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第二十八話 ヘルメド迷宮四天王-2-

〇 リン視点


御主人さまが、私にわざわざ声をかけてくれた。


私と同じ職業のレベル99だなんて、強敵に決まっている。


恐らく御主人さまは、それでも私に耐えろと言っているに違いない。


後から駆け付けてやるからな、という意味が含まれているのだろう。


御主人さまの奴隷として、その期待には応えないといけないでしょう。


「あら、チビッコ一人で私の相手をするつもりかしら」


相手の魔族からしてみたら、私なんかまさに子供なんでしょうけど、ただの子供でないところを見せてやります。


50本程の魔法の矢が私を襲う。私も同じくらい矢を発現し全てを相殺する。


「あらあら、もしかして貴女も弓魔師なの? 凄いわねぇ、そんな小さくてそこまで矢を扱えるなんて」


今の攻撃でダメージを与えることができなくて魔族も驚いたようだが、それでも全然余裕の表情だ。


すぐにクイックショットで矢が5本ぐらい飛んできた。


速い。こちらがクイックショットで迎撃する余裕などはない。


私は必死に矢を避けるだけ。それでも1本腕を掠めてしまった。


「運動神経も中々よね。私のクイックショットを避けれるなんて」


顔をニコニコしながら楽しんでいるようだ。


残念ながら、私は御主人さま以外にいたぶられる趣味などない。


御主人さまはいい。いや、ぜひしてもらいたい。


おっと余計なことを考えている余裕はなかった。こちらからも攻撃しないと。


一度に出せるだけの矢を出して相手に攻撃する。80本以上の矢が相手を襲う。


しかし、相手も矢を出して、先ほど私がしたように矢を相殺していく。


それどころか、相手の出している矢の方が数が多い。何本かはこちらに向かってくる。


何とか避けながら、相殺しながらでやり過ごす。


マズイ。分かってはいたが、レベル差による攻撃力は敵わない。


あと、気付いたが1本1本矢に込められている魔力の量が相手は一定量なのに対し、私の矢にはムラがある。


これは、上手く使えばいけるかも。今度は50本ぐらい矢を出した。


そのうち1本には多量の魔力を込めてみた。


そして魔族を攻撃したところ、魔族は同じように矢で相殺しようとした。


だが、魔力を込めた1本だけが相殺されずに相手に向かった。


まさか相殺に失敗するとは思ってなかったのだろう。魔族は、向かってくる矢を避けようとした。


その矢は魔族の頬を掠るのが精一杯だったが、魔族の頬からは血が滴り落ちる。


「よくも私の顔に傷をつけてくれたわね」


顔の掠り傷が何だと言うの。私は、何本か矢を受けてしまったから、結構な出血量ですけど。


相手がメチャクチャな数の矢で攻撃してくる。


こちらも矢を出して相殺するけど、10数本は相殺しきれず向かってくる矢があるので必死に避ける。


あぁ、やっぱり少しキツイかな。少しずつだが、ダメージを与えられていく。


私も少し体術やら剣術を学んでおく必要があるのかな。


「くらえぇ~」


御主人さまの声がした。私の目は反射的に御主人さまを追っていた。


戦闘中だというのによそ見するなんて、危ないことしてしまいました。


でも、御主人さま見ていると良い事思いつくんですよね。


今回私は目を閉じた。その瞬間目を閉じているにもかかわらず、周りが真っ白になった。


「え? 何これ」


魔族も動揺しているみたい。こんな機会を逃すわけがない。


私は目を開けて魔族を見た。魔族はキョロキョロしているだけだった。


全力の矢を発現して魔族を攻撃する。魔族は、周りが見えていなかったのだろう。


私の矢はことごとく魔族に命中した。それは、絶命させるに十分な数の矢だった。


御主人さまのおかげで、またしても強敵を倒すことが出来ました。


さすが御主人さまです。私は愛しの御主人さまを見つめながら、その場に立ち尽くしていました。



〇 ミーナ視点


今回の四天王は、カーマの時よりも強敵だ。


転移で95階に降りたとき、鑑定スキルで相手のステータスを確認した。


やはり4匹ともレベルでは、私達より上の魔族だった。


その中でも2番目に強そうな相手と戦うようにマオくんに言われた。


マオくんが一番強そうな魔族を相手するみたいだ。


もう、一応私勇者なんだから、もう少し任せてくれてもいいんだけどなぁ。


まあ、ちゃっちゃと倒して、オルガさん達の手伝いしないといけないかな。


最初から本気でいかないとね。私は魔族との間を詰めて、はやぶさ斬りを相手に叩きこむ。


ジャンプだけで距離を詰めてくるとは思っていなかったのだろう。


魔族の反応が遅れて攻撃がヒットした。魔族が地面に落ちる。


「くっ、やるねぇ。まさか攻撃をくらうとは思わなかったよ」


私は確かに魔族の片腕に斬りつけた。そして深手を与えたはずだった。


しかし、魔族の傷は徐々に治りかけている。自動回復スキルのせいね。


これはライトセイバーで倒すしかないか。剣を構え隙をうかがっていると魔族が魔法攻撃をしてきた。


「氷の刃よ、人間どもを滅せよ」


凄い数の氷のナイフが私を襲う。剣で振り払うが、何本かはくらってしまう。


でも、そんなの関係ない。私だって回復スキルを持っているのだから。


氷のナイフを捌き終えると、魔族は知らぬ間に近寄っていて剣で攻撃してきた。


私も剣で対応するが、相手の剣のスピードが早い。何だこれスキルなのかな。


それこそ、相手の剣に斬られないようにするのが精一杯だった。


しかし、不思議なもので、しばらく魔族の剣を受けていると剣速にも慣れてきた。


これでこちらからも攻撃ができる。今度は立場が変わって私の剣を魔族が受ける状態だ。


身体が軽く感じる。私の剣を受けていて、魔族はバランスを崩して尻もちをついた。今だ。


「ライトセイバー」


私の剣から発せられた光が魔族を貫く。そして魔族の体が光の粒子となって消えていく。


よし、勝てた。他の人のフォローに回ろうと思っていたらマオくんの声が聞こえた。


「くらえぇ~」


そして周りを光が包む。いや、そんな優しいものではない。白の世界だ。


迷宮の中が真っ白になっている。あれ? 目おかしくない?


白い世界が終わらない。完全に視力逝ってます。マオくん何やったんだろう。


自動回復スキルで回復するのを待つしかないか。私はその場に立ち尽くしていた。



さてさて、戦いでこんなにワクワクするのも久しぶりだ。


やはり、魔族の血が騒ぐのか強敵との戦いは興奮するようだ。


しかも、俺が相手するのは、同じJOBのレベル99。


同じJOBであることさえ珍しいのにレベルが俺以上だ。


まるで、親父を相手にするかのような高揚感だ。


そうとは言え、敵は俺と同じくライトスマッシュがある。


流石にあれをくらったら俺でもヤバイ気がする。まあ、今は人間に擬態しているから俺が魔族とは思われないだろう。


魔族にすっと近づきファイアを放つ。魔族は余裕で氷魔法を発動し炎を防ぐ。


しかし、ファイアの魔法とともににジャンプした俺は、魔法をガードされたと同時に竜翼槍で敵をぶっ刺した。


その攻撃は、魔族の槍で防御されたが、バランスを崩し地面に落とすことはできた。


俺も自然落下で地面に着地する。魔族との間合いは共に槍の間合い。


槍での攻撃がお互いに行われた。早い、さすがレベル99だ。


攻撃の速さなら魔族の方が上だ。


しかし、竜騎士である母親と訓練してきた俺から見れば対処できる速さだった。


母親は、もっと速いからだ。それでも防御で精一杯で攻撃が出来ない。


俺は、後方へジャンプして槍の間合いを外した。


「ブリザドでもくらえ」


間合いをとれたかと思えば、すぐに魔法攻撃が飛んできた。中々威力がありそうだ。


すかさず、炎の壁で氷魔法を防御する。壁に無数の氷の刃がぶつかったが、何とか防ぐことができた。


お返しと槍で攻撃する。


相手との距離は、お互い槍が届かない微妙な距離だが、竜翼槍には距離は関係ない。


魔族も届かないと思われた槍が伸びて攻撃してきたことで一瞬反応が遅れて、俺の攻撃が魔族の体を掠めた。


その後も俺は、相手の槍が届かない距離で槍の連続攻撃をしかけた。


今度は魔族が防戦一方となった。しかし有効打は、ない。魔族は、宙に逃げた。


先ほどよりも少し高く飛んだ。ジャンプで届かせないつもりなのだろう。


だが甘い。俺は飛べる。魔族だからな。隠していた角と翼を出して、魔族と同じ高さまで飛ぶ。


魔族は、俺を見てびっくりしたようだ。


「お、お前は魔族だったのか。な、何故人間の肩をもつのか」


同じ魔族なのに人間の味方をしていたのが逆鱗に触れたらしい。魔族は必殺技の準備をした。


というか、俺は気付いたのだ。調子に乗って正体見せたから魔族ってばれた。


だったら、必殺技つかうよね。魔族に効くやつだもんね。やつのライトスマッシュはレベル80。


実は俺のスキルは70まで上がっている。レベル的には少し負けているが撃ちあったらどうだろう。


なんて悠長に考えてはいられない。俺も撃たなきゃヤバイのは確かだ。


「くらえぇ~」


俺も渾身のライトスマッシュを繰り出す。今回は放出タイプだ。魔族もそうだしね。


2つの光の塊がお互いの中央でぶつかり合う。


その時、景色は白くなった。真っ白い部屋にいるような感じだ。白以外何も見えない。


まずい、もしかして威力負けしてライトスマッシュくらうパターンなのか。


くらったらマズイけど、どこに避ければいいのかわからない。


何しろ周りが真っ白だから、どこに逃げても無駄なような気がする。


しかし、しばらくしても身体に異常はなかった。白い景色は、ほんの1、2秒の出来事だったのだろう。


すぐに周りに景色が戻ってきた。


俺は無事だ。魔族は……いない。恐らくレベルが同じでも威力は、俺の方が上だったのだろう。


どうやら魔族を消し去ったようだ。さすが俺。


隣を見るとミーナがボォっとしながら突っ立ていた。何て無防備なんだ。


ミーナ危ないじゃないかと思ったけど、ミーナの相手はすでにいないようだった。


あ、ミーナはもう倒していたんだ。ミーナの相手も結構強いと思ってたんだけどな。


ミーナ恐るべしだな、俺より早く倒しているなんて。ミーナの強さにまた恐怖した。


そして、その隣のリンを見ると、魔法の矢で魔族を串刺しにしていた。


リンの相手も同じJOBでレベル99だったのに圧勝とは。一体どんな戦い方をしたのだろう。


おっと一番フォローしないといけないオルガ達は、ん、オルガが魔族の首切ってるな。


やるなオルガ。オルガでは相手出来ないと思っていたが、倒すことが出来るなんて、うちのパーティメンバー強過ぎだな。


俺はみんなに感心しながらミーナの近くに降りた。


「もう、マオくん。いきなり変な攻撃するのやめて。白い光で視力が逝ってしまったのよ。相手を倒していなかったら危なかったんだから」


ミーナに怒られた。変な攻撃ではないのだが、ライトスマッシュのぶつかり合いで発生した白い光が視力を奪うほどだったらしい。


ん? それでは他のみんなは大丈夫だったのか。すぐにリンのところに駆け寄って確認してみる。


「リン、急に眩しくしてすまなかった。大丈夫か?」


「大丈夫です御主人さま。私は御主人さまを見ていましたから、咄嗟に目を閉じることが出来たのです。おかげで無防備な敵を倒すことができました。さすが御主人さまです」


おい、戦闘中に俺を見ているとか、そんな余裕はないはずだろう。全然大丈夫じゃねぇよ。


しかも、うるうるした目で俺を見るな。


後でお説教予定のリンをスルーしてオルガ達のもとへ行った。


「オルガ、急に眩しくしてすまなかった」


「ん? マオどうした。別に眩しくなんかなかったぞ。ん、そうかカルの結界か」


「ピンポーン。私の黒い結界で光を遮りました。ちなみに魔族に攻撃されても跳ね返すぐらいの結界の強度にしておきました」


「カルさんも俺のことを見ていたのか?」


「ん~マオさんを見ていたというか、私はパーティメンバー全員を見ているよ。誰がピンチになってもすぐにフォローできるようにするためにね」


さすがカルさんだ。俺だけでなく、ミーナやリンにも気を配りながら戦闘しているんだ。


どこかの奴隷エルフとは大違いで全然安心できるな。


なんか結果オーライの戦いだったけど、終わってみれば圧勝だな、良かった、良かった。


ん、一人怯えている人がいた。ラーシャだ。初めての魔族との戦いに恐怖したのだろうか。


「マ、マオさんが魔族になっている……」


あ、恐怖のポイントはそこでしたか。


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