表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

給付金

作者: ムルモーマ

 一番人口の多い首都に住んでいる為に、給付金が届いたのはATMに寄って小まめに確認もしなくなってから暫く。七月の給与が入って記帳したその前日だった。

 十万円という金額が付与されるという事に対して、経済を活性化させる為の金なのだから貯金するんじゃなくて使わなければいけないよなあ、と考えていたが、給付金が手元に届いても明確に何に使うと決められた訳でも無かった。


 動物の角が好きだ。

 単純に格好良いからと言う理由だが、どうしてか肉食獣の牙や爪と言うものよりも、草食獣の角が好きだった。多分、牙や爪に比べて大きく、目で見て様々な形が遠くからでも分かりやすいからより惹かれたのだと思う。

 もしくは架空の動物、特にドラゴンが好きで、その中でも角が象徴的なものとして良く描かれていたから、と言うのも強い理由かもしれない。

 それに姉が狩猟した鹿の頭蓋骨を貰った事が興じて、角のある草食動物の頭蓋骨を集める事が社会人になってから数年の趣味になっていた。

 蚤の市で三つ、その数年間で合計十五万円程使ったと思う。ただ、そこで欲しいものは無くなった事と、別にそういうイベントには加えてそこまで積極的に赴かなかった事、そういうものはネットで購入するのではなく自分の足で赴いて実際に目で見て買いたかった物である事がその趣味の鎮静化に繋がった。

 一応ヘラジカの角が格好良いと思っていたが、調べてみれば角のくっついている部分だけの頭蓋を切り取ったものが二十二万もしていた。


 食品サンプルが好きだ。

 正直、何故好きになったのかは良く分からない。

 料理に関しては元々興味があった。自炊も良くする。それから高校の時の家庭科室に何も無い棚があり、そこにこっそり置いたら面白いだろうなあ、と思っていた事は覚えている。

 ただ、その位の事は思い浮かぶが、角に比べるとそこまで明確な理由は余り思い当たらない。

 けれど、これに関しても数万は使っている。そしてこちらは今でも続いている。

 時々かっぱ橋に赴いて、自分が気に入った物を選び抜いて一つ買う。最後に行ったのは、二十五歳の誕生日の時。何か見栄えの良い物が欲しいなあ、と思ったが完全に刺さるものは無かったが、行く度に目に付いていたものを買おうと思った。

 九万八千円という高価なものだったがそれでも、まあ一年に一回位はと思っていて、しかしそれは見間違えていて十九万八千円だった。流石にやめた。

 給付金をつぎ込めば九万八千円になる、と思ったが流石にそこまでの物でもないと思えていた。

 それに……自分が本当に欲しいのは時々展示会で飾られているような全力でふざけたものでもあったりして、そこまでの金をつぎ込むのならば、いっその事そういう物をオーダーメイドで作って貰った方が良い気もし始めている。


 そんな、自分の趣味の中で最も金を消費するような趣味では十万円を使う気にもならず。もしくはもっと必要で。

 ただ、日頃の生活で二つ、買い替えようと思っているものがあったのに気付いた。

 大学入学時から合計七年以上使い続けて、プラスチックの部分がボロボロになっている炊飯器。アルミホイルを敷かずに燻製をしたら剥げてしまった中華鍋。

 Amazonと睨めっこしてそこそこ良い物を買ったが、合計三万にも満たなかった。

 残り七万。ちょっとした贅沢をぼちぼちして行けば良いかとも思ったが、そうすると浪費癖がついてしまいそうで(もうついているのかもしれないが)、余り気が乗らない。

 ソシャゲはぼちぼちやっているが、ガチャに金をつぎ込むような人種でもない。

 盆はこんな時勢だが実家に帰る予定だったので、この頃見つけた面白い菓子屋で適当に見繕って一万程の物を送った。

 残り六万。

 ただ、やっぱり帰らない方が良いかとなったので、それは自分の口に入る事はなくなった。

 そんなまま、もう今は盆の九連休の四日目となる。予定は何も無いに等しく、そもそも外を出歩きたくなるような時勢でもない。

 それ以上にこの真夏の気温と湿度だ。

 喫茶店巡りも趣味の一つではあり、マスクを着けるのならば、そして都内ならばある程度は良いだろうと思うが、出社するだけで汗だくになるような時に歩き回りたくもなかった。


 欲しいゲーム等も間に合っている。自炊は結構凝っているが、特別高い物を欲しい訳でも無い。

 外食はぼちぼちしているが、それはいつもの事で生活費の範疇だ。

 一応、給付金が届く前には本棚の買い替え、親に一年分の携帯代を支払いなどでその残りの六万以上は事前に吹っ飛んでいるのだが、それは給付金が配られると決められる前から吹っ飛ぶ事が決められていたもので、給付金として使ったものに入れるべきものでは無い気もしている。

 無理に使うものでもないだろうが、生活に困ってもいないのに貯金にするのにも気が引ける。

 まあ、気が引けると言えどそんな強いものでもなく、いつかデカいものを買うと決心した時の足しにでもすれば良いかとも思っていたりする。

 ただ、それまでは六万という数字はずっと頭に残り続けるのだろうとも思うと、何かに使ってしまいたくなるのも事実だった。

 その微妙な感覚がいつまでも残り続けて、それを失せさせようと衝動に走るのか、給付金としての用途がその元から使う予定だった物に組み込まれて消えていくのか、それは今のところ、まだ分からない。

脱毛に少し興味があるけど、やるかどうかって言われると、ずっと興味があるまま何も行動に移してないので多分やらないんだろうなあ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ