4章 24話
「アニキ、手紙が二通届いていますよ。どちらもアニキの知り合いとは思えない人物なのですが……どうしてか公的な書類として城に便りが届いております」
始めはガチガチだった王城生活も、一週間も経てば慣れたもので、俺もソファーの上で脚を組んでフルーツでできたお洒落なお酒をいただくほどにレベルアップしている。
後ろに控えているスパティフィラさんが時たま、アイリス様“は”大変な働き者ですね、と意味ありげにつぶやいてくるのが気にはなるが……。
「俺宛にか。どなたかな?」
手紙の差出人を見る。
フレーゲン・ダータネルとゴーメン・アレスシック……本当だ、全く知らない二人だった。
「ゴーメン・アレスシックという方は存じ上げておりませんが、フレーゲンは良く知った人物です。とてもアニキのような方と知り合いとは思えません……」
「へぇー、どんな人?」
「言ってみれば、悪い話があると出てくる名前ですね。その名前を聞くと悪いことが起きる気さえしますね。私の兄とも昔からよくぶつかり合っている間柄です……」
凄い男だな。もはや疫病神級?
それにしても、王子とぶつかり合うとは凄く肝っ玉の座った男だ。
「そこはさ、王家の権力とかでビシッと正してやれないのか?」
「そうですね。あまり権力を振るうのは、父が良しとしないのもあるのですが……。なにより、フレーゲンの実家のダータネル家の力が強いことが大きな要因となっています」
「そんなに凄い家なの?」
「はい、悔しいですが。もともとこの国は中央に権力が集中している傾向がありますが、ダータネル家はその筆頭ですね。王都の経済の中核を担っていますから……。実は、クダン国がここまで栄えたのもダータネル家の功績が大きいのです」
なるほど、金は権力と言う訳か。それに国を発展させた功績もあると。
そりゃ暴走したら止めるのも一苦労だな。
「ダータネル家は本当に名家で、先代まで非常に良くできた方が当主だったのですが、今代は少し欲の強い方が当主になりました。それに、次代がトラブルだらけのフレーゲンです。未来の王都を支える身としては頭が痛いですね」
「なんか……苦労してるね。うちの領も大変大変だと思ってたけど、外もみんな苦労してるんだね」
「はい、でもヘラン領の最近の発展具合は一番の明るいニュースですね。アニキの父上、トラル殿も信頼できる人物で、父も良く褒めております」
それ本当!?
父さんに伝えたらめっちゃ喜ぶぞ。喜怒哀楽の強い人だから。その中でも特に哀が強いので、たまには楽をくれてやろう。
「フレーゲンめ、どうせヘラン領の好景気に美味しい蜜の匂いを嗅ぎつけたのでしょう。アニキ、恐れることはりません。押し付けがましい要求は全て跳ねのけてください」
それはもちろんのこと。
脅迫に屈するほど精神が弱ってもいないし、我が領を売るほど愛着が薄れてもいない。むしろ、気合十分だし、久しく帰っていないヘランの地が恋しいほどだ。
「そんな話を聞いたら、俺としては手紙を破り捨ててもいいくらいだけどな」
「うーん、すみません。公的な書類として届いておりますので、目は通していただけませんか?」
そういうことなら、ラーサーに迷惑はかけたくないし、ちゃんと読んでおくか。
『敬愛なるクルリ・ヘラン殿。先日は大変お世話になった。是非、その大恩をお返ししたいので、我が家へ来られたし。今夜お会いできることを願っております』
「……だそうだ」
「正直……意外な内容ですね。ヘラン領の話かと思ったのですが……。というより、なんです?アニキ知り合いなのですか?フレーゲンの命でも助けたような文面ですが」
そうだよね、だって敬愛されてるもん。
王城に来る途中に誰か命でも助けた?あいさつはいっぱいしたけどなぁ。
「覚えていないな。顔を見れば分かるかも」
「そうですか。……どうします?招待に応じますか?」
「いや、断る」
「この文面で招待されて断るのですか。流石アニキです!断って欲しいと思っていましたから嬉しいです」
本音としては、ラーサーが最初から断って欲しそうな感じだったから断っただけだ。どこの誰かのご機嫌取りよりも、俺としてはラーサーがご機嫌な方が嬉しい。
「ははっ、ささ、こんな凶報はもう破り捨ててしまいましょう。スパティフィラ、これを焼却しておいてください。それと断りの返事を出してください」
読んだら破り捨てていいのか。しっかり順序を守っているところは、律儀だなぁ。それに焼却まで。一体どれほど嫌だったのか。
しかも、命じられたスパティフィラさんまで少し嬉しそうだし。
最近気が付いたのだが、ラーサーが喜ぶと、彼女も喜んでいる気がする。敬愛する主君的な?そんな関係なのかな。
ラーサーを喜ばせたし、しばらくは、アイリス様“は”大変働き者ですね、という呪文も少しは頻度が減るかもしれない。
「もう一通、ゴーメン・アレスシックさんですね。聞き覚えのある名前な気もするのですが、開けてみましょう」
「ラブレターだったらどうしよう」
「たぶん男性ですが、いいんですか?」
「……」
さっさと開くことにした。
『敬愛なるクルリ・ヘラン殿』
また敬愛されてしまった。最近すごく敬愛されているね。魅力がようやく世間に浸透したのかな?
『そなたの鍛冶職人としての腕を見込んで、鍛冶協会十傑会議に招待する。重要な話がございますので、是非、参加していただきたい。鍛冶協会十傑代表、ゴーメン・アレスシック』
「あー、なるほど。鍛冶協会代表のゴーメンさんでしたか。アニキ、これは参加しておくべきじゃないですか?」
「有名な人なの?それに鍛冶協会って?」
「鍛冶師が集まる協会みたいなのが王都にあります。詳しくは存じ上げてないですが、王都の兵士に持たせる武器の大半は、ゴーメンさんが経営する鍛冶屋『鉄の魂』が作っているはずです」
「王都の兵士って結構な数がいるんじゃないの?仕事、追いつくの?」
「はい、『鉄の魂』もかなり大規模な鍛冶屋ですから」
そんな場所があるのか。鍛冶職人が集まってみんなで腕を磨きあっている光景が見える……。個人でやっている俺とは環境が違うので、想像したらなんだかワクワクするぞ。
「面白そうだし、これは行こうかな」
「はい、返事を出しておきましょう。きっとアニキの腕が認められたのですね」
「だったら嬉しいな」
招待日、ラーサーが用意してくれたいかにも貴族風な身なりのいい服を着て、鍛冶協会を目指した。体にフィットした生地なので、結構動きやすかったりする。鍛冶をやってもいいように気遣ってくれたのかな。
ちょっと場違いな格好にならない?ってラーサーに聞いたけど「貴族ですから。アイデンティティを出していきましょう」と悟らされた。
馬車はしばらく走り、王都の中心地から大分離れた場所まで来た。流石に貴族街からは離れている。
「到着しました」という御者からの報告をうけ、窓から外を一瞥した。
思っていたのとは違う建物が目の前に。もっと煤とか被った汚いところをイメージしていたが、レンガ造りのしっかりとした綺麗な建物がそこにはあった。
なかにはきちんと受け付けもあり、そこも意外だった。なんか勝手にがさつなイメージがあったから。
鍛冶場を囲んで、熱気の中での会議をイメージしてたから……。流石に舐めすぎた。ちゃんとした服で良かった。
「クルリ・ヘラン様ですね。お待ちしておりました。会場は奥の会議室になります。ご案内いたします」
丁寧な受付の女性に対応してもらい、建物の奥へと入っていく。会場には既にメンバーが集まっており、全員の注目を受けた。招待客で、初めて会うし当然の反応なんだけど、なんだか気恥ずかしいような気分になる。
若いな。細い。いい服を着ている。だが聞いた通りだ。
何人かひっそりとそんなことを呟いているのが聞こえた。
「来てくれたか。どうぞ席に腰かけてくれ」
会場一番奥に座っている老人と言える年代の男性がそう言ってくれた。
まわりもそうだけど、基本皆高齢だ。一人30代くらいの人物がいるくらいか。
いまから何が始まるのだろう。そわそわしてくる。
「わざわざ来ていただいて感謝しておる。本当に貴族様なのだな。通り名の『華麗なる踊り子』に相応しい人だ」
「華麗なる踊り子?」
なにそれ。しかも通り名があるの?俺の?男なのに踊り子?……それはそれでいいかも。
「おや?その様子だと初耳らしいですな。あまり他の鍛冶師と交流がないのですね」
「はい、ほとんど一人でやっております」
「そうか、そうか。通り名というのは凄腕をもつ職人には皆あるものじゃ。ちなみにワシは『鉄脳』ゴーメン・アレスシックじゃ」
やはりこの人が招待してくれたゴーメンさんだったか。このなかでも一番年季の入ったひとだから多分そうだとは思っていたが……。それにしても、通り名の『鉄脳』が気になる。頭にそれしかないってことなのかな?だとしたら、相当凄い人だ。いい意味でも悪い意味でも。
「それでは、『華麗なる踊り子』も着いたことだし、これより鍛冶協会十傑会議を始めるとしよう。今日の議題は皆知っての通り、先日お亡くなりになった『長老』カメック殿の空席を埋める人物の選定じゃ。『華麗なる踊り子』は初耳じゃろうが、以前からワシらは話し合っておっての、いまいちこれぞ、という人物が出ない中そなたの噂を耳にした」
『長老』って通り名だよね。通り名ってことは、それがその人の印象ってことだから、『長老』はずっと年老いていたのか?そっちの説明をまず聞きたいです!個人的な興味で!
「そして、たまたまその方の打ったであろう剣を手に入れてな……これがまたすごい逸品じゃった。剣に生き生きとした活力を感じるし、何より繊細で華麗じゃった。しかもこれを打った人物は貴族の若者というじゃないか。勝手ではあるが、その場で『華麗なる踊り子』という通り名をワシがつけさせてもらった」
「そんな経緯が……。いい通り名で光栄です」
『若造』とかじゃなくて良かった。『長老』がいるなら、決して否定できない可能性である。
「それで、これがその時感銘を受けた剣じゃ。そなたの打った剣で間違いないかな?」
『鉄脳』が持ち出した剣……確かに俺の打った剣だ。打った剣の全てを覚えているわけじゃないが、名前を刻んだものは流石にすべて覚えている。ちなみに、この場じゃ通り名で呼ぶっぽいので、俺もそれに習うとしよう。
「はい……、その……通りです」
「なんだか歯切れの悪い言い方じゃな」
歯切れが悪い?そりゃそうだ。確か誰かに譲った剣だったが、それは余り出来がよろしくない。寝不足な日に打った剣だった気がする。そもそも売るつもりで打ったものじゃないから、気合も少し抜けたものになってるし。そんな中途半端なものを評価されては、正直嬉しさより恥ずかしさが上回る。
「いえ、ははっ、そうですか。いい出来ですか。頑張って来て良かったです」
「そうじゃな。天性の才能なしにはこの領域に達するのは厳しいものじゃ。師匠はおられるのかな?」
「はい、ドンガ師匠がいます。頭の固い、いかにも職人気質の人なんですけど、知ってますか?」
「ほぉ、ドンガが師匠か。あやつの師匠はこのワシじゃから、当然知っておる。弟子の中でもそれほど出来のいい方じゃなかったが、いい意味でかなり変わり者な奴じゃった。こんな貴族の子弟を弟子にしたあたり、やつの鍛冶職に対する純粋さが見えてくる。龍を生み出すとは大きな功績を成したな、ドンガよ」
不思議な縁だな。ドンガ師匠がゴーメンさんの弟子だったとは。しかも出来が良くないって、弟子の身としてはちょっと反論したいところだ。でも俺よりはるかにドンガ師匠のことを知っているんだろうな。今でも覚えているってことは……。
ということはこの人は師匠の師匠か。めちゃめちゃ凄い人じゃないか。
「あやつでも通り名はない。そなたの凄さがそれで少しは実感できるかな?」
「俺が師匠より凄いってことですか?それはないと思うのですが……」
「ワシが何年この世界にいると思う。ドンガはこの世界じゃ一流の部類に入るじゃろうが、頂点にはいない。頂点、それがまさにここに居る10人の誰か、じゃとワシは思っておる」
そういうことは師匠の口から聞きたかったけど、師匠の師匠ならそれもいいか。
「頂点にいる者たちが鍛冶のこれからを決めていく。守るのもこの場にいる者、発展させるのもこの場にいる者がするべきじゃ。それ故、下手な人選じゃと困る。そなたはこの十席に相応しいと、ワシは思っておる。今日は正式に就任してくれないか、そなたと他のメンバーの意見が聞きたい」
事情の説明が終わり、これより本題に突入と言う訳だ。
俺が鍛冶職人のトップとして業界を引っ張っていく!?まだ自分の店も持っていないのに、空に飛んだような話が舞い込んできたものだ。
「いいかな」
俺とゴーメンさんが向かい合って座っていて、テーブルの右に三人、左に4人座っている。その右側一番奥の壮年の男性が手を上げた。
「構わんよ、『歌舞伎』」
「『華麗なる踊り子』の十傑参加に反対だ」
「ほぉ、そなたはいつもはっきりした意見をくれるの。是非、理由を聞かせてくれ」
「はい、正直この場に来るまでは賛成でした。しかし、改めてその剣を見ると、やはり若さ……が出ておるな。素晴らしい逸品だし、私でも打てない部類の剣だろう。しかし、私の剣と比べる限り、やはり劣っていると思う。この場には私と同等か、それ以上の職人しかいない場としておきたい。マガママを言ってすまないな」
「いや、貴重な意見じゃ。『華麗なる踊り子』よ、何か言いたいことはあるかな?」
それはもちろんある。丁寧な言い方だったが、職人として侮辱されているわけだからな。
「言い訳になるし、この十傑にどうしても入りたい訳でもないですが、その剣はいまいちな出来です。世に出回るものを中途半端な状態で出してしまった部分は己の甘さですが、これからの教訓とさせて頂きたい。改めて言うが、入りたい訳じゃない、しかしその剣だけで私を判断されては困る。技術も未だ日々進化している。それが私の集大成という訳ではない」
言いたいことは全て言えた、かな……。
この場がどれほど凄い場なのは知らないが、入りたいかと言われると正直別に入りたくはないかな。面倒そうだし。
「こちらもはっきりした意見で嬉しいの。これ以上の剣が打てるとは……事実ならそれは真に凄いのぉ。ものによっては本当に頂点に躍り出るかもな……」
「その話が事実であればです。若者はいつも自分を誇張したがるものです。そのこともご考慮下さい」
『歌舞伎』は俺のことを否定はしているが、包み隠さず言うところが好感を持てる。『鉄脳』も言っていたが、こういうハッキリした人なのだろう。嫌いなタイプじゃないな。
「私は賛成ですよ」
テーブルの左一番手前、俺に近い席の30代の男性がそう意見を告げた。
「『銭ゲバ』は賛成ですかな。なかなか意見を申さないそなたが、珍しいことじゃ」
銭ゲバ!?いいのか、それで!!クールに澄ましているけど、銭ゲバって言われてんぞ!!
「若さは強みです。それ以上の剣が打てる、それが事実であれ嘘であれ、現時点でそれが打てていることが重要。私は大いに賛成ですな」
「そういう見方もあるな。確かにこの場には若さがかけておる。生き生きとしているのは『銭ゲバ』くらいなものじゃ。あとはワシも含めて古い考えに偏っておるのも事実」
その後は、反対の『歌舞伎』と賛成の『銭ゲバ』を中心に意見の対立があった。
『鉄脳』は賛成派なのだろうが、立場上は中立を守っているので、4対4でちょうど意見が分かれている状態だ。会議が盛り上がるのが嬉しいのか、『鉄脳』は場が落ち着きそうになると油を注ぎだす。
なんだか皆楽しそうに見えるのは気のせいか。正直、俺一人が取り残されている状態だ。
「みなさーん、そろそろ昼食にしましょうかー」
受付のお姉さんが入って来て、食事を運んでくると、全員が素直に従った。
こういう素直なところは職人っぽい。
「『銭ゲバ』はその財力でそろそろ貴族位を買う噂がある。だから、本物の貴族が入ることが嬉しいのかもしれないな」
『鉄脳』は自然体で人の心を抉るところがあるらしい。『銭ゲバ』が食事をしながら、すこしだけほほを赤らめているじゃないか。
「そうそう、『華麗なる踊り子』にはまだこの十傑の全てを話しておらんかったな。これだけのポジションを与える以上、もちろん手当もそれなりにある。財団があってな、そこからそれなりの金額が支給される。この場の半数は辞退しているのじゃが、本当に結構な額が毎年分配されるぞ。まぁ貴族である『華麗なる踊り子』にとっては端金じゃろうが」
分配金!?結構な額!?
「……どのくらいの期間?」
「おや?意外にも興味が?もちろん在籍期間中ずっとじゃ。腕が狂うか、人が狂わない限り、なかなか除名もないぞ」
「そうですか。金はいくらあっても困りません。私はヘラン領の次期当主、端金でもうまく利用する自信がございます」
「そうか、そうか。『華麗なる踊り子』はどうやら多才なようじゃ。王子もしっかりした人物らしいし、この国の未来は明るいのぉ。安心して死ねるわい」
そんなこと言わないで。でも、楽しそうにそんなことを言うところが、なんだか格好いい気もする。
「さて、腹も膨れて来たし、そろそろ結論を出そうかの。後日他の剣も見るとして、この場はこの場で意見を決しよう。会議が盛り上がるのはいいが、延び延びになるのは好かん」
「では、いつも通り多数決と行きましょうか」
「そうじゃな。まずはワシから、時計回りに行こうかの。『鉄脳』、賛成」
やっぱりこの人は賛成なのか。
「『歌舞伎』、賛成」
次の『歌舞伎』が意外にも賛成側に回った。反対を主導していたはずなのに。
その次の方も、また次も、結局終わってみれば満場一致で賛成となった。
……なんだったんだろうか、先ほどまでの熱い議論は。
「と言う訳じゃ、聞いての通り満場一致でそなたを迎え入れたいということになった。最期に、そなたの同意があれば、正式にメンバーとなるのじゃが……」
話の展開が早くて、正直戸惑う。
でも、認められているし、……それにね、お金?が少しだけ入るっぽいし?別に興味ないけど……本当に。
中途半端な剣の汚名も挽回しなきゃだし、ここは……。
「光栄です。もちろん、入らせていただきます」
「よろしい!では十傑会議を終える!解散!後日認定の証を送る故、しばし待たれよ」
『鉄脳』の老人とは思えないボリュームで解散の号令がかかると、皆一目散に帰っていった。気分がいいほど颯爽に。別れ際になよなよあいさつを交わしあうことなどない。職人だなぁ!
その中でも例外はいて、『銭ゲバ』は俺に話しかけてきた。
「『華麗なる踊り子』よろしければ、後日暇なときにでも私の経営する鍛冶屋に来てみないか?私が金を荒稼ぎしている理由と、面白いものも見られるぞ」
「はい、行かせていただきます」
軽い知り合いも出来たし、有意義な一日となった。
改めて、結構な職人になれたのかなぁ、と自分を振り返ってみる。
この道を選んで正解だと思える日が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。