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第二十四話 フラグを折る人達

朝食を終えると俺たちはすぐにヘルメド国へ行くことにした。


ミーナの両親に別れの挨拶をし、昨日木こりをした森を更に西へと進んで行った。


もともと国境付近の町であったため、ヘルメド国の領地にはすぐ入ったが、道なき道を進んで行くので、進行速度はすこぶる遅い。


そして魔物とちょくちょく遭遇する。


リスの魔物だったり、ネズミの魔物だったり小動物系の魔物が多い。


数も10~20匹ぐらいが同時に出てくる。


普通の人間でも1,2匹なら大丈夫だろうが、これだけいると災害と何ら変わらない脅威となる。


しかし、俺たちのパーティから見れば蟻のような敵だ。


新しい武器で張り切っているオルガがほぼ一人で魔物をやっつけてくれている。


他の者は暇なので、周りの植物で食用の物がないか探しているほど余裕がある。


「本当に魔物が多いですね」


カルさんが、時々オルガを回復しながら呟いた。


「マオくんが言ったとおり、確かに魔物が多いね。ヘルメド国の人たちは大丈夫なんでしょうか」


「まとまっているところが厄介だな。俺たちなら気にならないけど、普通なら騎士団とかが相手する数だしな」


「オルガさんが調子に乗っているから、私が御主人さまに良いところを見せられないのです」


みんな好き勝手言いたいことを言いながら進んでいった。


魔物はもうオルガ任せなのだ。


斜面を歩いたりするからかミーナがバランスを崩しそうになる。


俺は手を差し伸べてミーナの手を握る。


「大丈夫かい?」


「うん。マオくん、ありがとう」


ミーナは嬉しそうに笑顔を向ける。そして握られた手は離さない。


もちろん俺も離すつもりはない。2人で手を繋ぎながら進んで行く。


これなら険しい山道も楽しい山道に変わる。


わかっている。リンがいることは百も承知だ。


だが、リンはカルさんに捕まっていた。


カルさんが気をきかしてくれたのだろう。


リンの手を握りながら進んでいた。ナイスだカルさん。


「マオくん、約束まだかな」


ミーナが俺に約束の件をせがんできた。約束、それはデートの約束のことだろう。


俺ももちろん早く約束を果たしたい。


「ヘルメド国で落ち着いたら、デートしてみる?」


俺がそう答えると、ミーナの顔が更にパアッと明るくなり良い笑顔になった。


ミーナは声を発するまでもなく、大きく頷いた。


「ミーナ、可愛いよぉ」


思わず心の声が口から出ていた。仕方がない、ミーナが可愛いから仕方がないのだ。


ミーナの顔がすぐさま真っ赤になっていく。


「もう、マオくん。好き」


ミーナが俺の頬にキスをしてくる。後ろからリンの声が何か聞こえてきたが気にしない。


興奮してしまった俺はミーナの唇にキスのお返しをする。


唇と唇を軽く合わせるだけのキスだが、時間は長く。


カルさんが子供にはまだ早いとか言いながらリンを抑えてくれているようだ。


カルさん、マジ女神。


「あんっ」


長めのキスの後ミーナが艶めかしい声を出す。


「マオくんに魅了されっぱなしだよぉ」


お互いさまだけどね。俺はニッコリ笑ってミーナを見つめる。


そんな甘々な空間を作っている俺とミーナの近くでオルガは、ガハハと笑いながら魔物を次々と倒してくれていた。


悪いなオルガ、雑魚は任せるって決めたから。


その後もミーナとイチャイチャしながら進んで行き、少し開けたところでキャンプすることにした。


普通なら寝ずの番が必要な場所だったが、カルさんの結界スキルレベルが上がったおかげで、結界を張れば安全となるらしい。


カルさんが寝ていても結界は張ったままだそうだ。


一体、いつ、どこで確認してたんでしょうね、カルさん。


オルガがカルさんの結界に太鼓判を押していた。


さて、寝袋はいつもの大きめのやつだ。今日はみんなゴロ寝体勢だ。


オルガとカルさんは、それぞれの寝袋で寝ている。オルガもホッとしていることだろう。


リンがいつも以上に俺の腕を掴んでいる。昼間相手にしなかったのが寂しかったのだろう。


俺とミーナは手を握りながらニギニギしていた。


「明日も早いから、おやすみ、ミーナ」


「うん。マオくんもおやすみなさい」


そんな声を掛け合っていると反対側からいつものパンチが飛んできた。


ゴツ、ゴツ。ん? 音がいつもと違うし、何かダメージくらっている気がした。


リンは普通に素手で殴っているだけなのに。レベルが上がったせいか、攻撃力も上がったのか。


ちょっと痛く感じるようになったのでリンにも声をかけた。


「リンもおやすみ」


「ん、御主人さまおやすみなさい」


リンは満足そうに答えて、殴るのを止めてくれた。良かった、これからは少し気を付けよう。



次の朝、朝食はミーナが主になって作ってくれた。


有り合わせの物で作った食事だったが、美味しかった。料理スキル恐るべしである。


今日は、リンが張り切っていた。


昨日はオルガに全ての敵を取られていたので、積極的に魔法の矢で攻撃してくれていた。


オルガは全く出番なしである。2回ほどリンが魔物の群れを討伐したところで俺たちは街道に出た。


「よし、後は道なりに行けば村なり、街に着くだろう」


走ることも出来るようになるので、進行速度も期待できる。


進むべき道がハッキリしたので、俺たちは走る。


疲れた回復してもらって走る。それの繰り返しだ。


しばらくすると、前方に魔物の気配がした。


「キャーッ」


女性の叫び声が聞こえた。前方に馬車らしきものも見えてきた。


急いで助けにいかないと大変だ。俺が飛び出そうとするとミーナとリンから声をかけられた。


「マオくんは、待ってて」


「御主人さまは、ここでゆっくり休んでいてください」


そう言い終わらないうちに2人は飛び出していた。


何か前方で剣を振るうミーナの姿と魔法攻撃をするリンの姿があった。魔物は瞬殺だ。


2人は御者と話をして、こちらに戻ってきた。


馬車はそのまま何事もなかったかのように進んで行った。


何なんだ、ミーナも戦闘していなかったから体動かしたかったのか。


その時、こちらに向かってきている2人の会話が聞こえてきた。


「危なかった。やはり、美人で巨乳の女性だったね」


「本当です。これ以上御主人さまがフラグを立てたら回収が大変すぎます」


「「早めに気付いてよかった」」


えぇ~。フラグへし折りに行っただけなの?


確かに異世界転生して俺ツエェ的な主人公ってハーレム展開とか多そうだけど。


2人で潰すとか、これ以上女性は増えないってことなのか。


俺はミーナ一筋だけど、巨乳で美人は少し気になるよ。


てか、これ以上パーティメンバー増えないでしょ。俺たちのレベルについてこれる人はいないだろうし。


2人は何事もなかったかのように俺の前に戻ってきた。俺は2人に聞こえるようにボソっと呟いた。


「巨乳で美人の女性を助けてくれたんだね」


「……」


ミーナはだんまりだ。気のせいか汗もかいているようだ。


「…御主人さまは、エスパーですか?」


俺たち3人はその場で何も言わず固まっていた。


「おいおいマオ。こんなところで見つめ合っていても仕方ないぞ。早く先に行こうか」


「あらあら、女性がもう一人増えるのかと思ってたのですが」


「「カルさんっ」」


オルガの場の空気を読まない発言とカルさんの軽口で俺たちは、また進むことにした。


「ミーナ、フラグ折らなくても俺はミーナが一番だよ」


「わかってるけど、これ以上近くに女性がいると私の心が安定しない」


俺はミーナの頭を撫でながら一緒に走った。そして、ようやくヘルメド国内の街フラウに着いた。


まずは、冒険者ギルドへ行き、次に宿屋を探した。


いくつか宿屋があったが、少し高そうなところにした。


散々倒した魔物の素材等を換金したから結構なお金になったからだ。


宿屋に入るとキレイな女性がミーナに近づいてきた。


「先ほどはどうもありがとうございました」


なるほど、巨乳で美人だ。リンの拳が俺の背中を叩く。だから痛いってば。


名前:ラーシャ・ヘルメド

種族:人間(女性)

スキル:二刀流Lv6、身体強化Lv5 

称号:剣の踊り子

JOB:双剣士Lv8

状態:平静


こっそり魔眼でステータスを確認してみる。ん? ヘルメドって名前は国王関係か。


もしかして国王の娘とかなんかな。


双剣士Lv8か。小さい魔物3,4匹ならいけそうな感じだな。


でも、この辺りは10匹以上で襲ってくるから、ちとそのレベルでは厳しいか。


ラーシャという名の女性は、お礼を言うとすぐに部屋の方へ戻っていった。


俺には一瞥もせずにだ。2人のフラグ折りは見事だった。

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