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18<入学式>

 春の心地よい風と共に、魔剣学園入学式の日がやってきた。

 リザは学園の制服を身に纏い、魔剣【共鳴ともなり】を携え式場に向かう。


 この【共鳴】は俺のことだ。入学する上での必要書類の中に魔剣登録書があり、名称記載が必要だったためリザが名付けた。

 若干ながら俺の魔剣特性を示唆しており一抹の不安を抱えたが、「自意識過剰です」とリザにたしなめられた。


 魔剣使いは熟練者であるほど愛用の魔剣との親和性が高まり、一心同体となっていく。

 逆に言えば、熟練者になるためには日頃から魔剣と協調していく訓練が欠かせない。

 魔剣に協力、共存という意味を込めるのは一般的であり、既に多数の事例があるらしい。

 何より不適合者であったリザは、これが魔剣に込める想いとして最も適切なものであると語った。


 入学式が行われる講堂に入ると、見知った顔に出会う。


 まずマック。

 なんだかんだ言って受験生の中では相当の実力があった。当然合格しているだろうとは思っていた。

 お互いに一瞥した後、特に会話も無く無表情でスルーした。こちらはマックに用は無いし、彼もいざこざのあった相手とは会話したくないだろう。


 次にティナ。妹は背が低いので中々見つけられなかったが、ティナの方からリザに近づいてきてくれた。

「リザさん! またお会い出来て嬉しいです! お怪我は大丈夫でしたか?」


「ええ、ご心配をお掛け致しました。私もお会い出来て嬉しいです」


「本当に……。リザさんなら余裕で合格だとは思ってましたが、私はその、結構ギリギリだったので」


「ご謙遜をされなくても。あの実技試験の様子、間違いなく好成績だったでしょう?」


 ティナの実技試験での動きは頭一つ抜けていた。自信を持って良い内容だったはずだ。


「私はその……筆記が苦手で……通ったと言ってもBクラスでしたし……」


 ティナはだんだんと消え入るような、小さな声でつぶやいた。

 ティナ……お前は兄貴に似てしまったか。嘆かわしい。


 そうこうしていると受験生や教師陣も一通り集まって来た。

 ティナもリザも席に着き、式が始まった。


 首席挨拶を行うリザに対し、俺がそこに立つはずだったのに、と苦虫を噛み潰したような顔で睨むマックの姿があった。


――――


 入学式を終え、ティナと別れた後に学園寮に入った。寮長から門限やその他規則等の説明を受ける。

 その後あてがわれた自室へ向かい、私物の荷解きに勤しんだ。

 

 リザの自室は日当たりの良い2階の角部屋だ。俺が同室生徒と2人で使っていた部屋より3倍くらい広い。

 特待生は個室を使用できると知ってはいたが、これほど広い部屋を貰えるとは知らなかった。

 流石に貴族の私室と比べれば狭いかも知れないが、A・Bクラスの部屋とは雲泥の差だ。

 ただ、それ故リザの持ち込んだ荷物もそれなりに多い。今日中に終われば良いが。


<手伝おうか? 1人より2人の方が早いだろ>


「そうですね、そうして頂けると……。いえ、ダメです」


<真面目だなあ>


「荷物の中には着替えも入っています。貴方が見ていることを忘れるところでした」


<気にしなくても良いのに。俺はもう死人、幽霊みたいなものだ>


「私が気にするんです!」


リザは怒った後、真面目なトーンで俺の言葉を咎める。


「それに、死人だなんて。冗談でもそんなことを言ってはいけません。貴方の体を元に戻す方法はきっとあるはずです」


<戻す方法があるなら俺に対する監視が緩すぎると思うんだよなあ>


 あのロプトルの口ぶりからして、俺に対する評価は『興味がない』だった。


 伝書コウモリも途中で経由した売人が付加したものだろう。むしろ、きちんとガードナー家の手に渡ったかどうかの位置情報把握が目的か。ディッシュとか言う魔獣には襲われたが、俺のことはノーマークだったから監視とは無関係っぽい。

 何らかの方法で元の人間に戻れる可能性があるなら、もっと監視の目を張り巡らせている気がする。

 

<――――つまり少なくとも闇組織は戻す方法を把握してないし、絶対出来ないとタカをくくってる。だから正直期待してない>


「そう言う問題ではありません」


リザが努めて冷静な声でそこまで言うものだから、気圧されてしまった。


<わかった、全面的に俺が悪かった。お互いに最善を尽くそう>


「もちろんです」


と言ったところで、リザは三重にした麻袋を作り俺を乱暴に詰め込み始めた。


<最善尽くし過ぎだろ。俺は気にしないのに>


「私が! 気に! するんです!!」

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