第三十五話 対アークザリア精鋭-2-
〇 オルガ視点
私とガンの差ってなんだったろうな。
確かにレベル差は少しあったが、当時は全然敵わなかったな。
私に片手斧の指導もしてくれていい先輩だった。
アークザリア騎士団へ行って頑張っていると思っていたが、騎士団長にまでなっているとはさすがだ。
ただ私もカーマ国で騎士団長をし、そして勇者のパーティで経験も積んできた。
今ならガンにも負けていないと思う。
それに今日はカルの前だし、少しは恰好いいところも見せてあげたい。
最新のアダマンタイト片手斧と丸盾もあるし、絶対勝つぞ。
「オルガ、久しぶりだな。別れてから3年ぐらいか。お前もだいぶ成長したみたいだな。俺もこちらで頑張ってな。騎士団長まで登りつめた。しかし、それ故相手がいなくなって寂しく思ってたところだ。どの位強くなったかみせてもらうぞオルガ」
「こちらこそよろしくお願いします」
お互い片手斧、丸盾での戦いだ。片手斧で攻撃したら丸盾で受けて反撃する。
それの繰り返しが続いた。盾が弱いとバランスを崩されてそこから一気に攻め込まれる。
ガンの盾はオリハルコン製だった。俺のアダマンタイト製の斧攻撃を上手く吸収している。
そして俺のアダマンタイト製の盾はガンのオリハルコン製の斧の攻撃を吸収していた。
さすがアダマンタイトだ。衝撃さえほとんど感じない。
「なかなか、いい武器といい盾だな」
「自作ですよ」
「自作だと、よくそんな素材集められたな」
「この前ヘルメド迷宮の魔王を倒したときに手に入れたんですよ」
「そうか、オルガは魔王と戦ってるんだったな。そりゃ強いわな」
楽しそうにガンが攻撃してくる。だんだんと力がこもってきた感じがするが、俺の盾は問題ない。
お互いフェイントを混ぜながら緩急つけて攻撃するが全く有効打はない。
「さすがガンさん、鉄壁ですね」
「はっはっはっ、こんなの当たり前だろう。攻撃をくらってどうするんだ」
周りから見れば斧でお互いガシガシ叩き合っているだけに見えるだろう。
しかし合間に斧の技を入れたりして、お互いが隙を伺っている高度な戦闘となっていた。
〇 ミーナ視点
「いやぁ、これも凄い戦いですね。片手斧とは言え、あのスピード、威力で振り回し続けるなんて僕ではとても出来ないですよ」
治癒Ⅳで完全復活したハママさんが私の隣に来てオルガさん達の戦いについて何か言っている。
いや、距離近いんですけどこの人。
ちょっとイケメンだからといって、全て許されるわけではないんですけど。
などと思っていたら私の体がグイっと引き寄せられた。
「ミーナ、こっちの方が見やすくないか」
マオくんだ。ぐっと引き寄せられた私はマオくんに後ろからハグされているような状態だ。
うわ、恥ずかしいけど嬉しいよぉ。マオくん嫉妬したのかな。うふふ、相変わらずマオくん可愛いな。
っといけない、オルガさんの戦いをしっかり見ないと。
2人のパワーとスピードは凄まじいものがある。
瞬間的な速さでは私とかマオくん、ハママさんの方が速いのでしょうけど、あのスピードを保ったまま
ずっと攻撃しているなんて、とても体力が持たない。
ドワーフ族は持久力に長けているのかしら。
片手斧の一撃は弱い魔物なら一撃でバラバラになるくらいの威力がある。
それをお互いに小さな丸盾で防ぎ、攻撃を繰り出している。
しかも合間に技やフェイントを入れ相手の体勢を崩そうとしているけれども、どちらもそうはならない。
昔からの知り合いと聞いたから、お互い手の内も読めるのかもしれないわね。
2人の戦いは見ているこちらも凄く力が入ってしまう。まさに互角の戦いが繰り広げられている。
あ、マオくん、そんなにぎゅっとしないで欲しい。死合いに集中できなくなってしまうよ。
「バカップル……」
少し離れたところからリンちゃんの声が聞こえた。これは違うよ。
力が入っているのは死合いに集中しているからなんだよ。
と言いたかったが、マオくんの体に意識が集中していた私の顔は間違いなく真っ赤になっていたので何も言えなかった。
「オルガさん、頑張れ~」
私の声はとても小さく、オルガさんの耳には届いていないだろう。
しかし、精一杯応援したつもりなので許して欲しい。マオくんのせいだと言いたい。
〇 ガン視点
まさかアークザリアの代表が2連敗するなんて思わなかった。
さすがは勇者パーティと言ったところか、なかなかのメンバーを揃えている。
だが、戦士同士の戦いでは俺は負けん。勇者にだって負けてやるもんか。
俺こそがアークザリアで最強の戦士なのだから。
俺の相手はオルガか。奴とは数年前まで一緒の騎士団に所属していた。
俺の相手が出来るのはかろうじてオルガだけだったな。
それでも俺は楽勝だった。正直俺はカーマ国の騎士団長になって少し天狗になっていた。
アークザリア騎士団に誘われ、意気揚々と移籍したものの当時の俺より強い奴がいた。
そして俺は初めて敗北を知った。さらに努力の大切さも知ったのだ。
それからの俺は鍛えに鍛え現在の地位についたのだ。
ちなみに俺より強かったのはさっき敗北したハママだ。ハママは決して弱くない。
だが先ほどの戦いでは、相手の方が一枚も二枚も上手だった。
俺の背中にもぞくりと寒気が走った。マオとかいったアイツは強い。
俺が力比べをしたくなるほどにだ。オルガ戦が終わったらマオとやらに勝負を申し込んでみようか。
などと余裕で考えていた俺は何て浅はかなんだ。オルガは全然相手にならないと思っていた。
ところがどうだ、実際相対してみるとオルガの迫力は依然のそれを遥かに上回っている。
装備品は俺よりもいいものを使っているようだが問題はそこではない。
同じ片手斧の武器での攻撃力、スピードが互角なのだ。
俺も努力して以前より遥かに強くなっている自信がある。
どうすればオルガはこんなにも強くなれたのだ。
オルガの一撃は油断すると腕ごともってかれそうな威力がある。
絶え間ない攻撃をお互いが繰り出し、技やフェイントを混ぜても互角なのだ。
マオとやらのことを考えている余裕など全くない。必死にやらねばオルガに負けてしまうのだ。
負ける? アークザリア騎士団最強の私が負けるわけがない。
ここで騎士団長の私が負けたら団長としての面子がたたない。
体力勝負になろうと攻撃の手を休めずオルガを倒すのだ。
〇 オルガ視点
ガンとの戦いが続いている。お互い必殺の攻撃を鉄壁の守りで防ぎながら、戦いは硬直状態だ。
このままでは体力勝負になるかもしれない。以前の私だったら体力勝負なんて挑めるものではなかった。
だが、今はどうだろう。もう1時間くらいは戦っているだろうに、まだまだ腕には力が入るし動けている。
気のせいだろうか、ガンの方がわずかに動きに遅れが見える。
俺の攻撃を防ぐのが少しづつ遅れてきていた。私の方は不思議と体力に余裕がある。
別にカルに治癒Ⅳを受けているわけではないのにだ。
ん? あまり考えたくはないのだが、もしかして夜にカルから鍛えられていた効果がでてきたのだろうか。
あれは心が先に折れそうになる。
まあ、あれだけ元気にできるのなら、今も元気でいても不思議ではないのかもしれない。
そうこう考えていうちにガンのスピードが明らかに鈍ってきた。
恐らく疲れのせいだろう。疲れている振りをしているわけではないことは分かる。
私の攻撃に有効打が出始めた。ガンの斧や盾を弾き飛ばし、その隙に1撃を入れる。
ガンの鎧にダメージが蓄積されていくのがわかる。
ガンも自分の疲れに気付いたのだろう一気に勝負をつけにこようとしていた。
ガンは必殺技を出すつもりだ。この必殺技はヤバイ。溜めから繰り出される斧乱舞だ。
その一撃一撃の威力が今までのそれとは桁が違う。技を出させてはダメだ。
私は考えるよりも先に体が動いていた。
ガンの必殺の一撃の出始めにカウンターを決め、逆にこちらが斧乱舞を繰り出す。
体力を消耗していたせいかガンの一撃は私の攻撃で出る前に潰され、私はガンに斧乱舞をくらわすことに成功した。
ガンも盾で防しようとしたが、こちらの勢いを殺すことは出来なかった。
盾は弾き飛び、鎧も破壊することができた。そしてガンが尻もちをつく。
「参った。俺の負けだオルガ」
ガンのギブアップ宣言だ。
私は初めてガンに勝利することができ、無意識に叫びながら両手を高く突き上げていた。
「勝者オルガ・ノートス」
私はガンに腕を伸ばし彼を引き起こした。
「オルガ、強くなったな。以前より技、スピード全てにパワーアップしていた。特にその底なしの体力は何だ。勇者パーティとはそこまで凄いのか」
言えない。昼はモンスターを数百匹狩ったり、夜はカルを朝まで相手にしているとか、とても言えない。
「あぁ、勇者パーティにいると自然と鍛えられる」
何とかそれらしい答えしか出来ないが、嘘は言っていない。
「そうか、それなら尚更勇者パーティに加わりたかったな。俺もまだまだ強くなれる気がするな。これからも鍛えるから、またやろうな」
戦い好きのガンなだけはある。負けたのにリベンジ戦のことを考えてニコニコしていた。
今回は実力が近かったから勝負がつくまでにだいぶ時間がかかってしまったな。
私も頑張ってもっともっと強くなろうと思った。
マオたちの所へ戻るとみんな喜んで迎えてくれた。
カルだけが少し心配そうな顔をしながら近づいてきた。
「大丈夫。何もケガなんてしていないよ」
そう言ってカルを優しく抱き寄せた。カルもホッとしてくれたみたいだ。
私に抱かれながら治癒Ⅳをかけてくれた。
勇者パーティのメンバーとして恥ずかしくない戦いができて良かった。
「さあて、後はリンだけだな。リンちょっとコッチへこい」
マオがリンを呼んで何か話をしている。何だかんだ言ってマオはリンのことも好きなのだろう。
近くでミーナが不満そうな顔しているのに気づいているだろうか。
「エルフの奴隷って恥ずかしくないのかしら。しかも魔法使いじゃないし。力がないから奴隷なんかになるのだわ」
リンの対戦相手であろうエルフの魔法使いがリンを挑発していた。
「あなたは勇者の奴隷になったの?」
魔法使いがリンに近づいて聞いてくる。
「誰が勇者の奴隷になんてなりますか。私の御主人さまはマオ様です」
「マオ、あぁ、槍使いね。まぁ戦士としては強いけど魔法使いからみたら雑魚だからね。その雑魚の奴隷になったんだ。ふ~ん」
相手の魔法使いはリンを怒らせて正常でない状態のうちに攻撃しようとしたのだろう。
いや、そんな小細工に引っ掛かるリンではないだろう。と思ったのは私だけだったのだろうか。
リンは傍目から見ても凄くわかり易い状態になっていた。怒り120%の感じだ。
マオもマズイと思ったのかリンに言葉をかけていたがリンの状態は変わらなかった。
変えようとするにはマオの魔淫スキルが必要だろう。
マオはミーナの方をチラリと見たが、ミーナは首を横に振るだけだ。
そりゃそうだろう、マオも諦めてリンを送り出した。
魔法使いとリンは私達からだいぶ離れたところまで移動した。魔法のとばっちりが来ないようにだ。
「それでは、勝負開始」
アークザリア精鋭との最後の戦いである魔法使い対弓魔師の戦いが始まった。




