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第二十三話 オルガ先生ごめんなさい

次の日の朝、朝食を摂った俺は昨日カナムさんに言われたとおり木こりの手伝いをすることになった。


「私も御主人さまに付いていきます」


リンは本当にブレない。


果たしてミーナと2人でデートできる日はあるのだろうか、少し心配になる。


「わたしは、町の鍛冶屋さんの所へ行こう」


「どうぞ、お好きにしてください」


オルガは、町にひとつだけある鍛冶屋に行って、何か武器か防具を作成したいのだろう。


カーマ迷宮に潜ったときに貴重な鉱石もいくつか手に入れてたみたいだし、鍛冶スキルの高いドワーフ族の血が騒いでいるに違いない。


カルさんは、それが長い時間を要することを察してか、オルガ一人で行くように勧めていた。


ミーナは俺に付いてきたがっていたが、ミルリさんに捕まってしまっているようだ。


リンが悪い顔をしているような気がした。


俺とリンは、カナムさんに案内されて近くの森に入って行った。


ここは、もう隣国のヘルメド国との境ギリギリのところだろう。


カナムさんが、1本の木の前で止まり、持っていた斧で切りつけ始めた。


1回切りつけたら、反対側に回り切りつける。


それを数回繰り返して木の一部を細くすることにより、木を倒していくのだ。


15mほどの長さの木だろうか。


カナムさんは、倒した木の枝を丁寧に切り取っていった。そうして丸太が完成する。


この丸太を家まで運び、大工さん等に丸太を売るのだ。


いつも一人で丸太を運んでいるので、体力的には1日2往復が限度らしい。


それでも毎日木を切っているので、その量は膨大だ。


「どうだ、マオくんも切ってみるかね」


カナムさんは、持っていた斧を俺に渡してきた。


「一度に深く切りつけるのではなく、少しずつ木を細くして倒していくといい」


わざわざ俺にアドバイスをくれるカナムさんだったが、1本切るのに20分とか時間かけるのは正直ダルい。


数回切りつけて木を倒そうと俺は考えた。


斧をしっかり握って、フンっと思い切り斧を振ってみた。


……何てことでしょう。


木はキレイに切り取られ、ダルマ落としみたいな感じで一部がすっぽり抜けた状態のあと、バランスを崩して倒れてきた。


「い、一回で木を倒すなんて。やはり、魔族は人間とは比べられないほど力持ちなのか。これでは、ミーナの体が破壊されてしまうかもしれない」


お~い。確かに力は人間より遥かにあると思うけど、ミーナに触るときにはそんなに力込めないよ。


というか力を多少込めてもミーナ防御高いから大丈夫そうだけどね。


「さすが私の御主人さまです。ミーナなんて粉々になればいいのです」


リンはウンウン頷いていた。お前はいったい何しにきたんだ。


そんなことはないですよとカナムさんに説明しなくてはならなくなっただろう。


次に俺は見よう見まねで枝を切り落としていた。


これで同じくらいの長さの丸太が2本出来上がった。


後はこれをミーナの家の裏にある倉庫まで運ぶだけだ。


そこでリンが何かに気付いた。


「御主人さま、魔物が多数接近しています」


「魔物だと、こんなところで魔物なんて聞いたことがない。いや、まてよ最近噂で聞いたかな。あれは本当だったのか。急いで戻らないと危険だ。マオくん達、丸太はそのままにして戻ろうか」


カナムさんは、魔物の接近に怯えているようだ。


カナムさんなら猪くらいの魔物と1対1なら勝てそうな気もするが、多数相手にするのは、確かに無理だろう。


「大丈夫ですよカナムさん。ここはリンに任せてみましょう」


俺の感覚でも魔物の接近を感知した。


10匹ほどの弱い魔物だ、リンなら余裕だろう。


「え、リンちゃんて子供なのに強いのか」


「リンも正式な勇者パーティの一員ですよ。強いに決まってます。なあ、リン」


リンは俺に任せられたのが嬉しかったのか、胸をポンっと叩いて魔法の矢を数十本発現させる。


それを見てカナムさんがおぉっと声を出して驚いている。


魔物は、犬の魔物だった。数は11頭。


リンの魔法の矢が一斉に魔物に降り注ぐと犬の魔物は、あっという間に殲滅された。


「す、すごい。リンちゃんもこんなに強いのなら、ミーナの旅も安心だ。ミーナの事をよろしく頼む」


「ミーナは強い。だから私の助け要らない。私は御主人さまだけ守る」


そこは、嘘でも任せてとか言ってやれよリン。


「まあ、そんなこと言ってもリンは、ミーナのこと助けたりするよな」


俺は、リンの頭を撫でながら、視線を送る。


わかるよな、これでわからないのならリンは捨てる。


「御主人さまの言うことは絶対。ミーナも助ける」


よしよし、俺はリンを褒めてやった。リンは褒められて機嫌を更に良くしたようだ。


カナムさんもリンがミーナを助けると聞いて一安心している。


「さて、他に魔物が来ないうちに丸太を運ぶとするか」


カナムさんに言われて俺は1本を肩に担ぎ、もう片方の手でもう1本の丸太の端を持った。


もちろん反対側の端を持っているのはカナムさんだ。


「本当に凄い力だな。将来木こりになったら、1日で10本くらい運べそうだ」


カナムさんは、木こりとして俺の評価をめちゃめちゃ上げてくれた。


しかし、俺は木こりになる予定はないので、愛想笑いで返すのが精一杯だった。


「御主人さまは将来魔王になる男」


こら、リン。小声でもそんなことを言ったらあかん。


両手が塞がっているから何もできないのがツライ。


幸いにもカナムさんには聞こえていなかったようだ。


丸太を無事倉庫まで運び終わったが、時間はまだ十分にある。


「カナムさん、もう一度行きましょう」


「お、おぉ。マオくんは木こりに目覚めたか。木こりはいいぞ」


カナムさんは何か勘違いしていたが、俺はスルーを決めてまた森に向かった。


先ほどと近い場所で、木を切り倒す。俺が斧を振るうから、あっという間に2本の丸太が完成だ。


また、その2本を倉庫まで運び、再び森へ向かう。


切り取った枝はリンが運んでいた。そしてまた丸太を2本作成する。


「御主人さま」


リンが言おうとしていることはわかる。


「カナムさん、また魔物が近づいているけど、いつもこれだったら大変じゃないですか?」


「な、なにぃ。魔物なんてこの辺では本当に見かけないはずなんだが、今日はどうしちまったんだ」


しばらくして、また犬の魔物が現れた。20頭ぐらいだろうか。


俺は槍でサクサク倒していく。あまりの討伐の早さにカナムさんも固まっている。


「マオくん、君も本当に強いんだね。これならミーナのことを守るっていう言葉を信じてもいいかな」


あれ? そこ信用されていなかったのか。お父さんどんだけですか。


「御主人さまは最強です。私など足元にも及びませんよ」


先ほど派手な魔法で魔物を瞬殺したリンが俺を持ち上げる。


それを聞いてカナムさんも俺の強さを信じてくれたみたいだ。


まあ、ミーナも結構強いから魔物なんて相手にならないけど。


俺たちは丸太を倉庫へ運んで今日の仕事を終えた。



椅子に座って休憩していると、ミーナが冷たいお茶を持ってきてくれた。


お父さんの前には最後にお茶を置いた。まだ、少し怒っていそうだ。


「カナムさん、さっき言っていた噂って何ですか」


「ん、あぁ、あれか。実はヘルメド国から来た冒険者がこの前この町に来てな、最近ヘルメド国に魔物が大量に発生していると言っていたんだ。その冒険者のレベルは、あまり高くなかったので隣国に逃げてきたんだよ」


「魔物の大量発生ですか」


嫌な予感がするな。カーマ国の時みたく魔王絡みとかじゃないだろうな。


ちなみにさっき倒した敵の状態を見たが、洗脳ではなかったな。凶暴だったが。


「マオくん、次はヘルメド国に行って様子を見てみましょう」


ミーナが次の目的地を提案してきた。確かに魔物の大量発生は気になる。


オルガが戻ったらみんなで検討してもいいかもしれない。


「オルガが戻ったらみんなで話し合ってみようか」


「オルは今日鍛冶してるから遅いけどね~」


カルさんが、パンケーキのようなおやつを持ってきながら言った。


オルガは何かを作っているらしい。確かにオルガが戻ったのは、夕飯を終えてしばらくしてからだった。


オルガが手にしていたのは、片手斧と盾だった。オリハルコンで作成したらしい。


武器種:風雷の斧(片手斧) 雷属性の風を纏い、雷ダメージを付加する。


防具種:城壁の盾(片手盾)

スキル:防御結界(強)、ダメージ吸収(大)


……何かトンデモない武器防具作成してきたな。オルガがパワーアップした。


鍛冶レベル50で自動的にスキルが付与され、二つ名も決定されるらしい。


ヤバイな。今度ミーナの剣と俺の槍も作ってもらいたいものだ。


俺たちはその後話し合って、まずはヘルメド国王に会いに行くことに決めた。


今夜は、ミーナがどうしても俺と同じ部屋で寝たいと両親に駄々をこねていた。


もちろんリンも便乗していた。


「お母さん、お父さん、心配しなくても大丈夫ですよ。いつもこの3人は大抵一緒に寝てますから。もちろん問題なんて起きていません」


カルさんから、フォローらしきものが入った。


カルさんはオルガと一緒がいいのだろう。


「まあ、確かに3人なら大丈夫なのかしら。お父さん、どう思う?」


「お、私は娘を信用しているから、き、気にしないぞ」


いや、めっちゃ気にしてるように見えますけど。


「若いリンのいる前で変なこととかできませんよ。そこは信用してください」


本当は手を出したいのだが、小さい子の前では真面目ですよアピールをしてみた。


実際手は出していない。


「マオさんが、そこまで言うなら信用してみましょうか。どうせ普段は3人一緒ということなんでしょうから」


「さすが、お母さん理解ある。信じてくれて嬉しいよ」


ミーナ大喜びである。代わりにオルガ大ショックである。


わかるよオルガ、今日は鍛冶でお疲れなんだろう。


治癒Ⅳで回復されて、後は結界魔法か何かで防音か。


ごめん、俺はお前を助けてあげることは出来ない。だから、そんな恨めしそうな目で見ないで欲しい。


俺はミーナと寝る方がいいのだから。


俺は今日はミーナの元自室で寝ることになった。


何だかミーナの匂いがする部屋は、入っただけで気持ち良くなりそうだった。


「ミーナの部屋凄くいい匂いがする。これだけで幸せになってしまうよ」


「も、もうマオくんたら。いつも変なこと言う」


そう言いながらも満更ではないミーナがまた可愛い。


「この部屋はドブ(ミーナ)臭い。不快」


リン、そんなこと言ったら追い出されるよ。って本当に追い出されたよ。ミーナ強いよ。


「こんな扉なんて紙同然」


扉の向こう側でリンが不穏なことを言っている。


「リン、待ちなさい。今、俺が開けてやるから」


何事か起こる前に俺は、扉を開けてリンを招き入れた。


リンは嬉しそうに俺に抱きついてきた。


ミーナの機嫌が悪くなるのを感じる。俺はこの後ミーナの機嫌もとらないといけないのだ。


オルガの事などすっかり頭から抜けていたのは仕方がない。


翌朝、オルガから恨めしい視線を感じた時に少しだけ反省した。


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