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第十三話 残念な事実

幌付きの馬車の中で俺の両隣は、ミーナとリン。


向かいにはオルガとカルさんが座っている。


カルさん達は、迷宮の話をしながらも仲良くしていた。


そんな2人を見ていたらミーナから「マオくん、カルさんばかり見てる」と言われた。


ミーナごめん、俺はあの2人がどうやって知り合ったのかが知りたいだけで、カルさんの胸に興味があるとかではなく、いや、少しはあるかもしれないけど、興味あるのはミーナだけだから。


「それじゃあ、ミーナをずっと見ていようかな」


そう言ってミーナの瞳をみつめた。ミーナは、バッと視線を外した。


俺は、ミーナに視線を外されてもずっと見ていた。


「そ、そんなにジッと見ないで」


ミーナが恥ずかしそうに答えた。


「ミーナは、ずっと見ていても飽きないよ。ずっと可愛いよ」


ドスっと左脇腹に衝撃を感じた。リンのエルボーだ。


「御主人さまは、奴隷の様子も見ないといけません」


リンも構ってもらいたかったようだ。


「迷宮では、リンにも期待しているぞ」


俺は、リンの頭を撫でながらそう言った。


リンは期待しているという言葉が気に言ったのか、ふんっと鼻息をたてて満足そうにしていた。


エルフの長耳がピクピク動いていたのは内緒だ。


首都カーマを出発して2日間は何事もない馬車旅だった。


3日目になると木々に囲まれた、馬車が何とか通れる幅の道を通りながらホクトの町を目指していた。


そこで、リンが何かに気付いた。


「御主人さま、魔物です。数は5匹です」


リンの魔力感知のレベルが上がったせいか、感知の距離も伸び精度も良くなっていた。


どうやら、この先の道に猪の魔物が5匹いるらしい。


パーティのみんなに魔物のことを伝え、ここは俺とリンが行くことにした。


リンは俺と一緒なのが嬉しいのか張り切っているように見える。


ミーナ、そんなに残念がらないで欲しい。


魔物まで後150mというところで、馬車を停めてもらい、俺とリンが馬車を降りて先行した。


しばらく走ると魔物の姿が見えた。奴らは魔物になっていない熊を食べていた。


魔物になると猪は普通の熊より強くなるらしい。


これでは、普通の人間には魔物退治は厳しいだろうな。


魔物達が俺たちに気付く前にリンが言った。


「御主人さま、ここは私が攻撃してもよろしいでしょうか?」


「うん、リンに任せるよ」


俺がリンに返事をすると、リンはニッコリ笑って、クイックショットを発動した。


魔法の弓の数は15。1匹あたり3本の弓が当たって瞬殺だ。


魔法の弓は、誘導も可能で、リンは見事に15本の矢を操っていた。


「凄いぞリン」


明らかにオーバーキルだが、俺は褒めて人を伸ばすタイプだ。


誰しも褒めてもらった方が嬉しいからな。


「御主人さまのお力があればこそです」


殊勝なことを言っているけど、耳、ピクピク動いてますよ、リン。


俺はリンをお姫さま抱っこして馬車に向かった。もちろん魔物の魂は頂いてます。


「あ、あの御主人さま、これは」


リンが突然の状況に戸惑っていた。


「ご褒美だけど、リンは嫌だったか」


リンは、顔を両手で隠しながらも首を横に振り、小さな声で「嬉しいです」と呟いた。


リンは、妹のササみたいな感じなんだよな。


だから可愛がってあげたくなるんだけど、ミーナには少し悪いのかな。今度聞いてみようか。


俺が馬車に戻るとオルガとカルさんが、あまりの早さに驚いていた。


「マオ、魔物はもう倒したのか」


「うん、リンが瞬殺してくれたよ」


「リンちゃん、可愛い姿して凄く強いのね」


「なんで、お姫さま抱っこなの」


一人だけ、感想が違う人がいた。ミーナだった。


気付くとリンは両手を俺の首に回していた。ヤバイ、顔が近くなっていた。


俺は嫌がるリンを無理矢理降ろしてミーナの横に座った。


「2人して何してたのかしらね~」


マズイ、機嫌が悪そうだ。


「何って、魔物退治に行ってただけだよ」


「ふ~ん。2人でねぇ」


「ミーナ、今度は俺と2人でデートしよう。魔物退治じゃなくてデート」


デートという単語にピクっと反応したのは見逃さないよ。


あと、もう一押しな気がする。


「それと、ミーナの言うこと1つ何でも聞いてあげるよ」


「何でも……」


喰いついた。残念な事実だが、ミーナはチョロイン確定だ。


「し、仕方ないわね。約束だからね」


よし、さりげなくデートの約束を取り付けた俺ナイス。


デートのときはリンの世話をカルさん達に任せよう。


オルガの方を見ると、溜息をついていた。もっと緊張感を持ってくれということだろうか。


カルさんは、によによした目で俺とミーナを見ている。


リンは俺の隣にいて、さっきから俺が頭を撫でていたから気持ちいいのか目を瞑って大人しくしていた。


それから2日間は何事もなく旅が進み、ホクトの町に着いた。


町に1軒しかない宿屋に泊まった。


ホクトの町は、奴隷(亜人)はいなかったが、人間しかいない町であった。


オルガはドワーフだが、国王からの親書を持っており、町長以下町民が何か言ってくることはなかった。


また、リンはフード付きの服を着させ、エルフであることを隠していた。


宿屋に泊まれないと面倒だからね。


ホクトの町の近くの樹になる果実が有名で、ワインとかも沢山種類があるらしい。


一応この世界では、人間は15歳から、魔族は13歳から、エルフ、ドワーフは10歳から大人扱いで酒も飲めるらしい。


俺は今、見た目人間なので、年齢的に酒が飲めない。


だから、宿屋の部屋で酒盛り開始だ。


宿屋では、2部屋とり、オルガの家で寝たように2人と3人の割り振りが。


男と女で分けなくていいところが、この世界の常識なのだろうか。


予想通りミーナは、すぐ酔っぱらった。


酔っているミーナは必要以上に俺に纏わりついてきた。


いや、全然OKです。むしろカモン。


可愛い過ぎだよ。もし、2人きりだったら理性なくなること間違いなし。


パーティのみんなと楽しく宴を過ごした。


部屋に戻る際にカルさんが俺に言った。


「マオさん、ミーナさんをちゃんと寝かせてあげてくださいよ。若いからと言っても体力は無限ではないですから」


カルさん、何言ってんの。いや、しねーよ。


そこまでミーナと仲良くなってないですから。


だが、もしミーナからお願いされたら断ることは100%出来ませんけどね。


「カルさんとこも2人っきりだからといって、ハリキリ過ぎないでくださいよ」


「そうなのよ。マオさんからオルにも言っといてもらえないかな」


え? 嫌味で返したつもりだったんですけど。やはり大人は違うのか。


「ば、カル、お前は何を言っているのだ」


オルガは、ムッツリスケベ認定。残念な事実がまた発覚しました。


「ふふふ」と言いながらカルさん達は部屋に戻っていった。


ミーナは、気分良く飲めたのかベッドに横になって寝息を立てていた。


俺がミーナの横に寝て、その隣にリンが寝ようとしていた。


「御主人さまが望まれるのなら、夜のご奉仕もさせていただきます。今なら邪魔者もいませんし」


リン、お前も酔っぱらっているのか。俺の股間に顔を近づけるのはやめなさい。


我慢するのも大変なんだぞ。


俺はリンに軽くデコピンをした。


「リンには迷宮で活躍してもらいたい」


そう言うと、渋々リンは寝る体勢になった。そして数分後リンも眠りについたようだ。


俺もその後眠りについた。



次の朝早く、俺たちはホクトの町を後にした。いよいよカーマ迷宮に向かう。


1日半馬車に揺られて目的地に着いた。


馬車は、一旦大急ぎでホクトの町へ戻り、そこで待機してもらうことになっていた。


迷宮に着いた俺たちは、早速中に入って行った。


先頭からオルガ、ミーナ、俺、カルさん、リンの順だ。


オルガは、何回かこの迷宮には入ったことがあるらしい。


多少道案内が出来るというのと元々JOBが騎士であるための先頭だ。


カーマ迷宮の1階は、洞窟風の迷宮になっていた。


出てくる魔物は、蝙蝠系が多く、雑魚らしい。


確かに遭遇した蝙蝠の魔物のステータスを見たら、数字が全て2~3ぐらいだった。


オルガとミーナがバッサバッサと斬り捨てていた。


ただ、魔物の状態は全て洗脳(軽度)となっていた。


「今日はこの位にしておくか」


迷宮の地下10階でオルガが言った。迷宮は、各10階ごとにボス的な魔物がいる。


ここ10階では少し体が大きい狼の魔物2匹だった。


このボスが現れるところは、大きな部屋みたいなところで1度ボスを倒すと10日くらいは再出現しないらしい。


つまり安全な部屋となる。


10階ごとにキャンプをはっていくのがお決まりらしい。


まあ、魔力の弱い場所で結界張ってキャンプも出来るのだが、安全を優先してそうするらしい。


うちのパーテイでは、カルさんが結界魔法を使える。いざという時にはお願いしよう。


初日は、前衛2人だけで倒していたので暇過ぎて仕方がない。


時々疲れた前衛を俺とカルさんが治癒するだけだ。


リンは出番がなくて不満そうだったので、頭を撫でてやった。


ミーナは何やらオルガに剣術のことを教わっているみたいだ。


ミーナの動きが迷宮に入る前と今とでは見違えるほど良くなっていた。


しかし翌々日、とんでもない事が起こった。

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