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合鍵

<合鍵>


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


pipipipi・・


「・・・ん。」


目覚ましのアラームが鳴り、京典はいつものようにベッドのすぐ傍にある机に手を

伸ばす。


「・・・朝・・か。」


アラームと止めると、横に寝ているはずの桃日の方を見やる。


「あれ?」


寝ていると思っていたはずの桃日の姿はなかった。


「もう起きてんのか・・?」


そう思いながら、京典は寝室を出る。


「あ、おはようございます・・。」

「・・はよ。」


朝日よりもキラキラしている桃日に、京典は目を細める。


「あの・・。」

「ん?」

「勝手に・・冷蔵庫から使っちゃったんですけど・・。」

「え?」


ダイニングテーブルを見ると、そこには美味しそうな朝食が並んでいる。


「作ってくれたん?」

「あ、はい・・。」

「ありがと。」

「それで、材料を勝手に使っちゃったんですけど・・。」

「ええって、そんなん。」

「は、はい・・。」

「食べてもええ?」

「は、はい。」

「いただきます。」

「ど、どうぞ・・。」


箸を持つ京典を、私はじっと見る。


「ん、うま。」


満足そうに食べる京典の姿に、私はホっと胸を撫で下ろす。


「なぁ。」

「はい?」

「今日、仕事やったっけ?」

「いえ、私は休みなので・・。」

「あ、そうやっけ?」

「はい。」

「そか~。」


そう言う京典を見ながら、私は味噌汁を飲む。


「ほんだら~、桃を送ってから会社行くか。」

「い、いいです・・っ。」

「何でよ。」

「私、一人でバス乗って帰りますから・・。」

「バス~?」

「は、はい・・。ここからバス停まで近いですし、京さんと一緒に出て、帰ります・・。」

「ん~・・。」


京典は、ご飯を口に運びながら、私をじっと見る。


「な、何ですか・・?」

「あ。」

「え?」

「ほなら、頼まれてくれへん?」

「何をですか・・?」

「洗濯。」

「え?」

「今日、めちゃ天気ええし、洗濯してもろて、干して帰ってくれたらありがたいねんけどなぁ。」


京典はリビングの大きな窓へ目を移す。


「い・・いんですか・・?」

「え?」

「私が・・洗濯しても・・。」

「うん、桃が迷惑やなかったら。」

「迷惑じゃありませんっ。やりますっ!」

「そ、そうか?」


突然張り切った声を出す私に、京典は少し驚いている。


「ほな、頼めるか?」

「はいっ。」

「あ、そしたら~。」

「え・・?」


京典は、急に椅子から立ち上がると、寝室へと向かう。


「手。」

「え?」

「出して。」

「は、はい・・。」

「ほい。」

「え?」


戻ってきた京典から、ポンと何やら手渡される。


「え・・・。」


私の手のひらには、鍵がある。


「な、何ですか・・?」

「この部屋の鍵。」

「か、鍵・・っ?」

「そ。さすがにあけっぱにして帰られたら困るやんけ。」

「そ、そうですけど・・っ。」


笑う京典と鍵を交互に見る。


「合鍵っちゅうやつやな。」

「え・・っ・・。」

「ま、よろしく。」

「は、はぁ・・。」

「ほな、オレ着替えてくるわ。」

「・・・・。」


私は、渡された鍵をじっと見たまま動けない。


(あい・・かぎ・・洗濯物・・)


頭の中で一つずつ整理していくと、顔が自然とニヤけてくる。


「・・・やだぁ・・。」


嬉しさと恥ずかしさで、胸のあたりがくずぐったい。


「どうしよ・・。くふふ・・ふふ・・。」


私は一人、その場で笑う。


「なん?気持ち悪い笑い方して。」

「・・・へっ?」


いつの間にか、着替えた京典がリビングに戻ってきていた。


「べ、別に・・っ。」

「ん~?」

「な、何でもありません・・。」

「ククク。」

「笑わないで・・。」


意地悪そうな顔をしている京典を、私はジロリと睨む。


「あ、あの・・。」

「ん?」

「鍵なんて・・もらっていいんですか・・?」

「ええよ?」

「でも・・。」

「それで、いつでも来れるやろ?」

「え?」

「一緒に帰られへんでも、桃は部屋で待っとけるしな。」

「・・・。」


京典の言葉に、私はニタついてしまう。


「毎日来い。」

「へ?」

「鍵やった代わりに、毎日来いな?」

「ま、毎日は無理かもしれないです・・。」

「ほな、返せ。」

「えぇっ!?」

「うそ。ククク。」

「・・・。」

「ほんだら、後よろしくな?行ってくるわ。」

「あ、はい・・っ。」


私は、玄関まで京典を見送る。


「ほな。」

「あ・・。」

「ん?」

「その・・。」

「何やねん。」

「い・・いってらっしゃい・・。」


言ったものの、恥ずかしくて顔を伏せてしまう。


「ククク。」

「え・・?」


私は顔を上げた。


「・・っん・・っ。」


その瞬間、京典にキスをされる。すぐに唇は離されたが、突然の事に、私は呆けてしまう。


「行ってきます。」

「・・・あ、はい。」


最後に笑って、京典は出て行った。


「・・やだぁ・・。」


玄関で、私は一人ニヤついた。

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