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第三十八話 勇者パーティ魔王城へご招待

トレント族の魔族の話を聞いて俺たちは、シルビア国王に迷宮近くの林檎を採るとそれを餌にしている魔物が襲ってくるから絶対に採らないよう国民に伝えてもらうようにお願いした。


もちろんお願いしたのはミーナである。国王はすぐにシルビア国内に声明を発表した。


これで彼らも安心して日向ぼっこが出来るだろう。


都市シルビアはそれほど大きな街ではなく、ミーナとデートするには少し物足りない気がした。


そこで、ふと思いついたことを口にした。


「久しぶりに家に帰ってみようかな」


何気なく言った一言だったがみんなが食いついてきた。


「え、マオくん家に行くの? ササちゃん元気にしてるかなぁ」


「ご、御主人さまの家ですか。是非ともご両親に挨拶してみたいです」


「マオさんのお家ですか。どんな所か行ってみたいですね」


「マオの家か。興味半分恐怖半分だな」


何だかんだみんな俺の家(魔王城)に興味深々だ。


街中で転移は目立つので、街から少し離れた森まで移動してから俺たちは魔王城へ転移した。


前回と同じく城の入り口に転移した。目の前には魔王城がそびえ立つ。


「おにぃだぁ~」


なぜ、いつもタイミングよく出てくるのだ我が妹よ。久しぶりに見る妹は実に可愛い。


愛らしくパタパタ飛んで俺の方に向かってきた。


「久しぶりだなササ。元気にしてたか」


「おにぃが中々帰ってこないから心配したよぉ。死んじゃったのかと思ったよ」


う、確かに一度死んではいるけどな。親父はササには話していなかったんだな。


「ササちゃん、覚えてるかなミーナだよ」


俺の隣にいるミーナが遠慮がちにササに話かけた。


「あ、ミーニャだ。覚えてるよ~もちろん。だっておにぃのお嫁さんだもの」


そう言いながらササはミーナに抱きついていった。


いや、まてお嫁さんってまだ決定はしてないはずだが。


ミーナは満面の笑みでササを抱きしめ頭や羽を撫でている。


ミーナとは反対側の俺の隣にいるリンはササを見て固まっている。


「御主人さまの妹さん、なんて可愛いの」


とりあえず城の外にいても仕方がない。城の中に入っていくことにした。


玄関を入るとすぐにリンが気が付いた。


もちろんミーナも気付いているだろうが、ササにデレデレ状態なのと危険なことではないのでそれは無視していた。


「御主人さま、巨大な魔力反応が1つ急接近しています。御注意を」


「まて、リン大丈夫だ。害のあるものではない。あれは母親だ」


リンが一瞬呆けている間に母親が突っ込んできた。相変わらず恐ろしいスピードだ。


オルガの防御でなんとか防げるぐらいだろう。リンには厳しいかもしれない。


そんな母親のタックルを俺はドーーンという音と共に受け止めた。


「マオくん、おかえり~。今日は何かな、結婚報告?」


相変わらず母親がおかしなことを言う。何とか母親の胸から離れて声を出した。


「いえ違います。今日は勇者パーティのメンバーを連れての里帰りです」


「あらあら、勇者パーティ。ミーナさんはもう勇者になったんですね。さすがマオくんの嫁になる人は凄いわ。確かに前に会ったときとは比べ物にならないほど強さを感じるわ」


もう、嫁はほぼ確定なのか。まあ、いいや。ミーナが母親にお辞儀をして挨拶をしていた。


「母上、パーティメンバーの紹介を父上にしたいのですが父上は部屋にいますか?」


「あの人は地下で魔法の練習をしに行ってるわ。夕飯までには戻ると思うのだけど。皆さんは一度マオくんの部屋で休んでいて。ベッドは一つ爺に運ばせるから」


そう言って、いつの間にか近くにいた爺に合図をしていた。


うちのメンバーはミーナ以外が俺の方を見ている。あれだ、母上父上に引っ掛かってるな。


「お母さま、何かお手伝いすることがありましたら私も」


ミーナが全てを言う前に母親が発言を遮った。


「ミーナさんはお客様だから一緒に休んでいてね。マオくんとイチャイチャしててもいいわよ」


顔を真っ赤にしながらミーナが首を横に振っていた。そして俺の部屋にみんなを案内した。


部屋には既にベッドが追加されていた。爺は体力的に大丈夫なのだろうか。


「ササちゃん、やっぱり可愛いかった~」


「御主人さまのご家族の方はみんな素敵です」


「マオさんが母上とか父上とか、プッ、鳥肌たちました」


「魔王城凄い造りだ。この城を攻略しようと考えたら大変だ」


みんな好き勝手な発言をしている。特にカルさん、思っていてもそれは言ってはダメですよ。


俺も違和感あるんだから。


俺はみんなにここがアークザリア迷宮の地下100階であることや母親が竜人族であることなどを説明した。


リンが途中で疲れたのかベッドの上で寝転がった。寝るのかと思っていたら何かスンスンしている。


「凄い。御主人さまの匂いがいっぱいです」


マズイ。リンのステータスの状態は見なくてもわかる。ミーナがリンのところに近づいていく。


ミーナあんまり手荒なことをするなよ、と思った。


「本当だ、マオくんの匂いがいっぱいだ」


おぉい、君達何なの。


人のベッドの上で匂い嗅いでうっとりしてるのって、ちょっと引いてしまうんだけど。


「あ~あマオさん、大変だね。あの2人興奮状態でしょ。どうするのw」


「ミーナ、リン俺の側においで」


2人に声をかけると同時に俺の方に振り向き、すぐさま飛びついてきた。


「あぁ、やはり生の御主人さまの匂いは素晴らしい」


「リンちゃん、くっつき過ぎ。もう少し離れてくれないと私がマオくんに抱きつけないでしょ」


俺は2人の頭を撫でながら、ミーナにキスをした。


「んっ」


短いキスだったので少し物足りなく感じたのかもしれないが、少し落ち着いたみたいだった。


リンの方は相変わらず興奮状態だ。


そんなリンとミーナを交互に見ながら目でミーナに訴えた。


ミーナもリンの様子を見て納得してくれたみたいでコクリと頷いた。


俺はミーナの了解を得たのでリンに軽くキスをした。


「あ、御主人さま」


突然のキスに驚いたようだったけど、こちらも魔淫のスキルが効いたようで落ち着いた。


「もう、マオくんの部屋にこんなトラップあるなんて危険な部屋だよ」


「さすが御主人さまの部屋です。素晴らしいです」


トラップとか、素晴らしいとか感想がおかしい。テレビも本棚もない殺風景なただの部屋ですけど。


カルさんがオルガの隣でクスクス笑っていた。


しかしこの2人、爺が追加したベッドでなく俺が使っていたベッドに気付くなんて、俺の匂いってそんなにキツイのか。


ちょと体をクンクンしてみたが自分では全然分からない。


「おにぃ~」


ササがパタパタ飛びながら俺のところにやってきた。相変わらず妹のササは可愛い。


ミーナ、隣でジト目するのは止めて欲しい。


「本当、マオさんの妹さん可愛いですね」


カルさんもササに興味を持ったみたいだ。隣でミーナがそうでしょそうでしょと頷いていた。


俺の両腕に抱かれながら幸せそうな顔しているササだったが、オルガ以外のみんながササを抱っこしたがっていた。


ササはぬいぐるみではないぞっと思いながらもササも満足気だったので、まあ良しとしよう。


突然ササが何かに気付いたように静かになった。


「あ、パーパ帰ってきたよ。そろそろ食事だって言ってた」


おい、それは早く言わなきゃいけないことじゃないのか。親父は短気だからな、急いで食堂に移動することにした。


「むぅ、魔王と会うのは緊張するな」


「そうだね、凄い威圧感あったよね」


オルガとカルさんが親父と会うことに緊張しているようだった。


それはそうか、何しろ魔王だからな。リンは別の意味で緊張しているみたいだ。


「御主人さまのお父さんにどうやって印象良く挨拶しようか……」


……不安だ。隣で俺の手を握っているミーナも緊張しているみたいだった。


まあ、そんなに緊張しなくても今日は挨拶だけだから、いきなり戦ったりはしないしな。


ん、戦ったりしないよね? いや、それは無いわ~。


城の中で戦ったらあの母親にメチャ怒られそうだもんな。


そんなことを考えていたら、あっと言う間に食堂に着いた。


既に母親と魔王は席に座っていた。



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