ガーリーブラザー&シンプルシスター
私の兄は少女趣味だと思う。
例えば、兄の部屋は可愛い置物や沢山のヌイグルミで飾り付けられている。
対照的に、妹の私の部屋には大量の本が置いてあるだけ。
あまりにも殺風景だと理由をつけた兄から、自分が飽きた小物を押し付けられる始末。
私の好みに合わないし、掃除する時の手間が増えるから要らないんだけどな。
他にも例を挙げれば、ヘアスタイルに悩み流行のファッションを追う兄。
平日の朝の余裕のない時間帯に長々と洗面所を占領し、急いでいる父親に叱られるのも兄の方だ。
妹の私はといえば、髪型は手入れが簡単で校則に違反してなければOK。衣服も着心地が良くて清潔で、TPOに合っていればOK。特に拘りがない。
我ながら『男女が逆じゃね?』と思う。
容姿も似てなければ、性格も正反対の兄妹。
仲は良くも悪くもない。
時々どうでも良い会話に興じたりもする。
「俺もう結婚できるんだぞ」
何故かドヤ顔で、2歳年下の妹に威張る兄。
『将来の夢は幸せな花婿』という彼は、本日めでたく18歳の誕生日を迎えた。
女の子が口にしそうな夢を語る彼に『専業主夫にでもなるつもり?』と冷や水を浴びせてやりたかったが、次の瞬間には湯気を立てて怒る兄とケンカになるので黙っていた。
昔の賢人も言ってるように『沈黙は金』だ。
ちなみに兄は彼女もち、妹は彼氏いない歴=年齢である。
派手な夫婦喧嘩を繰り返す両親のもとで育って、結婚に夢見る兄と結婚は墓場だと考える妹。
本当に何もかもが真逆だ。
それは兎も角、独身主義者でもある私としては白けた返事になるのは仕方ない。
「あっそ、私も一ヶ月経ったら結婚できるようになるけどね」
「なんで!?」
「来月、私も誕生日だもん」
兄妹だから知らない訳でもない筈なのに、やたらとビックリする兄。わざわざ言わなくても分ってるでしょ。
「まだ18歳じゃねーだろ!?」
私の返事に、すごい勢いで反論する兄。
「女は16歳で結婚できるから」
あまりにもお馬鹿な発言に呆れ、私はアッサリと種を明かす。
普通は説明する必要もない、周知の事実なんだけどねぇ。
「ああっ!そうだった、チクショ~ッ!!」
何でか酷くショックを受ける兄。
こんなので大丈夫か、受験生!?高三の兄がちょっと心配になってしまった。
正直なところ『専業主夫』はケンカの売り言葉みたいな感じで考えた事だったけど、これは本当にキャリア志向の女性と結婚して家庭に入った方が良いかもしれんぞ、兄よ。