ごめん
<ごめん>
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「・・・。」
「お、出たか。」
パジャマを着た私は、リビングに行ったが、そこに京典の姿がなかったため、寝室
へと入った。そこには、ベッドに上半身を起こしたまま雑誌を読んでいる京典が居た。
「何やねん。」
「・・・。」
「そんな睨むなや。ククク。」
先ほどの事の怒りが、私の中でまだおさまっていないため、京典を見る目も鋭くなる。
「そんな顔してたら、可愛い顔が台無しやんけ。」
「ぇ・・。」
「桃の笑うてる顔、オレ大好きやのになぁ。」
メガネをかけた京典が、笑いながらそう言う。
「・・・・。」
「こっちおいで。」
「え・・?」
京典は、自分の隣をポンポンとする。
「・・・。」
私は無言のまま、ベッドに入った。
「やっぱ大きいな、ソレ。」
「え・・?」
「パジャマ。」
「あ・・はい。」
「首周り寒いやろ?風邪ひいたらあかんし、やっぱコンビニで何か女もん買うてくるか。」
「え?」
そう言うと、京典がメガネをはずしながら、雑誌をたたむ。
「い、いいです・・っ。」
「え?」
「布団に入ってれば・・寒くありません・・。ていうか、部屋暖房効いてるし・・平気ですよ・・?」
「そうか?」
「はい。」
心配そうな顔をする京典に、私は笑顔を返す。
「よし。」
「え?あ・・っ。」
私は急に、抱きしめられる。
「こうやってたら、寒ないやろ。」
「・・・はぃ・・。」
「寝るか。」
「は、はい・・。」
京典の言葉に、私は幾分緊張してきた。
(・・・・・・・アレ?)
当然、何かされるのだろうと身構えていたのだが、京典は私を抱きしめたまま、寝ているだけだ。
「・・・・あのぉ・・。」
「ん?」
「・・・し、しなくて・・いいの・・?」
「は?」
「そ、その・・。」
「ククク。」
「どうして・・笑うんですか・・?」
「オレはね、盛りのついた猫ではありません。」
「へ・・?」
「今日は、桃をこうやって抱きしめてたいねん・・。」
「そ、そうですか・・。」
京典の言葉に、私は何だかホっとする。
「お前今、ほっとしたやろ?」
「えっ?し、してません・・。」
「何か腹立つわ~。」
「ど、どうして・・っ。」
「オレに抱かれんの、ヤか?」
「そ、そんな事ありません・・っ。」
「ククク。」
「・・・何か・・。」
「ん?」
「緊張しちゃうから・・。」
「え?」
「は、裸・・見られるのも・・触られるのも・・。」
「クク。」
「京さんに・・こうやって抱きしめてもらうの、大好きだから・・安心したの・・。」
「そか。」
「はい・・。」
京典の手が、私の髪を優しく撫でる。
「桃・・。」
「はい・・?」
「ごめんな・・。」
「え?」
突然謝る京典の顔を見ようとしたが、頭を抱えられているため、顔が上げられない。
「き、京さん・・。」
「ん・・?」
「どうして・・謝るの・・?」
「あ~・・うん。」
「?」
「・・・桃が、好きやから。」
「え・・?」
「ごめんな。」
「・・・・。」
京典の言葉に疑問を抱きながらも、私はそれ以上何も言えなかった。
(・・・謝っても・・消えるもんちゃうけどな・・)
京典は、桃日を抱きしめながらそう思う。自分のせいで暴漢に襲われた桃日に、どうやったら償いができるのか、そればかり考える。自分がしてきた過去の事を、これほど悔やんだのは、初めてだった。
(オレが一番・・桃を守れてへんやんけ・・)
顔を見ようと身体を少し離すと、桃日はすーすーと寝息をたてていた。
(寝たんか・・)
京典はそっと桃日を寝かせると、ベッドから降りた。




