現行犯逮捕
<現行犯逮捕>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「な・・っ。」
「京典っ?」
玄関の中まで入った白石は、そこから大声で京典の名前を呼ぶ。
「ちょっと・・っ!あなた何なのっ!?」
「エンターテイメント課の、白石ですけど。」
慌てる中原に向かって、白石はそう言い放つ。
「同じく、エンターの瀬川です。」
「はっ!?」
メガネを取り、髪を手でボサボサっと直しながら、和斗も言う。
「あ、あなた・・っ、警察の人なんじゃ・・っ。」
「そんなん言うた?」
「・・っ!?」
目を丸くする中原に、和斗は笑いながら言う。
「警察呼ぶわよっ。」
「は?」
「こんな事して・・っ、住居侵入じゃないっ。」
「警察呼ばれて、困るのはそっちじゃないの?」
「・・・っ・・。」
白石は、中原を睨みながら言う。
「ほんとに警察呼ばれなかっただけでも、ありがたいと思いなさいよ。」
「・・っ・・。」
「京典、出しなさいよ。」
「・・・・。」
白石の言葉に、中原は体勢を整える。
「京典って、鈴井さんの事?」
「そうに決まってるでしょ。」
「どうして、私に聞くの?」
「あんたが、京典さらってんでしょっ。」
「関係ないわよ?私。」
そう言いながら、中原はクスリと笑う。
「シラきるのもいい加減にしなさいよ。とっとと京典返しなさいよっ。」
「あなた、京典さんの何?」
「仲間よ。」
「お話しにならないわね、クスクス。」
「はぁっ!?」
中原の態度が、白石の神経を逆撫でする。
「あんたねぇ・・っ!」
「更織。」
いまにも中原につかみかかろうとする白石を、和斗が冷静に制止する。
「だって、和斗・・っ。」
和斗は白石の目を見る。
「・・・っ・・。」
白石は、納得いかない顔をしながらも、腕を組み和斗の後ろに下がる。
「中原さん。」
「はい?」
中原は、和斗を上目遣いに見る。
「この中に、京典いるんでしょ?」
「いませんよ?」
「そんなハズない思うねんけどなぁ。」
「どうしてですか?」
中原のねっとりした視線に、和斗は笑顔を返す。
「そこ。」
「え?」
「あのジッポ、京典のや。」
「え・・っ?」
和斗の視線を、中原は慌てて辿る。玄関から見える廊下に、シルバーのジッポが落ちている。
先ほど、白石と中原が言い争っている間に、それが京典の物だと、和斗は気づいた。
「あ・・っ・・あれは、私の彼氏のです。」
「ううん、京典のやで。」
「違います・・っ。」
中原は、少し動揺を見せる。
「なめとったらアカンで。」
「え・・っ。」
和斗は、中原をじっと見ると低い声で言う。
「現行犯逮捕は、一般市民でもできんねんで。」
「え・・・。」
「今すぐ逮捕してほしいんか?」
「・・っ・・。」
中原は、和斗の言葉に固まる。
「お邪魔します。」
「あ・・っ。」
和斗はそう言いながら、そのまま玄関へと入って行く。
「同じく。」
「ちょっと・・っ。」
「あ、そうだ。」
「は?」
「これ、京典の部屋の玄関に落ちてたわよ?あんたのでしょ?」
「えっ・・。」
「返すわね、はい。」
白石もそう言うと、ハンカチを無造作に手渡すと、中原の前を通り過ぎた。




