第四十九話 パーティ解散(オルガ&カル)
「思ってたよりあっさりと転移したな」
「えぇ、そうね。リンちゃんも奴隷という枷が外れてすっきりしたのかもしれないね。もしかしてマオくん寂しい?」
「いや、昨日までの落ちこんでいたリンより、ずっと良いよ」
「そだね。ロメリアさんと話をして何か掴んでたみたいだったね」
国王と話しながらも周りにも目を配っていたとは、さすがミーナだな。
さて、パーティは残り4人だな、明日はカーマ国王にあいさつかな。
「マオ、明日は私達のカーマ国に行ってもらってもいいかな」
「うん、ちょうどそう考えていたところだよ。オルガ達も騎士団に戻るのかな」
「うむ、そうだな。十分な経験は積めたし、これだけ強くなれば魔王以外なら戦えそうだしな」
「オルガとカルさんだったら新人魔王とか倒せそうだけどね」
「ワハハ、魔王は当分お腹いっぱいだぞ。それより、マオ達は今後どうするのだ。結婚するのか?」
「け、結婚……」
オルガ、いきなり何言っているんだ。確かにしばらく平和が続くだろうからそういうのもいいかもしれないが。
「ダ、駄目。まだマオくんは子供だし、せめて15歳になってからじゃないと」
ミーナが顔を真っ赤にしながら会話に入ってきた。
15歳でも子供だと思うけど、俺もう14歳になったし、あと1年もないけどね。
「そうだよねぇ。ミーナさんもマオさんの前で恥ずかしいとこ見せるのは勇気がいるものね~」
「な、何を……」
カルさんが絶妙なタイミングで会話に入ってきた。
「確か魔族のアレって凄いって、マオさんのお母さまが話してましたよね」
「カ、カルさん、その話はダメです。それは大人の話です」
うちの母親ミーナに一体何を吹き込んでいるのやら。
ミーナの手足がブルブル震えておかしな状態になっている。
「ミーナ、大丈夫?」
俺はさっとミーナの肩を腕で支えてあげた。
「はうぁ」
ミーナが一瞬ビクっとしたが、すぐに俺の腕に体を預けてきた。
「もう、恥ずかしい話は禁止~」
「カルさん、あんまりミーナを虐めないでください」
(ミーナ、15歳になったら結婚しよう)小声でミーナだけに聞こえるようプロポーズした。
ミーナは一瞬驚きとも感激とも言えない顔をした後、コクリと静かに頷いてくれた。
「あらあら、2人だけで内緒の話? 結婚するときは私達にも声をかけてよね」
「もちろんですよ、カルさん」
俺はミーナをソファーに座らせ、オルガに近づいていった。
「オルガにはこれを渡すよ」
オルガにもリンと同じように転移の指輪を渡した。もちろん、カーマ国と魔王城へ転移できる指輪だ。
さらに治癒Ⅱもついている。
「おぉ、これは素晴らしいな。ありがとうマオよ。治癒までついているのなら一人で行動していても大丈夫だな」
「あら、オルは他の女性のとこにでも行くつもりなのかしら」
急にキレるカルさん怖すぎです。
「ば、違うぞ。今後カルが身重になった時にでも安心して騎士団の仕事ができるってことだ」
おやおや、オルガ達は早速、子供作りにいそしむのだろうか。
「カーマ国に帰ったら結婚式を挙げないといけないしな」
結婚式という言葉がカルさんの琴線に触れたのか、明らかに機嫌がよくなるカルさんだった。
「嬉しいわ、オル。私のこと嫌いになってしまったかと思ってた」
「そんな訳ないだろう。私はカル一筋だ」
2人の間のラブラブ度が増してきた。待て、今日の宿は1部屋しかないのだから自重して欲しい。
「オルガの装備品には随分助けられたし、カルさんの回復、結界魔法にも助けられた。本当ありがとう」
2人はハッとなって俺の方に向き直った。
「こちらこそ、お世話になったよ。マオが人類の敵でなくて本当良かった」
「それは私も思ったわ。今回は人側だったけど、魔族側についたら誰も倒せなくなるわ」
「オルガさん、カルさん。それは私がマオくんをしっかりと見ているから大丈夫ですよ」
ミーナが胸を叩いて自慢げに言う。
まあ、ミーナのような可愛い勇者でなく、男のイケメン勇者だったら出会ったときに殺してたかもしれないけどね。
でも、ミーナが勇者で良かった。戦わなくてすんだし、両想いだし嬉しいわ。
俺たちはその後もとりとめのない話をして、夕食をとった。
次の日の朝、カーマ国にミーナの魔法で転移することにしていたが、オルガが転移の指輪を使いたいということでオルガに任せてみることにした。
「どうすれば、転移するのだ?」
「転移先のカーマ国をイメージすればいいよ」
転移には、ある程度イメージが必要であった。逆に少しでもイメージができれば指輪で簡単に転移ができる。
俺たちは仲良く手を繋いで転移した。
「おぉ、一瞬で着くのだな」
オルガが感動しているが転移とはそういうものだ。俺たちはカーマの都市前に転移した。
まずはカーマ国王に挨拶だ。カーマ城に入り、すぐに国王と謁見することができた。
オルガが魔王討伐のことをミーナに代わって説明してくれていた。
「なるほど。御苦労であったオルガ騎士団長。今後はカーマ国のために働くが良い」
「はは、今までの経験を活かし、カーマ国のために全身全霊で働かせていただきます」
ん、ちょっとブラック入ってないか気になったが、オルガの体力なら大丈夫だろう。
「それで、勇者殿はどうするのじゃ。我がカーマ国に残って皆の指導でもしてくれるのか?」
「国王様、魔王を倒し、しばし平和のこの時、私を育ててくれた両親のために孝行しようかと考えています」
「なるほど、親孝行は出来るときにしとかねばならないな。もし、暇ができカーマ国に寄ることがあれば是非、城にも顔を出して欲しい」
「ありがたき幸せ」
そうか、ミーナの親に孝行するのも大事だな。
ここでオルガ達と別れたら、ミーナの両親のところへ行ってみよう。
意外とあっさりに謁見は終了した。俺たちは久しぶりにオルガの家へ案内された。
カルさんが料理を作り、ミーナが手伝い、俺とオルガは酒をがんがん飲んだ。
魔族とはいえ、14歳の体には酒が強過ぎたようだ。
オルガは全然平気そうなのに俺だけ酔っぱらってフラフラになってしまった。
「わはは、無敵のマオも酒には勝てないようだな」
オルガの大きな声が聞こえていた。むう、確かに酒に弱いようだ。
もう少し慣れて強くなっておきたいな。弱点はミーナだけでいい。
「あら、マオくん酔っぱらっちゃったの。仕方ないな」
ミーナが俺を膝枕してくれた記憶は何となくある。しかし俺の記憶はそこまでだった。
朝起きてベッドの上で目を覚ますまでの記憶は一切なかった。
朝食もカルさんとミーナで作ってくれた。パンにサラダと健康的な朝食だった。スープまで付いていた。
そのスープはミーナが作ったんだなと思った。初めてミーナのスープを飲んだ時と同じ味だったからだ。
「ミーナのスープは美味しいな」
「あらあら、マオさんたら、もうミーナさんの味が分かるのね」
カルさんがによによしながら微笑んでいる。
「え、マオくん。スープ私が作ったってわかるんだ」
ミーナは俺がミーナのスープを褒めたことに気を良くしたのか、凄く感動していた。
「マオ達はもう夫婦みたいだな」
オルガが俺とミーナを交互に見ながら言った。
「ま、まだ早いんだから」
ミーナ、そんなに否定しなくてもいいのでは。
和やかに朝食をとり、俺とミーナはオルガ達とも別れることにした。
「カルさん、あまりオルガをこき使わないであげてくださいね。オルガ、頑張れ」
「あら、マオくんこそ、ミーナさんにエッチなことばかりしないであげてね」
エッチなことばかりって……何もしてないですけどぉ。そりゃ、これから2人になったら分からないけど。
「私、我慢できる自信ないよ、マオくん」
えぇ、何が我慢できないのミーナ。オッケーなの、そうなの?
「ミーナ、マオお前たちもそのまま仲良くな。俺たちの結婚式には呼ぶから2人ともきてくれな」
「あぁ、もちろん。喜んで出席するぞ」
俺たちはお互いに握手をして、ミーナの両親の元へ転移した。




