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2章_9話

教室の扉を開くと、裸の女性がそこに寝ていた。

窓の外から指す日を体に浴びて、つやのある体が輝いていた。

大きく魅力的な瞳を閉じて、すやすやと寝息を立てている。

丸々としたお尻をつきだし、大事な部分も全てさらけ出していた。


・・・まぁ、猫先生だけど。


「先生、来ましたよ」

寝転がっている猫先生を揺さぶる。おふっ、もっと、とか寝ながら言ってる。

なんなんだ、呼んでおいてこれはない。


「先生、起きてください。クルリ・ヘランです」

「・・・んあ、ああ、クルリ坊やニャ。よく来たニャ」

「呼ばれたので来ましたよ。何か用ですか?」

「魔法研究の件ニャ。もう一人呼んでいるから待つニャ」

「もう一人?」

「そうニャ。アーク坊やニャ。二人は出来がいいから特別に研究に誘ったニャ」

うっ。ナンバーワン関わりたくない人物と一緒か。

よりにもよって、第一王子と一緒になるとは。

彼にかかわるとろくなことがなさそうで、怖いな。

まぁ、でも魔法を教えてもらえるし、差し引きゼロってとこかな。


「待ってる間に腰をもむニャ。なんだか腰に疲れがたまってるニャ」

「仕方ありませんね」

猫先生の隣に座り、腰に手を当てしっかりと揉んだ。

「あ、あはん」

「・・・やめてもらえます?その声」

「気にしないで欲しいニャ。ささ、続けてニャ」

その後もあは、うふ、などいやらしい声を出していた。


「来たぞ。猫」

ふてぶてしくドアを開けたのは第一王子のアークだった。

相変わらず俺を若干敵対視している。けれど来てくれて良かったよ。これ以上猫先生と同じ空間に二人でいたくない。


「ほう、お前もいたかクルリ」

「やぁ、王子」笑顔で、あくまで俺は気にしていないそぶりだ。

それにしても、王子は近くで見ていると顔が整っていて見る分には不快ではない。

でも、彼の機嫌を損ねると俺の人生に響くと思うと、考えなしに顔を見ているわけにもいかない。


「二人とも揃ったから始めるニャ」

「お願いします」

「アタイの独自の魔法、『変身』を教えるニャ。これが使えれば自由自在に他の生物に変身できるニャ。便利だニャ。毎年4,5人捕まえて教えてるけど、まだ誰も会得できていないニャ」

「先生はそれで猫の姿なのですか?」

「違うニャ。アタイはもともとこれニャ」

あ、そうですか。


「まずは魔力で体を覆って、着ぐるみを着ているような感覚を味わうニャ」

言われるままに素直に先生の真似をしてみた。


魔力で体を覆い、ぬいぐるみの中に入るイメージをする。

おっ、なんだか体があったかい気がする。

「いいニャ、クルリ坊やは筋がいいニャ」


一方で王子は苦戦しているようだ。

「違うニャ。アタイの真似をするニャ」

「くそっ、あいつにできて俺にできない訳がない」

やけに俺を意識している。困るな。


「もっと出すニャ。足りないニャ。若いからどんどん出しても問題ないニャ」

猫先生の適切?な指示でアークも要領をつかめたようだ。

最初から素直に真似してればよかったものを。変に自分の色を出すから苦労するのだ。


「ふー、追いついたぞクルリ」

そうはいかない、俺だって黙って待ってたわけじゃない。

何度も一から繰り返して、王子よりもさらに要領をつかんでいる。


「じゃあ次は手だけを変化させるニャ。包んでいる魔力をそのまま使うニャ。二人とも物質変化、魔力維持ができるからできるはずニャ。変化させるものはなんでもいいニャ。イメージしづらいならアタイの手をイメージするニャ」


まずは猫先生がお手本を見せてくれた。

猫先生の手が瞬く間に人間のそれになった。


王子と二人して「「おお」」なんて言ってしまった。

「ちょっと難しくなるから無理しなくていいニャ。この腕は美しくないから戻るニャ」

猫先生の手が今度はスルスルと元の毛玉に戻った。肉球はかわいいけど、美しくはなくね?猫先生の美意識はよくわからない。


猫先生のやり方をしっかり確認し、真似てみた。

なんとなーく、手が変わるがすぐにもとに戻ってしまう。

確かにこれは難しい。


「クルリ坊やは魔力が出すぎニャ。君は集中してるとその傾向があるニャ。若いからいっぱい出るのはしょうがないけど、あまり興奮するニャ」

「・・・そうですか」いやらしく聞こえるのは俺に邪念があるからだろうか。


できないことは繰り返しだ。

夜までやっていいとのことなので、地道に繰り返した。

王子も集中している。


日が暮れ始めたころだろうか。

「おおっ!」ちょっと前までに、既にはっきりと変化させることは出来ていたが、自然と力を抜いても元の人間の手には戻らない。成功か!?

「猫先生」自分の成果を見せるように手をあげた。


「すごいニャ。もうできるなんてクルリ坊やは天才ニャ」

体のほとんどを夕日に当たりながら、ごろ寝状態で猫先生が答えた。

「はは、やった成功なのですね?」

「成功ニャ。次の段階はまた今度ニャ。帰ってシコシコ寝るニャ」

「ありがとうございます!!」

えっ、シコシコ寝る?

魔法を解いて元の手に戻した。なんだか不思議な感覚だ。

「お疲れさまでした、猫先生」

「お疲れニャ」


「まて!」

帰ろうとしたとき、大きな声が教室に響き、王子のアークが鋭くこっちを睨んでいた。

めんどくさいのに捕まってしまった。

「なに?」

「おい、・・・コツを教えろ」

なるほど。俺が先にできたのも悔しいらしいが、それよりはできないことの方が悔しいらしい。


どうしようかなー。なんて。

「いいよ」

猫先生はもうだらけているので、俺が教えてあげよう。


とりあえず猫先生の指示通りと、俺の感覚を伝えてみた。

「わからん!」

そんなこと言われても困る。

「根気よく行こう」笑顔で返した。


結局夜まで付き合わされたが、王子はできなかった。

「悪くないニャ。でも、良くもないニャ。王子のくせに普通だニャ」という猫先生からの最後の言葉で王子は余計に落ち込んだ。

「ちょっと飯に付き合え」

そんな流れで王子に捕まり、今は二人で食堂に来ている。八つ当たりでも食らうのだろうか。


「お前の方が現時点では優れているが、最後は俺が追い抜く」

「はいはい、そうですね」

もう疲れていちいち相手するのがめんどくさい。

「ところで、アイリスとはどういう関係だ?」

今それ聞くか。それが原因でできなかったんじゃないか?と思ってしまう。

どうしようか。教えようか、それとも意地悪してやろうか。


「まぁ友達ではあります」

「なんだ、それだけか?」

「さあ。向こうがどう思ってるかは知りませんけど」

「なんだと!?おい、どういうことだ!」

あまりに必死な形相で詰め寄ってくるので、飲みかけの水をちょっとだけ吹いてしまった。


「冗談、冗談ですよ」

「本当か?」

「本当にただの友達」一緒に5日間ほど寝泊まりしたがな!これは言わないでおこう。

逆鱗には触れたくない。


「たっく、レイルのやつがお前のこと褒めてるからどんな奴かと思っていたが、普通だ!お前なんか普通だ!!」

もう、めんどくさい。

王子ってこんなめんどくさいやつだったっけ?

アイリスをエリザの毒牙からかっこよく守る白馬の王子様的イメージが強いだけに、なんか今の王子はダサい。

ラーサーはあんなにもいいやつなのに。


「普通で結構」

小声で少しだけ反撃して、食事を済ませた。

「では王子、私はもう部屋に帰ります」軽く挨拶を済ませ、背を向けた。


バスッと肩に、力強い手が乗った。

振り向きたくないが、一応振り向いた。

「まて、すぐには寝ないのだろう?特訓に付き合え」

「嫌ですよ。私にだってやりたいことがあります」

「やりたいこと?なんだそれは」

「鍛冶作業でまだやり途中の物があります。今日中に済ませたいので」これは嘘だ。一刻も早くここから抜け出したいだけの言い訳だ。

「何を造っている」

「剣を打っています。と言う訳なので、これで」

「待て、王都にある俺の名剣コレクションを一本やるから付き合え!」

名剣コレクション!?

・・・おいくら??


「それは本当に名剣なのでしょうか。見ていない私には信用できる話ではないですね」

「どれも天才と呼ばる鍛冶師達が造りあげた名剣だ。市場に出回れば最低でも庶民が一生遊んで暮らせるような額で売れるだろう」

「しょうがないですね。剣はそれほど興味ないですけど、王子にここまで頼まれて断るわけにもいきませんから」

是非、やらせてください!!お願い申し上げます!


「おっ話の分かる奴じゃないか、クルリ・ヘラン。じゃあ早速お前の部屋に行くぞ」

「いいですよ」

えっ、なんで俺の部屋?

二人で食堂を後にして、部屋へ向かう道すがら聞いてみた。


「ところで、どの剣を、いつ貰えるのでしょうか。言っておきますけど、貰ったものは返しませんよ?所有権は私に移りますから。誓約書なども欲しいですね。ちなみに、それらの剣はどれくらい保存が効くのでしょうか?できれば値の下がらない物をいただきたいのですが」

「おい、急に饒舌になったな。さっき興味ないとか言ってただろ」

「いえ、約束は守ってもらいますよっていう話です」

「わかったわかった。そのうちラーサーにでも届けさせるさ。あいつと仲いいんだろ?」

「ラーサー様は素晴らしい人物です。彼が国王になることを私は望んでいます」

「おい」

若干機嫌の悪さを感じ取ったので、これ以上からかうのは止めにした。

さっさと魔法を仕込んで、休みたいものだ。


部屋に戻ると、ヴァインとクロッシが筋トレをしていた。

「体幹を鍛えるのはきついが、動きのバランスが良くなる。辛いが、もう一セット俺について来れるか?」

「私が貴様に遅れをとるはずもない!あと3セットは行ける!」

「よし、じゃああと3セットだ」

「ヒイイイイイィ」


なんだか楽しそうだな。自分たちの部屋でやれば?


「おい、ここはお前の部屋じゃないのか?」

「まぁ気にしないで。ちょっと雑音があったほうが集中できるしさ」

「いや、蒸してるぞこの部屋。何時間いるんだ?あの二人」

それを俺に聞かれても困る。俺が聞きたいことなのだから。


「じゃあ、もう一度猫先生のやり方と、俺の感覚を伝えるから。よく聞いててくださいよ」

「わかった、さぁこい!」


結局今日は深夜までやり続けた。

もう駄目だろ。とか、何回思っただろうか。でも帰らないんだよこの人。


ヴァイン達もなんだか熱くなってきて、じゃあ俺たちも魔力を高める練習でもするか、と入り浸っている。

俺だけがこの空気に乗り遅れていた。


そんな時ドアが少し荒くノックされた。

誰だ、こんな時間に。非常識なやつだ。


ドアを開けると、全く知らない男が目の前に立っていた。

「あんたの部屋うるさいんだよ!何時だと思ってんだ、非常識だろ!」

うっ、確かに!非常識なのこっちでした!


「それにな、今日だけじゃないんだよ。俺あんたの上の部屋だけどさ、いつもカンカンうるさいし、男と女が庭で叫んでたりもするだろ。迷惑なんだよ!!」

すみません!ただ、男と女が叫んでいるのは俺ではありません!


「どうした?何かあったか?」

ちょっと揉めている間に、王子のアークが近くまで来ていた。

「王子!?なんでこんなとこに」

文句を言いに来た生徒は完全に困惑していた。

「なんでって、お前に関係あるのかよ」

「いえ、ありません」

「だったら帰れ。それとも他に用でも?」

「い、いいえ。よい眠りを、では」


申しわけねーーーー!!!!

100歩譲ってもこっちが悪いのに、権力でねじ伏せたよ!後日手土産でも持っていくとしよう。


「たっく、じゃあ仕切りなおすか」

そう言って始めた王子だが、ものの見事に再開一発目で成功した。

「「おおっ」」二階の住民に感謝です!!

「できたじゃないですか!」

「できた!できたぞ!」気づけば二人で抱き合って喜んでいた。

興奮が収まると、手を放し冷静にスーと離れた。


「じゃあもう一度うまくいたら今日は終わりにしよう」

いや、もう帰れや!!














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