平城京
<平城京>
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「ったく~。」
「・・・。」
「さんとかいらん~言うねん。」
「だ、だって・・。」
「ん?」
「苗字から・・名前に変えるだけでも・・心臓バクバクしてるんですよ・・?」
「ククク。」
「・・・ダメですか?」
「え?」
「・・京さんじゃ・・ダメ・・?」
私は、運転をする京典の横顔を見る。
「・・・・ま、ええか。」
「え?」
「ええよ。」
「ほんと?」
「ん。」
「・・良かった。」
私は、ほっとした。
「京さん、かぁ。」
「え?」
「初めてやわ、そんなん呼ばれんの。」
「嫌ですか・・?」
「そうやないよ。初めてやから、何や可笑しいねん。」
そう言いながら、京典は笑っている。
「・・京さん。」
「ん~?」
「良かった・・返事してくれて・・。」
「するがな。」
「ふふふ~。」
「何や。きしょい笑い方して。」
「ふふふ~。」
苗字から名前に変わった事で、私は何だか今までよりも深くなれたような気がした。
「あの・・。」
「ん?」
「京さんて、京都で生まれたから、京典なんですか?」
「は?」
「名前の由来・・知りたいと思って。」
「何やねん、突然やな。」
「ダメ?」
「別にええけど。」
「京都だから?」
「ん~、まぁそんな感じ。」
「え?」
「オレな、3人兄弟やねん。男ばっかのむさくるしい。」
「そ、そうなんですかっ?」
「そ。」
「へ、へぇ・・。」
初めて知る、京典の家族構成に、私は興味津々になる。
「京さん、長男?」
「いや、末っ子。」
「末っ子!?一番弟なの!?」
「そ。」
「うそ!」
「何でそんな驚くねん。」
「だ、だって・・すごく落ち着いてるし、お兄さんって感じだもん・・。」
「それは、オレの性格やん。」
「そうだけど・・。お兄さんて、いくつなんですか?」
「年子やねん。やから、いっちゃん上が32で、真ん中が31。」
「へ~。」
「一番上が、平典。二番目が、城典。」
「え?」
「で、オレが京典。」
「は、はぁ・・。」
「3人合わせて、平城京やねんて。クク。」
「え?」
「じいちゃんがつけたらしいねんけど。ま、たまたまつけたらそうなったんやと思うねんけどね。」
「そうなんですかぁ。」
京典の話を、私は真剣に聞きながら相槌をうつ。
「まぁ、年子やし、兄貴って感覚はないね。名前で呼ぶし。」
「お兄さん達の事?」
「そ。典は一緒やから、タイとセイ。」
「ふ~ん。」
「やから、京って呼ばれる事に、全く抵抗感はないねんけどね。」
「あ・・。」
「やけど、京さんは初めてやから、笑うてしまうねん。」
「・・いいじゃないですか・・。」
「桃だけがそう呼ぶから、全然いいねんけどね。」
「はい。」
そう言われ、私は笑顔を返す。
「桃は?」
「え?」
「兄弟、いてんの?」
「あ、お兄ちゃんとお姉ちゃん。」
「同じ3人か。ちゅうか、桃も末っ子やんけ。」
「はい・・。」
「んはは、同じやん。」
「そうですね、えへへ。」
「前から気になっててんけど。」
「はい?」
「桃、誕生日3月3日やろ?」
「はい。」
「それで、桃日?」
「え?」
「桃の節句の日で、桃日なんかなぁ~て。」
「・・・。」
「桃?」
「・・・当たりです・・。」
「やっぱそうか~。」
京典は、得意そうに言う。
「ていうか・・。」
「ん?」
「うち・・皆、生まれた月にちなんでて・・。」
「え?」
「お兄ちゃんが五月生まれで、樹希・・。お姉ちゃんが七月生まれで、捺希・・。」
「おぉ~。」
「で・・私は丁度、お雛様の日に生まれたから・・桃日なの・・。」
「ベタやな。」
京典が笑っている。
「・・・嫌だったの。お兄ちゃんとお姉ちゃんには”き”がついてるのに・・わたしだけないし・・。それに単純だし・・。」
「そうか?ええ名前やん。」
「・・・でも、京さんが桃って呼んでくれるようになってから、好きになった。」
「え?」
「桃日で良かったな~って・・。」
「何で?」
「桃って呼ばれるの、好きだから。桃日じゃなかったら、そう呼んでもらえなかったでしょ?」
「そうやな、ククク。」
得意そうに言う私に、京典は笑っている。
「あ。」
「え?」
「アレやな。」
「はい?」
「エッチの時は盛り上がるな。」
「はっ!?」
「エロイ顔した桃が、エロイ声で”京さぁ~ん”て言うてくれたら、オレめちゃ頑張るわ~。」
「な・・っ!?」
「桃の事、イカせまくるし。任せとけ。」
「ななな何言ってんの!?そんなのいらないっっっ!!!」
バシバシバシ!
私は、京典の左腕をバシバシ叩く。
「ちょ、痛い痛い。ちゅうか、危ないしやめろ。」
「バカバカバカバカ!!」
「危ないっちゅうてるやろ。」
「も~~~!!!!スケベ!変態!エロエロ大王!京典じゃなくて、キョウスケベに名前変えればっ!?」
「ぶはははっ!何じゃソラ!」
「バカバカバカ!!!スケベ!」
「ククク。」
ぎゃぁぎゃぁと騒ぐ私とは裏腹に、京典はただ笑っているだけだった。




