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14<入学試験編⑤>

 俺は急いで女子更衣室に戻り、ロッカーに身を潜めていたリザの元へ向かう。

 残り時間はあと1分もなかった。


「ギリギリじゃないですか! 戻ってこなかったらどうしようかと思ってましたよ!?」


「すまない、だがマックには一泡吹かせてやったぞ」


「グッジョブです。全部許します」


 リザは親指を立てて労をねぎらった。


「ああ、そうだ。伝えておきたいことが――」


 と、言ったところで俺の体は縮んでいき、魔剣の姿に戻ってしまった。

 リザは魔剣の俺を拾い上げた。


「伝えたいこととは?」


<歩きながら説明する。とりあえず会場に向かおう>


 リザは俺を鞘に納めて、元いた試験会場へ向かった。


―――

 

 リザは俺との打ち合わせを終え、ちょうど良い頃合いに会場へ着いた。


 試験会場に戻ったリザを見るなり、受験生達はざわつく。リザを恐れるように受験生の集団はあとずさりする。


 やっぱりな……。

 予想通りの展開だ。事前の準備とリザとの打ち合わせの甲斐があった。

 受験生の集団の中でマックが先頭に立ち、冷や汗をかきながらリザを責め立てた。


「やはり制御が出来ていないじゃないか! この【不適合者】め!!」


 リザは面倒くさそうな顔をしながら、俺にひそひそと話しかけた。


「本当に泡吹かせるくらいまで殴ったんですか? 元気そうですよ?」


<リザの体でそんなことしねえよ!? ちゃんと淑女の範疇でしか行動してないし!>


「冗談です」


<言うようになったなあ、誰に似たんだか……。さあ、さっき説明した通りに行こう>


 リザは小さくうなずき、マックの方へ向き直って反論した。


「一体何処を見て制御が出来ていない、と感じたのですか? 私には思い当たる節がありませんが」


「ふざけたことを! 試験官を吹き飛ばして危害を加えたじゃないか、紛れもなく魔力の暴発だ!」


 リザはわざとらしくため息をついて見せる。


「暴発ではなく意図した通りの動きです。試験官に私の全力を見せただけですよ」


「意図通りだと!? そんなもの後付けだ! 終わった後だから好き勝手に言えるんだろう!?」


 終わった後から好き勝手言ってるのはそっちだろう。【不適合者】への恐怖心に駆られて、論理が破綻してしまっている。

 ま、このために俺は言質を取ってたんだがな。


「開始前の宣言を聞いていなかったのですか? 私ははっきりと言いました。『持てる全力で以って戦います』と」


「……!?」


「試験官が私の全力を見誤った、ただそれだけのことですよ。事故でも何でもありません。だからこそ試験官ももう一度見極めようと再戦を望んだのでしょう。ルールはルールですので、お引き取り願いましたが」


 受験生達はざわめきながらも、リザの言葉に納得し始めていた。マックも少し落ち着きを取り戻したのか、声を荒げることをしなくなった。


「……信じて良いんだな? 魔力の制御に問題は無いと。今は【不適合者】では無い、と」


 受験生もマックも、本当はリザが不適合者であって欲しくはないのだ。魔剣学園に入学したとき、いつ爆発するか分からないような爆弾と一緒の教室で授業を受けたくはない。ただそういう思いなのだ。


「もちろんです。命よりも重い、ガードナー家の誇りに掛けて」


「……わかった、そこまで言うなら信じよう。だが判断するのは試験官と審査員だ。精々気をつけるんだな」


 マックを含めた受験生達は皆固まって移動し、離れていった。

 

 今は少し時間を置いた方が良い。

 リザは他の受験生とは離れた位置のベンチに腰掛けた。

 すると、わざわざリザの隣に座ってきた物好きが現れた。

 

 ティナだ。


「リザさん、大丈夫です! 不適合者かどうかなんて関係ありません。リザさんほど優しい方なら、大丈夫ですよ!」


 論理的にはよくわからないが、言いたいことはわかる。

 リザは少し照れながら微笑んだ。


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