トリップしたけどポリゴンでした
ええと。正直ごめんなさい。
トリップしたらポリゴンでした。
ええ、きっとなに言ってるか分かんないですよね。
私も分かりません。この状況。
よく、ゲームの中に転生とか、トリップとかあるじゃないですか。
私の場合はトリップなんですけど。ゲーム世界なんですけど。
かなり惜しいんです。
だって、みなさんポリゴンなんですもの。
そこはきちんと人間にしておいて欲しかった。
「ミサキ、良い天気だね。この世界にはもう慣れた?」
「はい、殿下。お気遣いありがとうございます。大分、慣れてきました」
にこにこと笑いかけてくれているのは、この国の王太子のカール殿下。
金髪碧眼で美声な王子様。
だけど、まったく心はときめかない。
だってポリゴン。
近づくと、顎とかちょっと角ついてるし。
面の平たいところが結構、分かる。カクカク。
まつげや髪の毛が板ポリ。
3○Sかスマホゲーかは分からないけど、
そんな高解像度のゲームじゃないんだろうな。
テクスチャも節約してあるのか、近寄ると解像度粗い。
うん、なえる。
そして恐怖。
トリップ初日。恐怖に駆られて叫んだ私は、正常な反応だ。
モブなんて5種類くらいで皆同じ顔。たまに色違い。怖い。
不思議なことに、人以外はリアルなんだよ。
だから、食事もできるし生活もできる。
にゃんこも可愛い。
おまけにこの世界の人ってめちゃくちゃ優しい。
でも、人だけポリゴン。
なにこの致命的なバグ。
「それにしても、君は本当に勉強熱心だね」
「はい。なにがなんでも帰りたいですから」
「……そう」
私はトリップしてからずっと、
王宮の図書館にこもって逆召喚の魔方陣について研究している。
殿下、沈痛な顔しても駄目です。
ちょっぴり頂点が崩れてますよ。口の端に三角ポリゴンできてます。
私は帰るったら帰る。
なんのゲームか知らないが、ここで私の役目はない。
信託の乙女候補とか言われたけども、がん無視。
ポリゴンのライバル令嬢さんが信託乙女になればよい。
みんなハッピー。トゥルーエンド。
王太子
宰相の息子
新人騎士
チャラ男貴族
凄腕魔術師
ショタ第二王子
兄貴風冒険者
多分、ここは乙女ゲームの世界。
でも帰る。
逆ハー?どうぞご勝手に。
神様。次に人を連れてくるときは、このバグ直しておいた方が良いですよ。
リリース前のデバック大事。仕事があらいです。
異世界トリップしたけれど、なにも始まりませんでした。
6/23 誤字修正しました。正解は兄貴!まいどすみません。
最初は
モーションとかフェイシャルアニメーションとかテクスチャ切り替えとか。
イミフなものをぶち込もうとしてました。
フフって共感してくださる方、どなたかいい感じの書いてくれないかな?
ホメ春香さん的な3Dキャラの恐怖が表現したかったかもしれません。
ストレスって恐ろしいですね。