復讐
ポール・ヴェナンチーニを殺すためだけに組織にはいったも同じだった。ヤツを殺ることがすべて―。その為だけにこの命を大切にしてきた。組織としてはヤツは危険分子だった。五大ファミリーの編成において、ヤツは気に入らないヤツがいると、すぐに弾くようなヤツだった。
秋、イタリアンレストランでの会合にヤツは出向いた。俺は車から降りてきたヤツを見つけると、すぐさまトミーガンをぶっぱなしたよ。ドラム型のマガジンが空になるまでな。ヤツの車の窓からが音をたてて割れていった。トミーガンの唸りなんぞ、ガラスの音で聞こえなかった。悲鳴を上げる女もいたな。ヤツは腹を押さえたまま、這うようにして車の横にいた。手で押さえていた腹部は地で真っ赤だった。手を伸ばした先にはコルト・パイソンが転がっていた。俺はコルトを蹴ると、マガジンを取り替え、ヤツの頭にぶっぱなした。脳漿に放たれた銃弾は、音をたてて飛び散った。ヤツは死んだ―。
復讐は何も生まない。生むとすれば、大きな哀しみだけだ。哀しみはその人の体を蝕む。だが、復讐を遂げることだけに生きた人々はその身を復讐に捧げることでしか、自分を存在させることができないのかもしれない。俺は残りの人生を失った人々の為に使おうと決めた。暗黒街の抗争の最中、多くの人々が巻き込まれるのを目の当たりにした。だから、俺は決めた。暗黒街に平和を作ると。正義なんてものは俺には存在しないに等しい。そんなものは都合のよい言い訳にしか聞こえない。警察が、検事が、法律が、社会が、それを掲げる。
だが、正義とはなんだ?俺の父は殺された。だが、ヤツは罰を受けたか?証拠をでっち上げて犯罪者を捕まえる、警察が正義なのか?弱者を傷つけ、痛め付ける者共が正義を口にしているのが現状だ。
床に倒れる前にこれを記す。
Charles・Jorquera・Borsalino
チャールズ・ジョルケーラ・ボルサリーノ
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本編「トミーガンが火を吹く前に ~犯罪者に立ち向かったマフィア~」もよろしくお願いします!あと、これには後々本編にも絡んでくる、ある一つの仕掛けをしました。ぜひ、それにも注目していただけたらと思います。(といっても大したものではないのですけどね…)