無断欠勤
<無断欠勤>
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「連絡つかないか?」
「はい。」
「・・どうしたんだろうな・・。」
「そうですねぇ・・。」
AM9:00。オフィスはいつもの朝を迎えていたが、一人、いつもの人間がいなかった。
「携帯も家の電話も出ないなんて、どうしたんだろうな。」
「・・・こんな事、今までないんですよね?」
「あぁ。」
課長と白石の会話を、他のスタッフも静かに聞いている。
「課長。」
「ん?」
「私、家まで行って見てきます。」
「そうだな・・そうしてくれるか?」
「はい。」
白石はそう言うと、ユニホームのスーツのままオフィスを出る。
(ったく・・どうしたっていうのよ・・)
そう思いながら、自分の車が置いている駐車場まで行こうとしていた。
「あっ!」
その時、駐車場を横切って歩いていく、桃日を発見する。
「桃日ちゃん!!」
「・・・え?」
背後から大声で名前を呼ばれ、私は慌てて振り返る。
「マ、マネージャー?」
白石が走ってやってくる。
「お、おはようございます。」
「おはよ・・っ。」
「ど、どうかしたんですか・・?」
「ちょっと、いい?」
「は、はぁ・・。」
私は白石に導かれ、そのまま駐車場の端へと歩く。
「昨日、仕事終わってから、京典と会った?」
「へ?」
白石の突然の質問に、私は面喰う。
「ど・・。」
「京典と会ってない?」
「え・・あの・・。」
真剣な白石の表情に、私は言葉を詰まらせる。
「桃日ちゃん?」
「あ、はぁ・・あの・・会いまし・・た・・。」
「ほんとっ?」
「は、はい・・。」
「何時頃まで一緒だった?」
「え?」
「ん?」
(何で・・こんな事聞くの・・?)
そう疑問に思いながらも、何となく尋常ではない白石の空気に何も言えず、質問にそのまま答える。
「えっと・・ご飯食べて・・10時くらいに、家まで送ってくれました・・。」
「それからは?」
「え?」
「連絡取った?」
「寝る前に・・メールしましたけど・・。」
「何時?」
「多分・・12時くらいだったと思います・・。」
「今日の朝は?」
「え?」
「電話か何かした?」
「い、いえ・・。」
「そう・・。」
白石は、一人考え込む。
「あ、あのぉ・・。」
「え?」
「どうか・・したんですか・・?」
「え、あ・・。」
白石は、ハっとした顔をする。
「私・・チーフに何か迷惑かけてるんですか・・?」
「あっ、そんなんじゃないのよ?ごめんね?」
「何ですか・・?」
「ん、ん~・・ちょっとね・・。」
「え・・?」
あたふたする白石を、私はじっと見る。
「・・今日ね、京典が出勤してないのよ。」
「え・・っ?」
「あ、でも多分、一年に一回あるかないかの大寝坊の日じゃないかと思うのよね。」
「ね、寝坊?」
「だから、私今から行って、たたき起こしてくるし。そんな心配いらないから。」
「あ、マネージャー・・っ。」
白石は笑顔を見せると、早口でそう言い、その場を離れる。
「あの・・っ。」
急いで車に乗り込んだ白石を見ながら、私の心臓が騒ぎ出した。