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第二話 可愛い勇者(見習い)を発見

明日から勇者を討伐しに行けだと、突っ込みどころ満載だろ。


「父上、勇者は15年前に倒したのではないのですか」


「ふむ、確かに儂が倒した。だがな、勇者が死ぬと、すぐに次の勇者が生まれるのだ」


そうなのか。勇者、凄ぇ~。無限増殖なのか。倒してもキリがないだろう。と思ったところで気付いた。


ん?でも魔王も同じなのか。


「父上、勇者は、我がアークザリア迷宮の最深部で迎え撃つのではなかったのですか」


「ふむ、儂もそこで勇者を倒したな。しかしな、そこまで奴らが来るのに何年かかると思う?下手したら100年ぐらいかかるぞ」


いやいや100年も来ないのなら、ほっとけばいいのでは。


「どうせ奴らは魔王を殺しにくるのだ。殺られる前に殺るべきじゃろ。それに今なら大して強くないはずじゃ」


親父が行けばいいんじゃないだろか。俺だってJOB取得したばかりで弱いはず。


「でも、勇者がどこにいるのかもわかりませんし、この迷宮で鍛えた方が良いのではないでしょうか」


「ええぃ、うるさい。魔王家の者は13歳になったら勇者討伐に行くのじゃ」


いや、親父ずっとここに居たよね。息子に厳しすぎではないだろうか。


俺が何か言う前に親父は姿を消した。転移魔法か何かで移動したようだ。


ああなったら、言うこと聞かない。俺はあきらめて、明日からのことを考えることとした。


まあ、勇者はのんびり探せばいいだろう。


次の日、朝から妹のササ・アーク・デモンが俺の部屋に来た。まだ4歳で可愛い妹だ。


「にぃ、遠くに行っちゃうの?」


ササの小さな手が俺の寝間着の裾を掴む。


「大丈夫だよ。時々は帰るから」


そう言いながら、ササの頭を撫でる。ふさふさした髪が気持ちいい。


「約束やよ」


うん。と頷いてササを肩車して部屋を出る。ササは「わ~っ」と言いながら俺の後頭部で喜んでいる。


食卓のテーブル近くでササを降ろして椅子に座った。食事の準備は、爺がやってくれている。


「準備は出来たか」


食事中だと言うのに親父が声をかけてくる。


「はい、大体の物はアイテムポーチに入れました」


本当、腰に巻く小さなポーチなのだが、魔法アイテムであり結構な量が入る。重さも軽いままである。


「そうか、出掛ける前に儂から渡すものがある」


「私もマオくんに渡すのがあるのよ」


両親が何か物をくれるらしい。旅に便利な物だったらいいな。


「ありがとうございます。母上、父上」


あえて、母上を先に言ってみる。そうすると何故だか母親は喜んでくれるのだ。


現に今も目を見開いてめちゃめちゃ笑顔になっている。出発時に抱きつかれないように気をつけよう。



食事も終え、落ち着いた後いよいよ出発の時となった。


「はい、マオくんには私から槍のプレゼント」


そう言って渡してくれた槍を受け取る。軽い。見た目の大きさからは考えられないくらい軽い。


「竜翼槍という槍よ、軽いでしょ。最初から三段突きというスキルが付いてるの。それだけじゃないの。その槍は、伸び縮みするのよ」


俺は、スキル魔眼で槍を見る。


武器種:竜翼槍(片手槍)

スキル:伸縮自在、三段突き


おぉ、凄い。槍を少し振りながらイメージしてみると、確かに槍の長さが変化する80㎝から10mぐらいまで伸びる。


「母上、ありがとうございます。大事に使います」


お礼を言うと、ガバっと抱きしめられた。仕方がない、少しは我慢しよう。苦しいけど。


「いいのよ。でも、強い武器だからと言って鍛錬を忘れてはダメですよ」


当然、武器を使いこなせるように鍛錬はするつもりだ。


「はい、わかりました」


力強く返事をすると体を離してくれた。槍は背負うことにした。


「儂からは、これだ。」


親父は、2メートルくらいの身長になっていた。魔法で身長も変えられるのだそうだ。


受け取った物は指輪だった。早速、魔眼で見る。


装飾種:賢者の指輪(指輪)

スキル:転移(魔王城)、治癒LvⅢ、翻訳


これは、凄い。転移は、恐らく魔王城へ一瞬で戻る魔法だろう。


治癒LvⅢは、死亡以外の全てを回復するというとんでもない性能だ。


翻訳は、外の世界で会話するのに必要なのだろう。


俺も竜人語と魔族語は覚えたけど、他はわからない。これも便利なスキルだ。


「父上、ありがとうございます」


「あらあら、お父さんもマオくんには甘いわね~」


治癒LvⅢのスキルに気づいたのか母親から親父にそんな言葉が出た。


「う、うるさい。それでは、マオ飛ばすぞ。準備はいいな」


照れ隠しなのか、親父が急いで魔法を発動する。


準備は出来てるけど、どこに飛ばされるのだろう。一瞬で俺は魔王城から離れた。



「あなた、どこへ飛ばしたの?」


「うむ、適当にどこかの森の中に飛ばした」


「どこかってどこよ」


妻の機嫌が悪くなってきたと感じた魔王は、急いで自分の部屋に転移した。


「も~」


不機嫌になった母親の横でササはニコニコ笑顔だった。


「にぃなら大丈夫だよ」


ブラコン恐るべしである。



ドスっと地面に落ちる。少し尻を打ったが痛みはない。


「う~ん、ここはどこなんだろう」


今は夜で、どうやら森の中にいるようだ。俺は生まれて初めてアークザリア迷宮から外に出た。


アークザリア迷宮は全部で99層からなると言われている。99層が最下層で、そこはだだっ広い空間だ。


そこで代々、勇者と魔王は戦うことになっている。

だが、実は99層より下の層がある。例えば100層が魔王城のある場所なのだ。


もちろん、その下もあるのだが、それはまた別の話。


地上に出るのが初めてだが、ここはアークザリア王国領であると考えられる。


植物等の種類が以前習ったものと酷似しているからだ。


とりあえず、どこかの森に飛ばされたのだろう。


地図もないが、前世の知識も利用して、なるべく早く位置を把握したい。


アークザリア王国領は、全部で5つの国から成り立っている。大陸中央部全体がアークザリア王国。


その東側の北部をカーマ国。東側の南部をシルビア国。西側の北部をヘルメド国。


西側の南部をモッハトルテ国。の5つだ。王国領の北部と南部は森林地帯である。


ちなみにアークザリア迷宮は、アークザリア王国の南部の森奥深くにある。


親父のことだから、南部の森には飛ばさないだろう。


恐らくここは、どこかの国の北部の森ではないだろうか。


そう思ったところで、ふと気が付いた。


そう言えば、JOB取得してからステータスを見ていなかった。


今一度、ステータスを確認することとした。


名前:マオ・アーク・デモン

種族:D魔族

スキル:魔眼Lv1、魔淫Lv1、ファイアLv1、ライトスマッシュLv1

称号:魔王の息子

JOB:魔槍師Lv1


おぉ、スキルが増えている。ファイアLv1は、火球の魔法だろう。


「ライトスマッシュ」・・・槍に聖なる光を纏わせて素早く攻撃する。又は槍先に集めた聖なる光を相手に放出する。魔物、魔族に有効。


あかん。これ、あかんやつや。同族に撃ったらいかんやつ。何だこれ。使うことあるのかな。


JOBスキルに少し驚いたが、落ち着いて周りを確認する。真っ暗で静かだ。


「さて、どこで寝ようかな」


地面で寝ると虫やら蛇やら来そうなので、どこか大きな木の枝で寝たい。


太い枝がないかと辺りを散策していると、


「助けてぇ~」


何か声が聞こえた。俺は、角と羽を収納して急いで声が聞こえた方へ向かう。


すると灯りが見えてきた。誰かが野宿をしているっぽい。


「やめてっ」


今度はハッキリ聞こえた。テントの中から女性の声だ。


テントの前には太った男が1人ハンマーを持って立っていた。


「誰だ、お前」


相手が何か言っていたが構わず、左手で相手をどかした。


軽く触ったつもりであったが、その太った男は十数メートル吹き飛んでいて木々をなぎ倒していた。


テントを開ける前に一応挨拶しておく。


「こんばんは」


テントの中を見ると、男3人が女1人を囲んでいた。


女性は、服が破かれ、上半身は裸の状態で、身体にはいくつか痣ができていた。


女性は恐怖のあまり、わなわなと震えていた。


俺と同じくらいの背恰好の女性は、とても可愛い顔をしていた。


一瞬女性に見惚れていたとき魔眼が発動していた。


名前:ミーナ・セルジロ

種族:人間(女性)

スキル:鑑定Lv1、ハヤブサ斬りLv1、防御Lv1

称号:お人よし

JOB:勇者(見習い)Lv1


勇者……だと。見習いだけど。


俺が呆けているとテントの中の男共が武器を手に襲い掛かってきた。

あらすじ部分は今話まで。テンポ良く話を進めていきます。

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