。


「コード#BBE2F1、【ベビーブルー】!!」


 召喚獣の顕現に専念し、攻撃してこないのならばそれで構わない。俺はもともとレインを倒すつもりはない。

 追いかけてくる前にトップスピードに加速しきってこの場を脱出できるだけでいい。

 

 俺は直前で進行方向を切り替え、レインの脇をすり抜けた。

 眼前に障害物無し。背後からの追撃も無し。

 逃げ切った!


 ――そう思った瞬間、俺は地面から生えてきた水色の巨大な手に掴まれた。


 これが【ベビーブルー】の召喚獣か!

 見た目は幼児の手。

 だがそれは俺の身長の2倍強ものサイズ。

 感触は柔らかいためダメージは無い。だが尋常じゃないほどの圧力、いや握力に襲われる。

 

 逃げようともがくことすら許されない。完全に捕まった。


 しかしこんな的確な場所に、しかも地面から生える形態の召喚獣を呼び出すなんて――俺の行動が読まれていたのか?

 相手が目の前にいるのに、自分の背後に設置型召喚獣を呼び出すなんて普通じゃ無いぞ。

 

 レインは涼しい顔のまま、さも当然のことのように言い放つ。

 

「僕は足の動きを見れば、相手が何を考え、これからどう動くか全てわかる。移動先に召喚獣を配置することなど造作ない」


 うええぇ!?


「それロア先生襲ったときに使えよ!?」


「もちろん使っていたが歯が立たなかった。あのレベルは目や耳で感じてから動いていたら追い付かない。ロア先生に限った話じゃないけどね。魔剣学園の教師陣は君が思ってるより化け物だよ」


 つまりお前より変態なのか。もう考えたくも無い。


「それよりいいのかい? その口調ではせっかくのイメチェンが台無しだよ」


 イメチェンって。まあ説明を省けるからいいけどさ。 


「……お前が淑女らしく扱ってくれないからな。口調も荒くなるもんだ」


「これは失礼。【クリア】」


レインは解放詠唱と共に魔剣を一振りし絵具を払い去る。

すると俺を掴んでいた召喚獣は氷が水になるように溶け広がり消え去った。


「……ずいぶん簡単に解放するじゃねえか―――いや、解放してくれるんですね」


俺は立ち上がり、衣服に付いた埃を払いながら淑女らしく身なりを整えた。


「負傷した状態の君に勝っても意味が無い」


「……」


「2ヶ月前、僕も君もまだまだ実力不足だった。だからあの事故が起こった」


 レインは自身の左目の傷に触れた。


「君の停学期間中、お互いに訓練に励み相応の実力を備え、魔力の暴発を2度と起こさないようにする。君はそれに見合う実力を身につけるまで学園には決して戻らない。そういう約束だったはずだ。なのに変装までして魔剣学園でコソコソうろつくなんて。不誠実にも程がある」


 ……返す言葉も無い。


「僕は不遜ながら、相応の実力を身につけたと自負している。今回の春の対抗戦に立候補し、それを確かめるつもりだ。理由を聞くつもりはないが、『リザ・ガードナー』もそうなんだろう?」


「……はい」


「僕は君に決闘を申し込む。対抗戦の参加権をかけて」


「!!」


「10日後の放課後、第二運動場で待つ。今度は全力の君を見せてみろ。僕はそれに打ち勝ち、実力を示す」


――――


 参ったことになった。


 レイン・クレッグは一連の戦いで見せた【色覚魔術】を使いこなす2年生。リザと同じく首席合格を果たした天才だ。

 文字通り多彩な召喚獣を従え状況によって使い分けることが出来るため、戦術も変幻自在。

 強いて短所を挙げるなら、先のように短文ながらも詠唱が必要なので常に一手遅れることくらいか。

 だが彼の変態技術により、距離を詰めてもカウンターを喰らうだろう。


 本当に参った。


 何とか部屋に戻ってきた俺は、リザに一連の経緯を報告せざるを得なかった。(もちろんエロ本の事は除く)


「正体がバレた!?大事じゃないですか!?」


<まあ一応信頼できる友人ではあるし、悪いようにはならないと思う>


「本当に友人なんですか? 散々怒られて決闘まで申しこまれたのに?」


<耳が痛い。いま耳無いけど>


 緊張感のない答えに、リザは呆れた様子でため息をついた。


「勝算はあるんですか?」


<無いよそんなもん。レインは元々俺より強かったけど、アレは更にヤバくなってる。勝てる気がしない>


「ではどうするんですか? 対抗戦出場は諦めると?」


<最悪そうなるが……>


 そうなれば今までのリザの努力は何だったのかわからなくなる。


 確かに今の俺では勝てない。『今の俺では』だ。

 リザがこれほど頑張ってくれているのに、レインにあれだけ言われたのに、俺自身が努力せず俺のままで戦おうなんて虫のいい話じゃないか。


<……リザ、頼みがある>


 俺は一息ついてリザに言う。


<俺に射撃魔法を教えて欲しい>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ