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第三話 彼女を救うために必要だったスキル、それは魔淫

狭いテントで闘う必要はない。俺は、バックステップしてテントの外に出る。


すると右手に剣を持った男がすぐに出てきた。


その後ろからは、剣と盾を持った男、杖を握っている男が現れた。


片手剣だけを持った男が切りかかってくる。


その動きは、スローモーションのように遅く感じた。


俺は、相手の斬り込みを余裕で避け、右手で鳩尾を突いた。


カウンターになったせいか、拳が体にめり込んだ。


「ぐぶぇ」


男は口から大量の血液を吐き出し、その場に崩れ落ちる。


「気をつけろ、なかなかやるぞ」


盾持ちの男がもう一人に呟く。じりじりと盾持ちの男が近寄ってくる。


その間にもう一人の男は詠唱を唱えているみたいだ。


こいつら俺を狙っているんだから、殺されても仕方ないな。


俺は、素早く盾持ちの男に近づき、背中の竜翼槍を手に持ち念じる。


(三段突き)


一瞬で突きを3回行う。相手も手練れだったのか盾で受ける。


しかし、その盾はあっさり持ち主の手を離れ飛ばされていた。


無防備な姿勢なままの男を俺はさらに槍で突いた。


「ばぼぇ」


体に見事な穴があいた。軽く突いたつもりだったんだが、脆いな、人間。


そんな事を思っていたら、もう一人の男から呪文が発せられた。


「・・・穿てヘルファイア(火炎球)」


ヘルファイア(火炎球)だとっ。俺の魔法のファイア(火球)の上位魔法か!


意外と速い火球が男の指から放たれた。俺はとっさに槍で火球をはらう。


すると、あっさり火球は消滅した。そんなに威力がなかったのだろうか。


とりあえず、ダメージなしで良かった。


男は、あわあわ驚きながらもその場から逃げようとしていた。


「逃がすか」


竜翼槍で突く。竜翼槍は、ぐんと伸びて男との距離を詰めて突いた。


槍は、首の後ろから男の喉を貫いた。声を出すこともできず男は絶命した。


称号:助け人 を得た。


何だこれは? 行動によって称号を得るのか。ゲームの世界みたいだな。


闘いにより多少返り血を浴びたが、ケガはない。


俺は倒した男達から霊魂みたいなものを取り出し、パクリと食べた。


魔族は基本何も食べなくても生きていける。


ただし、襲われたりして相手を返り討ちしたときは、相手の魂を取り出し食べるのだ。



いや、食べるというより吸収という表現の方が正しいか。


何故、魂を食べるのか詳しいことは知らない。


肉とか野菜は、ケガをしたときに食べると早く治るらしいが、よく、わからない。


俺の家族は朝食だけ皆で食べている。


まあ、食事とか気にはしないが、魂はあれば食べるという状態だ。魔族って変わっているな。



俺は、再びテントの中に入る。そこには、上半身裸の彼女がブルブル震えたままでいた。


俺が着ている服でもかけてあげようと近づいたが、警戒心が半端ない。


「いや、近づかないで」


「大丈夫、悪い男達はもう倒したよ」


「い、いや」


彼女は混乱したままであった。


先ほどの男共に殴られ、蹴られ、相当恐ろしい思いをしたのだろう。


しかも突然現れた俺も返り血を浴びて血だらけだし。


とりあえず、逃げ出すこともできないくらい怯えているので、俺は「大丈夫だよ」とできるだけ優しく声をかけ近づいた。


そして、彼女に口づけした。


彼女は一瞬目を大きく開き驚いていたが、だんだん、その目がとろんとしてきた。震えもだいぶ収まってきたようだ。


俺は彼女から唇を離し、上着を彼女にかけてやった。


「あっ」


少し頬を赤くした彼女は、俺のことを見つめている。魔淫の効果だろうか。


まさか、こんなに早くキスする機会があるとは思わなかったよ。


でも、精神的にも落ち着いたし、怯えたままでは可哀相すぎる。


俺は、彼女の腕や脚にある痣に手をかざし、治癒を発動する。


すると、あっという間に痣は消え、綺麗な肌に変わっていった。


「あ、ありがと」


彼女は、少し驚きながらお礼を言った。治癒魔法に驚いたのだろうか。


まあ、LvⅢだから痣くらい余裕で治せるけどな。


「私は、ミーナ・セルジロ。助けてくれてありがとうございました」


「あ、うん。別にお礼はいいよ。偶然、声が聞こえてきたから寄ってみただけだから」


「偶然って。こんな森の奥深く、しかも夜に・・・」


そう言って、彼女の動きがピタリと止まり、体が小刻みに震えてきた。


「そ、そんな。魔王の息子って・・・」


ん? そうか彼女は鑑定スキル持ちだったな。


勝手に人のステータスを見ちゃったかと思ったが、俺も魔眼使ってたからプライバシーがどうこう言えない。


「あんただって、勇者(見習い)だろ」


「ひぃっ。なんて私は運が悪いんだろう。パーティの仲間から襲われ、助かったと思ったら魔王の息子だなんて。産まれてからまだ15年しか経っていないのに。まだ全然やりたいことしていないのに、今日までの人生だったなんて」


何やら彼女は勘違いしているのか、体は再び震え始め、お尻からペタンと腰をつき、右手を前に伸ばして手を振ってわなわなしている。


ヤバイ、不謹慎だがその仕草がカワイイ。


俺は彼女に近づいていき、彼女の前でかがんで顔を見る。彼女は俺が怖いのか涙を浮かべて震えている。


「怖がらなくていいんだよ、ミーナ」


俺は彼女の肩にそっと手をまわし、2回目の口づけをした。


すると、またしばらくして彼女の目がとろんとしてきた。唇を離して、彼女の頭を撫でる。


「はふぅ」


彼女が可愛い声をだした。


「何なの。あなたにキスされると気持ちが落ち着く。それに・・」


「俺は、マオ・アーク・デモン。マオって呼んでくれ。ちなみに13歳だ。年下だけどよろしくな、ミーナ。気持ちが落ち着くのは、俺の魔淫ってスキルの効果だ。俺に惚れるって効果もあるな」


「何それ、ズルイ」


怒っているミーナも可愛いと思ってしまう。


もしかしてこれ、一目惚れなのか。いやでも、確かに魅力的だ。


髪は肩よりちょっと長めでサラサラ、少し幼い顔、胸は小さすぎず、大きすぎずちょうどいい。


腰回りも絶妙なくびれだ。外見的には、どストライク。中身はどうなんだろう。


称号を見るからには悪くなさそうだけど。


色々考えているうちにミーナから質問がきた。


「ねぇ、マオくんは何でこんな所にいるの?」


「こんな所って、ここはどこなの?」


「質問に対して質問で返さないの。ここは、アークザリア王国の最北部ベルベの森よ」


やはり、親父の野郎は俺を北部の森へ転移させたか。


「う~ん。何でここに居るかと言うと、親父に・・あ、魔王に勇者を倒して来いって言われて転移させられたんだ」


「えっ。。。」


彼女に動揺が走るがすぐに頭を優しくポンポンしてやる。


「あぅ」


「大丈夫。俺は弱いし、倒すのは勇者だから見習いのミーナは倒したりしないよ」


「えっと、私が勇者なんだけど」


「えっ、見習いだよね」


「勇者は、魔王と違って世界に1人しか生まれてこないの。だから、今は見習いだけど将来的に勇者になるのは私なの」


彼女の言葉が信じられなかった。というと何か、俺はミーナを倒さないといけないのか。


有り得ない。何でこんな可愛い人を殺さないといけないのだ。


いやいや、訳わかりませんよ。俺は人生最大のパニック状態に陥っていた。


するとミーナの手が伸びてきて俺の頭を撫で始めた。


「私、殺されちゃうのかな」


え~~~っ何これ。めちゃ気持ちいいんですけど。


もしかしてミーナも魔淫のスキルを持っているのか。いや、なんか気持ちも落ち着いてきたぞ。


「ミーナを殺すわけないだろう。こんな可愛い人殺せる訳がない」


力説してしまった。恥ずい。ミーナを見ると、両手で頬を抑えて何かくねくねしていた。


気まずい雰囲気が流れてしまったが、夜も遅いしこのキャンプ地は安全そうだったので、テントで寝ることにした。


寝袋みたいのに入って寝たので、大きなミノムシが2匹いるような状態で朝までぐっすり寝た。



俺が目を開けると、ミーナはまだ眠っていた。しばらくして、ミーナが目を覚ます。


「あ、お、おはよう」


俺の姿に一瞬驚いたようだが、すぐに状況を把握したのか朝の挨拶をしてきた。


「おはよう、ミーナ」


「ミーナって呼び捨てだよね。わたしマオくんより2つお姉さんなんだけど。さん付けしなさいよ」


「無理。ミーナ年上かも知れないけど、可愛いから」


「バ、何言ってるの。もう・・」


ミーナは顔を赤くして黙ってしまった。


顔を赤くしているミーナを見るのもいいが、さて、これからどうするか。


「ミーナは、何でこんな森の奥まで来てるの?」


ミーナは、革の鎧を装備しながら返事した。


「私、15歳になって勇者(見習い)になったから、魔王討伐のために鍛えないといけなくなったの。それで、街のギルドで冒険者を募ってレベル上げをしようとしていたんだ。初心者向けのいい狩場を紹介してくれるからって、しかも無料で。そうしてパーティ組んで来たのだけれど・・」


お人よしすぎる。でも可愛いからOK。


「あ、そう言えばあの人たちは」


「外で死んでるよ」


「そ、そうよね」


「俺に武器向けて殺しにきてたからな。さすがに無抵抗だったら俺も死ぬわ」


ミーナも何か思うところがあるのだろうが、俺があいつらを倒していなかったら、ミーナもどうなっていたかわからないからな。


俺は外に出て死体を蹴飛ばして視界に入らないようにしておいた。


ミーナは着替え終わって外に出てきて、スープを作っているみたいだった。


「マオくん~。こっちにおいで、スープしかないけど食事にしよう」


特に腹が減っているわけではないが、せっかくのお誘いだ。ミーナのスープをいただこう。


「う、うまい」


ただのスープのはずなのに、魔王城で飲んでたスープより旨いのは間違いない。


「もう、マオくん大げさ」


そう言いながらもミーナも満更ではない様子だ。しばらくして食事も終わり、ミーナに聞いてみた。


「なぁ、ミーナ。俺も討伐対象になっているのか」


「ううん。マオくんは魔王の息子だし、私の命の恩人だから倒そうとはしないよ。倒すのは魔王だけ」


そんなミーナの返事が嬉しくて、つい言ってしまった。


「じゃあ、親父(魔王)見てみるか?」


「えっ?」

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