遺伝子組み換え白雪姫
遺伝子組み換えおとぎ話の第三弾です。
お城に住んでいた悪い魔女は、お気に入りの鏡に向かって訪ねました。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰だい?」
「それは、白雪姫でやんす」
鏡は答えました。
魔女は気分が悪くなりました。自分より美しい白雪姫が気にくわないのです。魔女はすぐに、城の研究室に雇っているポスドクを呼びつけました。
「白雪姫を醜くするための方法を考えなさい」
魔女はそうポスドクに命令しました。
「わかりました」
そのポスドクは頷くと、すぐに研究室に戻り、研究を開始しました。
数日後、魔女の元にポスドクがやって来ました。
「できました。このりんごはCRISPR/Cas9のタンパク質とsgRNAのmRNAの複合体と相同組み換え用のノックインドナーDNAプラスミドをリポソームに入れたものを細胞の中に含んでおります。これを食べると数時間で食べたものの体の細胞内で遺伝子組み換えがおこなわれ、醜い姿になります」
ポスドクは丁寧に説明しました。
「ちょwww。おまwww。何言ってんのか分かんね。日本語でオケ」
魔女は言います。魔女の言っていることの方がわかりません。ポスドクは少しムッとしました。これだからアホな上司は。とポスドクは心の中でつぶやきます。
「要するに。これを、白雪姫に食べさせれば、イイんです。ムムッ」
ポスドクは、川○慈英のモノマネをしている博多華○のモノマネをして言いました。
「なるほど」
魔女は納得したようです。
白雪姫は7人の小人と一緒に森の中で遊んでいます。
今日は4対4でドッジボールをして遊んでいます。
しかし、ボールの大きさは7人の小人たちと同程度の大きさです。
白雪姫が圧倒的に有利です。力の差は歴然としています。7人の小人たちにとってまさに理不尽極まりないゲームで、白雪姫チームの勝ちが確定した、白雪姫のためのドッジボールです。小人たちはこれを、接待ドッジボールと呼んでいます。
「あはは。うふふ」
白雪姫は可愛らしい声をあげながら、全力でボールを投げます。ウサギを狩るのに全力を出す獅子同様に、白雪姫も小人相手に手加減はしません。もはや獅子雪姫と言っても過言ではありません。
もちろん、ボールと同様の大きさしかない小人たちにはどうすることもできません。白雪姫の敵チームの小人たちは必死に逃げます。一方で、白雪姫と同じチームの3人の小人は、白雪姫をよいしょするのに必死です。
「あー楽しかった、お腹すいたわね」
7人の小人たちとドッジボールで遊び、汗を流した白雪姫は小腹が空いていました。
ちょうどそこに、黒いローブを身にまとった魔女が現れました。
「そこのお嬢さん、お腹が空いていらっしゃるのですか? ちょうどよかった。このりんごを差し上げます。どうぞ召し上がってくださいな」
魔女は、白雪姫にりんごを渡しました。
「あら、ありがとうございます。ちょうどお腹が空いていたのです。ありがたくいただきます」
「ほっほっほっ。どういたしまして。美味しく召し上がれ」
そう言い残し、魔女はお城に帰りました。
白雪姫は魔女からもらったりんごを何も疑うことなく、丸かじりします。
カリッ。シャクッ。
白雪姫はあっという間にりんごを食べてしまいました。お腹が少し膨れたために眠たくなった白雪姫は、その場で横になりました。
数時間昼寝をしていた白雪姫は目を醒ましました。目覚めるのに王子様のキスなど必要ありません。
そして、白雪姫は自分の体を見て驚きました。
身体中のあらゆる筋肉が盛り上がっているのです。白雪姫の小柄で美しい顔に似つかわしくない、筋肉隆々のマッチョな胴体です。あのポスドクが作ったりんごは食べたものの筋肉に、筋肉を増強させる遺伝子を発現させるものだったのです。
白雪姫はアンバランスな姿になってしまいました。
白雪姫は試しに右手に力を入れました。グッと引き締まる腕を見て、白雪姫の口から思わず涎が出ます。
「このあふれんばかりの力。素晴らしいわ」
白雪姫はその力が試してみたくなり、7人の小人たちを呼びます。
「もう一回ドッジボールをしましょう」
白雪姫は力が試したくてうずうずしています。
一方で、さっきまでの白雪姫と比べて明らかにマッチョになった白雪姫の姿を見て、7人の小人たちは震え上がります。しかし、白雪姫には逆らえません。
彼らが助かる唯一の方法は、白雪姫と同じチームになることです。
まさに文字通り、命がけのジャンケンです。
「あはは、うふふ」
白雪姫は全力でボールを小人にぶつけます。ボールと同じ大きさの小人にはなすすべがありません。ボールが当たった小人は、白線の外へ吹っ飛ばされます。周りの小人たちはそれをガクガクブルブルしながら見つめます。
「あははは。うふふふ。ドッジボールは楽しいですねぇ。おほほほ」
白雪姫は高笑いを浮かべながらドッジボールに興じます。
どうやら、筋肉を手に入れた白雪姫は、心が醜くなってしまったようです。
白雪姫は7人の小人たちと(見かけ上)仲良く暮らしました。ちなみに、王子様は出て来ません。
一方、お城では。
白雪姫にりんごを渡した魔女が帰城しました。
そして、魔女は鏡に向かってもう一度訪ねました。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰だい?」
「それは、原田○世でやんす」
鏡は答えました。
「あら、そう。なら仕方ないわね」
魔女は諦めました。原田○世には敵わないと知っていたからです。
そして、魔女も普通に暮らしました。
めでたしめでたし。
遺伝子組み換え桃太郎(https://ncode.syosetu.com/n4196gg/)、遺伝子組み換え鶴の恩返し(https://ncode.syosetu.com/n7348gg/)もぜひご覧ください。