罰
<罰>
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「結局は、京典の節操の無さが招いた事じゃないの。」
和斗の運転する車内で、白石が言う。
「まったく~。遊び相手も、ちゃんと人選しなさいよ。バカ。」
「うっさい。」
「課長に何て言うの?ボクに節操がなかったので、昔の女に拉致監禁されました~
って言うのぉ?」
「お前うるさい。」
「何よ。」
京典は、白石の言葉を無視するように、顔を背ける。
「この態度。散々迷惑かけといて。ね~?和斗。」
「クク。」
和斗は、運転しながら軽く笑う。
「なぁ、京?」
「・・・なん?」
「どうやって、あの部屋まで連れてかれたん?」
「え?」
「まさか誘われて、のこのこ着いて行ったのとちゃうねやろ?」
「あ~・・。」
「ん?」
「・・多分、何か薬ちゃうの。」
「え?」
「昨日、夜にマンション戻って・・。そしたら少し経って、インターホン鳴ってん。」
「うん。」
「隣の者や言われて、それでドア開けて。」
「ん。」
「そっから記憶ナシ。気ぃついたら、縛られてた。」
「そういう事かぁ。」
「でも、あの女一人じゃ無理でしょ~?」
「誰か、手伝う奴がおってんやろ。・・・桃、襲わすような人員がいてるくらいやからな・・。」
京典は、そう言いながら怒りが込みあげてくる。
「桃日ちゃんにあんな事しといて。一発殴ってやればよかったのに。」
「・・女は殴らへんねん、オレは。」
「はぁ~?」
「あいつが男やったら、とっくの昔に殺して、東京湾沈めてるわ。」
「何それ。」
京典は、後部座席にもたれると、目を瞑った。
(桃が・・オレのせいで・・)
桃日が、暴漢に襲われていた時の光景が蘇る。自分と付き合わなければ、あんな怖い体験をしなくて済んだのだ。そう思うと、胸が押しつぶされそうになる。
(桃・・・)
あれから、あの事件については、桃日も何も言ってはいない。けれど、一人で苦しみ悩んでいるかもしれない。自分の前では明るく振舞っていても、会っていない時はどうしているのだろう。
(・・・桃・・・ごめんな・・)
桃日を想えば想う程、どうしようもなく切なくなる。京典は涙が出そうになるのを、必死で抑えた。
「申し訳ありませんでした。」
会社に戻り、京典は深々と課長に頭を下げる。
「私の不注意で、白石と瀬川にも迷惑をかけてしまい、本当にすみません。」
「鈴井、頭上げろって。」
「・・はい。」
課長に言われ、京典はゆっくりと頭を上げる。
「良かったよ、元気な姿が見れて。」
「・・・え?」
課長はそう言いながら笑う。
「あの・・。」
「もう、何か事故じゃないかとか、どっかの国に拉致されたんじゃないのかとか、散々心配したよ。」
「へ?」
課長の言葉に、オフィス内にいたスタッフから笑い声が洩れる。
「え・・・。」
「良かった良かった。」
「は、はぁ・・。」
少し張り詰めていた、オフィスの空気が柔らかく和んだ。京典と課長をじっと見ていたスタッフも散らばり、自分の仕事を始めた。
「あの、課長・・。」
「何も言わなくていい。」
「・・・・課長。」
課長は、京典の大学の先輩にあたる人物だった。京典が、寝坊や遅刻をする人間ではないという事は分かりきっているため、あえて理由は聞かなかった。
「鈴井。」
「はい?」
「今日はもう上がれ。」
「は?」
「帰って寝ろ。」
「いや、そういうワケには・・っ。」
「課長命令だ。」
「は?」
「明日からは、またこき使ってやる。」
「・・・フ。」
課長の言葉に、京典はふきだした。
「はぁ。」
会社を出て、京典は何となく一人になりたくなくて、パチンコ屋に居た。パチンコ
屋の賑やかさが、今の自分の気分を紛らわしてくれるようだった。
「こんな時でも勝ってまう、オレ。」
パチンコ屋に居て、何もしないわけにもいかず、ただボーっと台に向かって打って
いたら、大フィーバーした。




