カジュアルフレンチ
<カジュアルフレンチ>
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「はい、お待たせ。」
「え・・っ!?」
ぎゃぁぎゃぁと騒いでいたところに、先ほどの店主が料理を運んできた。
「仲いいんだね~。」
「そうでしょ?」
「な・・っ!?」
店主の言葉にサラリと答える京典に、私は目を丸くする。
(何が、そうでしょ?よっ!!!)
私は膨れっ面で、ムスっとする。
「彼女、何て名前?」
「え・・っ?」
店主が私を見ながら言う。
「あ・・えと、伊住です・・。」
「いずみちゃん?」
「あ、いえ・・苗字が伊住なんです・・。」
「あ、そうなんだ?ごめんごめん。」
「い、いえ・・。」
気さくに笑う店主に、私も少しつられてしまう。
「こいつ、桃日。」
京典が言う。
「ももかちゃん?へ~可愛い名前だねぇ。」
「い、いえ・・。」
「京典くんより年下だよね?いくつ?」
「あ・・。」
「15歳。」
答えようとした私より先に、京典がそう言った。
「はっ!?」
「え?15歳?」
「ち、違います!」
「ククク。」
「京さん!?」
私は、笑っている京典を思いっきり睨む。
「ビックリした~。京典くん、15歳だったら犯罪だよ?」
「オレ、ロリコンじゃないんで。」
「驚かせないでよ~。」
「んはは。」
私は、京典をじっと睨む。
「ほんとはいくつ?」
「え・・?あ、二十歳・・です・・。」
「え~!でも二十歳なんだ?こら若いの掴まえたんだね~。」
「ククク。」
「・・・。」
「じゃぁ、ごゆっくり。」
「はい~。」
店主はそう言うと、その場を去っていった。
「さ、食うか。」
「・・・。」
「桃?」
「・・・京さん、ほんとムカツク・・。」
「はいはい、ごめんなさいね。ククク。」
睨む私を、京典は笑いながら見ている。
「冷めると美味いもんもまずなるし、早よ食え。」
「・・・。」
「桃。」
「・・・。」
「いただきます。ほれ。」
「え?むぐ・・・っ。」
京典は、私の口の中に、無理矢理料理を押し込んできた。
「は、はひふふんへふは・・っ。」
「何言うとんねん、ククク。」
うまく喋られない私を見ながら、京典も料理を口に運ぶ。
「・・・・おいしっ。」
「やろ?」
もぐもぐと口を動かした私は、その料理が美味しい事に気づく。
「何これっ。」
「多分、鴨肉のローストじゃね?」
「か、鴨・・?」
「ん。」
「へ~・・。」
食べた事もない料理を目の前にしながら、私は目を輝かせる。
「いただきますっ。」
改めて手を合わせると、私はパクつく。
「これも美味しいっ!」
「ククク。」
次から次へと食べる私を、京典は可笑しそうに見ている。
「桃は、ほんま美味そうに食うなぁ。」
「美味しいんです~。」
「クク。」
京典は自分が食べるのも忘れ、桃日をじっと見る。
(ほんま・・子犬みてー。ククク)
そう思いながら、京典は胸のあたりがきゅっとなる。
(・・・こんな感じ、中坊以来やな・・・青春してんなぁ、オレ)
そう思いながら、サラダを口に放り込んだ。