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アイケァン・ミスィット

 なんとなくで書きました。

 まあその、怪談という場にはふさわしくないかもしれません。僕が考えたことを発表するだけの話なので、恐怖があるかと言われると違うと思います。ただ、この話を噛み砕いて考えると、少しはゾッとしてもらえるかもしれませんね。


 あ、前置きはいい。まそうですね、長々と前置きだけ語るのも時間の無駄ですんで、手早く言ってしまいましょうか。


 幼いころから、心霊体験というものにはとんと縁がないんです。オカルト関連のものを読み漁ったこともありましたが、心霊スポットに行くわけでもなく……まあ、近場になかったからというのがいちばんの理由でしたけど。何かしらおかしなものが見えたり、不可思議な物音を聞いたりといった体験はしませんでした。身内を亡くしたときも、そういった不思議な体験をすることはなかったようで。姉は亡くなった祖母を見たと言ってたことがありましたが、僕はまったくでしたね。


 言葉にするのも馬鹿らしい気はしますが、霊感ってやつですか? ああいうのもさっぱりでして。一時期オカルトに傾倒していたのが馬鹿らしく思えるくらいに、しかしそういう体験をしたことがない。虚しいですよね。そうはいっても、心霊スポットに行くのはリスクの塊ですし、怖がってもいたと思います。まったくそういうことに縁がないまま、高校生になり大学生になり、まあ今に至るわけです。


 じゃあ何だと、お前が怪異に遭遇しないことが怖いのかと。そう思われる向きもあるかもしれませんね……言ってしまえばそうなんですが。違いますよ、僕はそういうことに縁がないのでね。守護霊がどうのって、占いにすら引っかかったこともない僕に言われてもね。姉も、今はまったくそういうことを言わなくなったので……霊感があったんではなく、祖母の方から接触してきていたんでしょうね。


 チャンス。そう表現してしまいましょうか? 人の出会いのことを一期一会と表現するように、人でないものと出会うためにも運や時間のすり合わせが必要なんじゃないかと。時間に関係する怪異も多い以上、そう考えるべきでもあると思うんです。


 振り向くという動作であるとか、視線のフォーカスがずれるであるとか、目を外す、見ないということは頻繁に起こっていると思います。では、何を見ていないのか。振り向いたとき、もともと向いていた方向に。視線をフォーカスしなかった片隅に。ちょっと目をつぶって、見ていなかったその瞬間に……もしかしたら、霊はいるのかもしれない。


 思い出してみてください。なんだか気になって振り向いたけど、何もなかったことってあるでしょう? ちょっと目にゴミが入ったような気がして、目をぎゅっと閉じたこともありますよね。我々は、もしかしたら感覚的に逃げることができているのかもしれない。そうなってはいけないことが分かっているから、視線を外すんです。そういう意味では、僕は非常に幸運なのかもしれませんね。


 どうでしょうね、怖い話をすると霊が寄ってくると言いますが……まばたきの回数が増えたとか、目がかゆいようには思いませんか。夜になって気温が下がってきても、冷房が利いてるようじゃ盛り上がりに欠けるような気がしますね。


 どうしたんですか先輩?


 ああ、まつ毛ですか。長いですもんね。

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