下町のレストランにて
俺はイタリア系の移民だった。親父の故郷はシチリア。母親の故郷はベネチアだった。美しい水の都に生まれた母親は、父親と共に駆け落ちし、ここアメリカ、ニューヨークにレストランを開いた。当時はパスタが旨いって評判でレストランの売り上げは上々だったって訳だ。だが、ある日それは崩れてしまった――。
当時俺はまだガキだった。小学校ではパトリックとモニカとつるんでよくやんちゃをしたものさ。そんなまだガキの俺が親父を失ったのはある秋の日のことだった。その日は真っ赤な夕焼けが輝いていて美しかったさ。そこに一人の男がやって来た。その男の名はポール・ヴェナンチーニ。この辺一帯を支配しているギャングだった。
ヤツは店の味が喉から手が出るほど欲しかった。そいつで一儲けしようとした。だが、親父は申し出を断った。理由?それは、親父はレシピをギャングに手渡すことなど到底許せなかった。するとヤツは持っていたビール瓶で親父を殴ると、倒れた親父の顔を踏み潰し始めた。親父は帰らぬ人となってしまった。
結局、ヴェナンチーニは裁判でおとがめなし、その後ものうのうと暮らしていた。親父の最後の言葉は今でも覚えている。「チャーリー、お前は生きろ」と。
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